困窮しているのは飲食店関係者だけではない。現金一律給付を求める声は国に届くか

困窮しているのは飲食店関係者だけではない。現金一律給付を求める声は国に届くか

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◆感染拡大が止まらず、日々変化する補償内容

 1月7日、関東1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)で2回目の緊急事態宣言が発出され、13日には新たに大阪・京都・栃木など新たに7府県が加わった。すべての都府県で2月7日までの予定となっている。さらに、熊本や茨城県など独自に緊急事態を宣言している県も出てきていて、県境をまたいでの移動や成人式など大型イベントの中止が発表された。

 緊急事態宣言下では、飲食店も百貨店も劇場も、午後8時までの短縮営業要請を受けている。午後8時閉店を守った飲食店には1日6万円・最大で月186万円の協力金が支払われ、飲食店と直接・間接的に取引していて売り上げが減少した中小企業には、最大で40万円・個人事業主には最大20万円の給付が行われることとなった。

 さらに政府は1月14日、緊急事態宣言以外の地域であっても専門家が定めるステージ4に近い自治体では、飲食店へ1日最大6万円の給付を行うと発表した。1月15日には、その日で締め切り予定だった持続化給付金・家賃補償の2月15日までの延長を宣言。感染拡大に伴って、日々補償内容が変化している。

 西村康稔・経済再生担当大臣は、宣言解除の目安として「全国の1日あたりの感染者が500人程度に減少すること」を目標にあげている。しかし、緊急事態宣言発令後も感染者は減る気配を見せていない。事態は長期化する見込みが濃厚だ。

◆女性・非正規職員から始まった雇用崩壊が、正社員男性にも広がる

 失業者の増加は深刻で、コロナの影響による失業者は8万人にのぼるといわれている。しかしこれは全国のハローワークなどで把握できた人数だけで、実際ははるかに多いと思われる。例えば、総務省「労働力調査」の発表を見ると、さらに状況は深刻だということがわかる。和光大学の竹信三恵子名誉教授はコロナ後の雇用状況をこう分析する。

「最初の緊急事態宣言直後の4月に、女性の被雇用者が74万人失業しました。男性はその半分以下の32万人。最初に解雇されたのは非正規の女性でしたが、5月には正規職員の男性も18万人減り、その後8月にも10万人減っています。事態が長期化するにつれ、女性・非正規から始まった雇用崩壊が、正社員の男性にも広がっています」(竹信氏)

https://youtu.be/Bo_Yr3LPuh0

 女性の失業が広がる背景には、感染率が高い対面型のサービス業で多くの女性が働いているということがある。政府は雇用を維持するための「雇用調整助成金」を推奨しているが、シフトが定期的ではないパートやアルバイトは、雇用調整助成金の申請を雇用者に申請してもらえないまま解雇される例も多い。

 しかし新たに、アルバイトが自ら申請できる「休業支援給付金制度」も始まっているので、読者の方々も自分に当てはまる制度はないか、厚生労働省の「生活を支えるための支援のご案内」ページを参照してほしい。

 広告最大手の電通は、230人の中高年社員を正社員から個人事業主へと変えた。雇用規模縮小を行う企業は後を絶たない。

 社員1000人ほどの金属メーカーに勤務する50代正社員の男性は「昨年2月からすべてテレワークとなり、ボーナスもない。希望者の中で副業を許可するようになり、週2勤務が推奨されるようになった」と社内の変化を語る。じわじわと自主退職者も増え、社内にはそれを歓迎するような雰囲気も感じられるという。

◆各省庁の現場レベルでは、現金一律給付に共感の声も

 1月11日、「#二回目の現金一律給付を求めます」というハッシュタグがツイッターのトレンド入り。そして「前回より苦しくなっています。 中途半端に家から出るなと言われてもキツいです」「もう春まで持ちそうに有りません 助けて下さい」といった悲痛な書き込みが相次いだ。

 しかし菅首相は1月7日の記者会見で、テレビ東京の記篠原裕明・官邸キャップからの「再び給付金があるか」との質問に、企業・事業者支援についてのみ言及して、個人への現金給付については答えなかった。さらに首相は1月13日の会見でも、そのことに触れることはなかった。

 しかし各省庁の現場レベルでは、現金給付請願への共感の度合いが高まっていると筆者は感じる。

 筆者は「継続的な現金給付」を求めて、駒澤大学の井上智洋准教授や「日本経済復活の会」の小野盛司会長ら経済学者とともに、昨年は5度にわたって内閣や省庁に請願書を届けてきた。2月から12月まで、財務省へ3回、内閣府へ1回、総務省へ1回、直接の担当者にかけあってきた。

 昨年2月6月に初めては財務省の一室で担当官と面会しただけだったが、昨年12月には担当官が門まで見送ってくれるようになった。昨年12月24日には「感染を防ぐために面会は不可」と言っていた総務省の定額給付金担当官が、電話で小野盛司氏と15分ほどの対談をした後、わざわざ請願書類を受け取りに来てくれた。

 そもそも、昨年の特別定額給付金10万円の時も「額が少なすぎる」という声が財務省内部から上がっていたという話を聞いている。最後まで、財務省内で「20万円給付案」が提案されていたというのだ。

◆現金給付の額が多いほど、開始時期が早いほど、経済復興は早まる

 筆者らが毎回各省庁に提出しているデータは、小野盛司代表が試算した「現金給付をした場合の経済予測図」だ。国内で最も精密な経済予測シミュレーション「日経NEEDS」による試算である。

「どのグラフも『人々にお金を配れば、コロナ後であっても経済が復活する』ということを表しています。1回ではなく、毎月10万円を少なくとも2年間は配り続けるべきでしょう。配る額が多いほど、開始時期が早いほど、経済復興は早まります」(小野会長)

 小野会長はこれらのシミュレーションを20年前から続けていて、その研究は海外でも高い評価を得ている。ノーベル経済学賞受賞者であるポール・サミュエルソン教授とローレンス・クライン教授は小野会長の経済予測モデルを賞賛し、クライン教授は「日本経済復活の会」の招きで来日し、議員会館で多数の国会議員を前に講演を行っている。

◆現金給付をしなければ失業率は上がり続け、景気は回復しない

 しかし、日本政府は小野氏の提言に耳を貸さず、緊縮財政を止めなかった。その結果日本の経済力はどんどん衰えていった。世界3位といわれる日本のGDPだが、人口1人当たりのGDPでみると、世界25位にまで転落している。

 内閣府が繰り返してきたGDPの予測を見れば、いかに日本が間違った経済政策を進んできたのかがよくわかる。具体的な政策も行わないまま、常に「GDPが年3%上昇する」という希望的観測を発表して、毎回予測を外してきたのだ。小野会長は「今こそ、経済政策の間違いによって“失われた30年”を軌道修正する時だ」と語る。

「現金給付をしなければ失業率は上がり続け、景気はいつまでたっても回復しません。現金給付をすれば、今まで売る機会を失っていた商品やサービスが求めている人の所にしっかり届き、社会が息を吹き返します。『生活のため、やむをえず働く』というのではなく、より楽しんで働くようになれるのです」(小野会長)

 個人への継続的な現金給付によって、コロナ禍というピンチをチャンスに変えることができるかもしれない。1月18日から始まる国会に、現金給付を求める多くの国民の声は届くだろうか。

【小野盛司●おの せいじ】「日本経済復活の会」会長、日本ベーシックインカム学会理事。著書に『政府貨幣発行で日本経済が甦る』、『これでいける日本経済復活論』、『ロボット・ウィズ・アス』、『日本はここまで貧乏になった』、『お金がなければ刷りなさい』(いずれもナビ出版)、『「資本主義」から「解放主義へ」』(創英社/三省堂書店)など。1月21日に『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(扶桑社)を井上智洋・駒澤大学准教授との共著で上梓。

<文/増山麗奈(映画監督・日本ベーシックインカム学会理事)>

【増山麗奈】

ますやまれな●ユーラシア国際映画祭代表理事

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