生姜チキンやふかひれスープも! スキマ時間の胃袋を温める自販機スープ事情

 まだまだ寒暖差が激しく、肌寒い日も続いており、自動販売機の「ホット飲料」にお世話になる日々が続いている。ホット飲料といえば、お茶やコーヒー、さらにコーンスープやおしるこなども定番だが、近年、JR東日本の駅構内ではさらに“攻めた”ラインナップが充実していることを、ご存じだろうか――。

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 JR東日本の駅構内に設置されているエキナカ自販機「acure(アキュア)」では、昨年末から今年頭にかけて「#激論スープ飲料」と冠したキャンペーンが実施された。並んだのは、「とん汁」「デミグラススープ」「ふかひれスープ」「しじみの味噌汁」「オニオングラタン風スープ」「トマトのスパイシースープ」といったラインナップの数々。いずれも、あまり見かけない新ジャンルのホット飲料である。

「acure」を展開する「JR東日本ウォータービジネス」は、メーカーと共同で商品開発も行っている。2014年には永谷園とタッグを組み、「『冷え知らず』さんの生姜チキンスープ(※現在は販売終了)」を発売した。鶏の旨みが凝縮されていて、ほのかに香る生姜の風味が特徴だ。広報担当の小室塁さんによれば、この商品は「冷え性には“生姜”がいいのでは」という着眼点から女性をターゲットにして開発されたという。

 同じく、永谷園と共同開発した「気仙沼産ふかひれ使用 ふかひれスープ」も売れ筋の一つ。チキンや椎茸の旨みをベースに、にんにくや生姜、オイスターソースの香りがついた、高級感漂うスープだ。

「昨年10月〜今年の2月頃くらいまで販売され、SNSなどでかなり反響を頂くことができました。夜遅い時間帯には、ふかひれスープがひょこっと売れることもあり、おそらくはサラリーマンの方が飲み会終わりの“シメの一杯”のような形でお飲み頂いているのでしょう。女性の社会進出という時代の流れもあり、これらスープ飲料のラインナップを強化することで潜在需要の獲得につながったと思います」

 また、最近は健康志向が高い層向けの自販機もあるという。

「弊社は『プラスアキュア』という自販機も展開していますが、そこではヤクルトなどの乳飲料、豆乳飲料、スムージーなど紙パックの商品も販売しています。あまり馴染みがないかもしれませんが、ホットの豆乳系ドリンクなどもラインナップを揃えています」

 世にある自販機のほとんどは、飲料メーカーが設置していることが多いため、同じジャンルの飲み物が2〜3列も並んでいたりと、商品のバリエーションが少ないと感じることも少なくない。

 そこへいくと、なぜJR東日本は、ここまで豊富な品揃えを実現できたのか。


■勝機は「ブランドミックス」と「時間帯別の売上分析」


「これは飲料メーカーではない我々の強みなのですが、『ブランドミックス』と言って色んなメーカーから売れ筋や季節限定の商品を仕入れています。どんどん商品を入れ替えて、お客様に選ぶ楽しみを提供しようという取り組みを2006年の会社設立当初から続けてきました」(小室さん、以下同)

 同社のビジネスの根幹をなしているのが「時間帯別の売上分析」だという。

「通常の街中の自販機では『前回の補充からどれくらい売れたか』は分かるのですが、『いつ売れたか』までは数字に表れません。その点、弊社がJR東日本の駅内外に約8千台投入しているアキュアの自販機では、商品の時間帯別の売上データを取得することができます。また、街中と比べて、駅ナカの自販機はご利用者様が多いので、データ分析の対象には最適なんです」

 そのデータ分析の結果はこうだ。

「通常、自販機は朝の通勤ラッシュの時間帯が一番売れて、そこから夜にかけて落ちていきますが、特定の時間帯に売り上げが落ちないカテゴリーを発見したのです。たとえば16〜18時にはゼリーや豚汁など小腹を満たせる商品、夜だったら体を温められるスープ系を中心に売れています。私たちは『どんな飲まれ方をするか』を想定して、忙しいサラリーマン、お子さん連れの主婦の気持ちになりきって商品開発に取り組んでいるんです」

 実際、筆者も仕事でJRの駅を利用した際には、朝はシナモン入りのりんご風味の紅茶を飲み、帰りがけにスープで体を温めるのが冬の楽しみのひとつだった。なんだか。同社の手のひらの上で転がされているような……。

※本記事に登場する商品は販売終了している場合があります。ご了承ください。

取材・文/松嶋千春(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年3月19日 掲載

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