スマホで卒論を書く時代、ならば今どきの若者はどんなパソコンを使っているのか

スマホで卒論を書く時代、ならば今どきの若者はどんなパソコンを使っているのか

卒業論文をスマートフォンのフリック入力で書き上げる学生も出現しているという(※画像はイメージ)

 2019年3月、“大学生に、ノートPCはいらない。”という「Microsoft Surface」(マイクロソフト社のパソコン製品)の広告が話題になった。今や卒業論文をスマートフォンのフリック入力で書き上げる学生も出現しているようだ。現役の家電量販店販売員にして、家電ライターとしても活動するライター「たろっさ」氏に、イマドキの若者のパソコン事情を聞いた。

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 総務省の最新資料「平成30年版情報通信白書」によれば、2017年時点の各世帯が保有する情報通信機器の割合は、パソコンが72.5%であるのに対し、スマートフォンは75.1%。徐々に保有率が下降していたパソコンを、急激に上昇していたスマートフォンが追い抜いたのだ。同時に、タブレット型端末の保有率も右肩上がりを続けている。

 特に若者のパソコン離れは顕著だ、とたろっさ氏はいう。

「スマホ(タブレット)は、パソコンとほぼ同等の機能を備えているうえにかさばらないので、わざわざパソコンを用意する必要もないということでしょう。卒論をスマホで作成したという大学生の話も聞くぐらいですからね。また最近は、スマホ契約時にタブレット付きのプランを契約して2台持ちする人も増えています」(たろっさ氏、以下同)


■最低限で十分


 とはいえ、冒頭でご紹介した“大学生に、ノートPCはいらない。”の広告が話題を呼んだ背景には、「そんなことはない」という共通意識があるためである(実際この広告はノートPCの必要性を訴える内容となっている)。スマホでも大学生活が事足りるこのご時世に、あえてパソコンを買う若者たち。彼らはどんなモデルを必要としているのか。

「やはりここ10年で、パソコンに求められる要素も変化しました。以前は、『色んなソフトを入れるかもしれないから高性能なモデルを買いたい』とよく相談されたのですが、ここ数年は『レポートしか書かないから最低限のものさえあればいい』というニーズが多い。ワード、エクセル、パワーポイントを動かせる4〜5万円程度のパソコンを買っていく方がとても増えていますね」

 パソコンは“仕事”のための道具で、“遊び”の用途はスマホに取って代わられた、ということだろうか。

「もちろん、高いスペックのパソコンを求める学生さんもいます。私は接客の際にまず、理系か文系か聞くようにしています。とくに理系の場合は、数式を画像表示させるためのソフトだとか、建築の図面を引くためのソフトなどを動かす必要があるため、処理能力の高いパソコンが必要になってくるんです。大学が用意したスペック表を握りしめてやってくる理系の学生さんを見ると、勉強する意欲が溢れていてマジメだな〜と感心します」

 ほかの特徴としては、“値ごろ感”重視になったことで、国内メーカー至上主義の傾向も薄れてきているという。

「なんとなくの安心感から国内モデルが支持された時代もありましたが、今は『Lenovo(レノボ)』『ASUS(エイスース)』『Dell(デル)』あたりの外資系メーカーのお手頃価格製品、かつ持ち運びできるコンパクトなラインが売れ筋です。あとはお値段に目をつぶって、Macを持つことに憧れを抱く学生さんもいますね。これは学生に限った話ではありませんが……」

 パソコンの周辺機器の使い方にも今どきの使い方があるようだ。たとえば、プリンター。パソコンはなくてもプリンターは家にある、なんて学生もいるそう。

「今のプリンターはWi-Fiダイレクトの機能が搭載されているものがほとんど。スマホのオフィスソフトを使ってレポートを作成して、そのデータをWi-Fiでプリンターに飛ばして出力する、というわけです」


■eスポーツとプログラミングが鍵


 スマホやタブレットの普及で、その存在感が薄れつつあるというパソコン。とはいえ若者の需要が完全になくなることはない、とたろっさ氏はいう。その理由は大きく2つあって、

「ひとつは『ゲーム』の需要です。たとえば受験シーズン終わりには、勉強から解放され、ゲーミングPC(ゲームプレイに特化したPC)を買いに来る若い方が増えています。『eスポーツ』の流行もあって、ノートに対するデスクトップパソコンの盛り返しを感じますね。数十個のキーを同時押ししてもコマンドを認識するようなゲーミングキーボードや、細かい動作ができるゲーミングマウスもあわせて購入されていきます」

 スペックや操作性という点では、まだまだスマホはパソコンには及ばない。ゲーム関連の出版事業などを手掛ける株式会社Gzブレイン(カドカワグループ)の推計では、2018年の日本国内のeスポーツファン人口は383万人(前年比66%増)に達し、22年には786万人まで成長する見込みだというから、パソコン需要はありそうだ。

「もうひとつは2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されることでの、パソコン需要。親が子どもにパソコンを買い与えるケースが増えると予想されます。こちらはタブレットで代用できる側面もありますが、本格的にプログラミングを学ぶのであれば、やはり従来通りパソコンが求められるのでは」

 平成の時代に、一気にひろまったパソコンというデバイス。果たして令和ではどうなるのか――。

取材・文/松嶋千春(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年5月21日 掲載

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