大事なのは顧客主義です、JRさん!(石田純一)

■石田純一の「これだけ言わせて!」 第33回


 妻の理子も「当日届くんだから」と言って、ベビー用品などをよくアマゾンで注文している。たしかに「いますぐほしい!」と思ったものが日をまたがずに届けば、顧客はとても助かる。

 こういうのが顧客主義で、実際、アマゾンはそれを貫いてきた。創業者のジェフ・ベゾスは1986年にプリンストン大学を首席で卒業し、金融関係で働いたのちに94年、自宅ガレージでオンライン書店のアマゾンを始めた。それから25年で世界一の流通業を築き上げたわけだが、そんなベゾスのモットーが徹底的な顧客主義なのだ。「より多くのよいものをいち早く届ける」という言葉が、ベゾスの口からよく聞かれる。

 翻って日本の鉄道会社は、どうして顧客をこんなにないがしろにするのだろう。東海道新幹線の車内販売でコーヒーを買って、そこに入れる「牛乳」を求めても、「はい、牛乳です」と言って、10種類くらい添加物を加えてミルク状にしたオイルを渡される。でも、これは僕の友人の医師たちもみな「おできやポリープの原因になる」と警鐘を鳴らしているシロモノで、知人の外国人たちも嫌っている。だから僕は「牛乳じゃないですよ」と伝えるのだが、「牛乳ですよ!」と逆切れされたことまである。

 そもそもJR東海が顧客主義でないことは、駅や車内で販売する飲料を、ほとんどJR東海フードサービスの商品で独占していることからもうかがえる。

 新幹線もその駅も、JR東海の縄張りであるのはわかるが、同時に、とても公共的な場だ。鉄道は事実上、他社が参入不可能な利権の世界だが、勘違いしてはいけないのは、線路や駅の敷地をJRが買ったのではなく、あくまでも公共的な場の運営を託されているということだ。公益性や公共性を守るために優遇されているわけで、だったら顧客のためにも、地域のためにも、もっと開かれていなければいけないと思うのだが。

 ところが現実には、地域の振興に供しなければいけないはずのJRは、駅の上に商業施設を作り、巨大なホテルを作っては、周囲の民業を圧迫している。どう考えても駅の上は生産性も利便性も高いから、それをやられてしまえば、地域は押され、廃れてしまう。

「ラストマン・スタンディング」という映画があったが、自分が最後の生き残りになるための戦術を巡らせれば、その分、他者は生き延びられなくなる。「自分だけがよければ」という姿勢で商売をしても、日本はよくならないだろう。特にいまのような人口が減り続ける社会にあっては、生き残りのために賃金を削ったりするより、むしろ少しでも高付加価値のものをみんなで享受する、という姿勢こそ大事で、それを「ハイロード・キャピタリズム」と呼ぶのだそうだ。

 そこに照らしたとき、JRの飲料は、あまり高付加価値とは言えない。コーヒーならブラジル産の高級豆を使うとか企業努力しているのはわかる。でも、コーヒーだって選べるようにしてほしい。椅子をひとつだけ用意して、そこにJRがドカンと座って、「ラストマン・スタンディング」を自演しているのが現状だが、ライバルたちも招き入れて選べるようにしてこそ、お客さんは自分にとって付加価値が高いものを享受できるはずだ。

 まず、顧客のほうを向いてほしい。勝負はそれからだ。世界一高速で安全で正確な新幹線を、これからもよろしくお願いします。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2019年6月16日 掲載

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