「田舎暮らし」希望者は必読 悪徳不動産業者に騙されないための“鉄則”

「田舎暮らし」希望者は必読 悪徳不動産業者に騙されないための“鉄則”

悪徳不動産業者に騙されないための“鉄則”とは(※写真はイメージ)

■悪徳業者に騙されない12の鉄則(1/2)


 田舎暮らしを考えている人にとって、豊富な物件が出回る秋から冬にかけては、移住先や移住物件選びのベストシーズンである。

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 お盆休みから9月のシルバーウィークにかけて、長く使ってきた別荘で最後の避暑を楽しんだオーナーが、都心へ戻る際、地元の不動産業者に売却の依頼を出すことも多いからだ。

 しかし、物件が豊富に出回るこういう時期こそ、購入希望者は騙されないように気をつけなければならない。本来は移住用に向かない土地や物件を売りさばこうとする、悪徳業者がいるのだ。

 彼らに騙されないための「12の鉄則」をご紹介する。前編では、そのうち【1】から【6】の鉄則をご紹介しよう。

【鉄則1】住宅設備が最新でも、窪地、沢沿いは避ける

 次に挙げる2つの中古別荘のうち、あなたはどちらを購入しようと思うだろうか?

【A】家屋の住宅設備は真新しく、最高に素晴らしい。けれども若干、低地に建っている。
【B】住宅設備はリフォームの必要があるが、立地は高台にあり、眺望は最高。

 そんな二者択一の選択を迫られたのなら、間違いなく【B】を選ぼう。住宅設備は古くとも、高台のほうを購入すべきである。

 地方における窪地や低地のデメリットは、どれほど事前に納得したつもりになっても、実際は都会人の想像を超えている。

 山間地であればなおさらだ。山には必ず伏流水がある。梅雨時や長雨、台風の後に、しばらくすると飽和した伏流水が、こうした窪地に立ち現れることもある。

 平時は長閑(のどか)に見えても、降雨時には環境が一変する場所が、地方にはいくらでもある。地元民なら長年の生活で、そうした場所を知悉(ちしつ)している。だが、移住希望者が現地を訪れることなど、多くても数回だろう。たったそれだけで、土地の隠れ危険ポイントを把握するのはまず無理だ。

 素人でも、周囲を見渡し、窪地や低地になっているような、他より一段低い土地だと気づいたなら、絶対に手を出さない方が無難である。

 シダやクルミ、クリなど大量の水分を必要とする樹木がある場所は、土地の水気が多い。売却地の植生からも、土地の隠れた素顔を見抜くことができるのだ。植物に詳しい方なら、要チェックだろう。

 窪地や低地に建っている別荘がリノベーション済み、リフォーム済みを謳っていても、売れにくい土地であるからこそ、そうした手をかけているのだと疑ってかかったほうがいい。

 冬に降雪がある地域ならば、なおさらである。雪解けの春先からジメジメとしてきて、そのまま梅雨を迎えてしまう。年の半分も湿度に悩まされることも珍しくない。

 窪地や低地は日照条件も悪い。短期間限定の賃貸ならまだしも、購入した物件ならば、その後の生活が大変であり、売却にも苦労すると念頭に置いておいたほうがいいだろう。

【鉄則2】見下ろされるよりも、見下ろせる場所を

 窓を開けると、隣の屋根や住人の顔が見えてしまう――これでは、どれほど環境に恵まれた別荘地であっても、ストレスが溜まる。

 もし物件の前後左右に他人の家が建っていても、見下ろせる場所があるか、見通しが遮られない場所があるかはチェックしたほうがいい。要するに眺望のいい場所の有無だ。

 見通しのきかない別荘に、何百万円もかけて豪華なウッドデッキを整備したとしても、他人の家を眺めながら飲むモーニングコーヒーが旨いわけがない。

 別荘地では、最低限の閑静が保たれるよう、隣家との距離などの規則を科している業者も珍しくない。軽井沢町で別荘を建てる場合、敷地の最低面積や建ぺい率、隣家や道路との距離などを町が独自に条例で定めている。

 とはいえ、人によって不満を感じるポイントは様々だ。例えば私なら、窓を開けて隣家の屋根が目に飛び込んでくると、かなり気になってしまう。どれほど美しい小鳥のさえずりが聞こえていても、気に障る光景は気に障る。そして別荘の場合、不満が明らかになっても、引っ越すことは難しい。

 住んだばかりの頃は、気づかないということもある。入居者が周囲の風景に慣れた頃、実は視界に余計なものがあったことを見つける。これは相当に気になってしまうものだ。

 もし物件を見学した際、周囲が空き地だったら、「ここに別荘が建ったらどうなるか」と想像するのは大事なことだ。

 窓を開けたら隣家の屋根が目に入ってくるにしても、それが視界の端だったら何とかなるかもしれない。正面が開けているのなら、気持ちは楽になる。正面が塞がれてしまうと、気が滅入ってくるのは確実だ。せっかくの田舎暮らしも、郊外の住宅密集地と変わらない。

 家の正面が開けているかどうかは、必ずチェックしよう。富士山や浅間山、八ヶ岳や南アルプス、立山連峰が望めるならば最高だが、そこまでとはいかなくとも、とにもかくにも正面の眺望にはこだわり抜いてほしい。

 移住ライフの最大の魅力は、都会では得られなかった眺望と自然環境にこそある。だからこそ、南側の見通しがよい場所が絶対条件といえる。そして、そこは見下ろせる場所がいい。

 そうでなければ、首都圏郊外に広がる新興住宅地のほうが、よほど落ち着いた環境で、緑も豊かというケースは珍しくない。

 都心並みに密集し、眺望に乏しい移住集落も存在する。そういう場所では、移住・別荘ライフを楽しむ住民は少ない傾向にある。見通しだけが原因ではないとはいえ、重要なファクターであることは間違いないだろう。


■物件を探すなら真冬がベスト


【鉄則3】地方でのブランドホームは無意味

 有名な住宅メーカー、つまりブランドホームの工費は、在来工法に較べて極めて価格が高い。最近は、半ば工場生産のパネルを現地で組み合わせるだけで、工期も早い。もちろん高気密、高断熱だ。

 都会の住宅展示場に並び立つモデルハウスをそのスペックのまま建てることは、都会では土地が限られているために難しいが、地方であれば容易に可能だ。

 しかし、一番大切な基礎や組み上げは、あくまでも現地の下請け、孫請けの仕事である。ブランドホームの工場生産のパネルがいかに優れものであっても、すべては基礎工事の確かさにかかってくる。

 そこを担うのが、ブランドホーム本社が各地で契約している現地工務店である限り、設計性能通りに建てられるかは、すべてが工務店次第、ということになる。

 現地工務店の現場監督が、仕事に熱心ではなく、現場の監視を怠れば、“ブランド料”として上乗せされている桁違いの額がもったいない。大切なのは社名ではなく、施行当事者の能力であることは肝に銘じたい。

 更に言えば、最先端の住宅は、高気密高断熱、二重サッシで寒さにも強く、防音にも優れている。

 こんな“都会スペック”の家で、山暮らし、海暮らしをして楽しいだろうか、という疑問も湧く。朝は波の音で目覚め、夜は森に木霊(こだま)するフクロウの鳴き声のなかで眠りにつく生活をしたくても、防音の高気密住宅のなかには、秋の涼やかな虫の音ひとつ、入ってはこない。

 都会のマンション生活と田舎暮らしが、同じになってしまうのなら意味がない。自然と適度に馴染んだ生活を送るためにも、有名メーカーの住宅に魅力は乏しい。

【鉄則4】物件を探すなら、あえて真冬に

 田舎暮らしをしたい、田舎に移住したいという人に最適な物件は、別荘として利用されていた家屋だ。

 これは日本全国、どこでも変わらない。都会で生活している人間が建て、使ってきた別荘だからこそ、永住を考える都会人のニーズにもマッチする。似た発想で家屋が手入れされていることが多いのだ。

 冒頭で、そうした別荘物件は、夏の終わりに売り出されることをご紹介した。そのため、掘り出し物を含めて、秋以降にピークがやってくる。

 別荘を専門に手がける不動産業者にとっても、9月以降に訪れる客の成約件数は多い。理由は「秋がピークだと知る客は不動産取引にも慣れており、本気度が高い」からだ。

 こういうお客は、いわゆる富裕層の人たちが少なくない。既に売買を経験済みで、地方では秋に物件が動くことを知っているのだ。

 だが、私はあえて“真冬買い”をお勧めする。秋に出た物件をチェックしていると、真冬の12月、1月になると価格が停滞したまま、“冬眠”さながら眠っているものが少なくないからだ。

 不動産取引は奥が深い。超富裕層は多少の失敗など苦にしない。初秋に急いで購入し、気に入らなかったら晩秋に売りに出してしまう。オーナー企業の創業者など、たとえ中小企業のレベルであっても、高級外車を乗り換える感覚で物件を売買するものだ。

 現在の移住ブームを支えているのは、富裕層に近い中間層の人々で、将来設計は堅実だ。都会でマイホームのローンを払ってきた経験もあるので、不動産物件の購入や吟味も慣れており、移住物件選びにおいても手堅い姿勢を崩さない。富裕層ではない一般の人々は、こうした姿勢を見習わなければならない。

 不動産業者というのは得てして、かき入れ時やピーク時には成約を急ぎ、客に煽りをかける傾向がある。

 だが、お客にとって「あれっ、あの点はどうなんだろう?」、「この点はどうだったかな?」という疑問は、現地を1、2度見学した後、都会に戻ってくると不意に浮かんでくるものだ。本来であれば、自宅でのんびりしている時間帯に、そうした疑問点や確認点をメモし、更にもう1度、現地を見たいところだ。

 真冬の商談なら、不動産業者は客が少ないため余裕がある。煽りもなく、じっくりと時間をかけて何度も内覧に応じてくれる上に、説明も丁寧だ。都会で浮かんだ疑問点や確認点にも答えてくれる。まさにベストシーズンなのだ。


■オーナーに“直訴”する方法も


【鉄則5】まずは建物と土地、諸経費込みで250万円の物件を狙え

 気に入った別荘地は見つかったが、気に入った物件がない。そういう地域には、賃貸物件も存在しないものだ。

 そんな時はまず、割安の物件を探すことをおススメする。現在、地方の別荘物件は、バブル期に第一線で働いていた第1次ベビーブーマーが建てたものが、世代交代を迎えている時期にあたる。基本は投げ売りというのが業界の大勢なのだ。

 第1次ベビーブーマーは現在、70代。彼らが働き盛りだったバブル時代、地方のリゾート開発や別荘地開発が進んだ。「普通のサラリーマンでも別荘が持てた」という恵まれた世代だったのだ。

 それから30年以上が経過、老朽化した別荘に多額の費用をかけてリフォームする人は少ない。そのため、安くて良い物件がゴロゴロしている。

 最近では200万円を切るものさえ、定期的に出る。購入したとしても、数年住めばローンの負担額は家賃と変わらない。築30年とはいえ、多少のリフォームを行えば、まだまだ住むことができる。

 そこに住みながら、理想の物件が出ないか待つこともできるし、近隣に新しい移住の候補地を探すこともできる。

 購入費だが、後悔しないためには、まずは諸経費込みで250万円が上限だろう。家賃が月5万円を割る物件は、地方といえども多くはない。まして戸建てなら、月5万円の賃貸物件は少ない。

 5万円×12か月で60万円。少し余裕を見て年間70万円としよう。3年借りれば210万円。200万円の別荘なら、購入しても元が取れるわけだ。

 3年という歳月は、その土地を知るためにも、また飽きるにも、ちょうどいい期間である。1年目は全てが新鮮だ。2年目は慣れもあり、落ち着いて過ごすことができる。心の余裕が生まれる。

 3年目は庭造り、散策、現地でのサイクリング、陶芸、ステンドグラスなど、新しい趣味に挑戦する機会も増える。田舎暮らしに満足を覚えていれば、「もう少し家を広くしたい」という欲が出てくる。

 逆に「やはり自分には田舎暮らしには向かない」という結論に辿り着いた人もいるはずだ。そういう人は、別荘を手放し、都会に戻るべきだろう。

 土地が気に入って本格的な物件購入に向かうにしても、その土地との相性が合わずに撤収するにしても、賃貸並みの金額で購入した物件であれば、実際の家計収支上でも間違いなく損をしない。それこそ充分に納得して、後悔なく次のステップに移れるというものだ。

 もし都会に戻る際も、うまくいけば200万円で売れるかもしれない。例えば恩納村など沖縄のリゾート地でも、長野の山間部でも、土地の価格はたいがい1坪1万円である。

 別荘購入とはいえ、上物の価格は数十年も経過すればタダ同然。つまり200万円で別荘を購入するということは、200坪の土地を買うことと同じだと考えたほうがいい。

 自分と同じ感覚で移住を考えている希望者に、ほぼ同額で売り抜けることも絵空事ではないのだ。実質的に土地の評価額で売買されており、坪単価1万円は底値だ。1万円を割り込む可能性は決して高くない。

 転売し、次の別荘地に移住することに成功すれば、預貯金など自分の保有資産を大きく目減りさせる心配もない。これが購入費250万円を推奨するゆえんである。

 ただし、かつてバブル期に一斉に建てられた別荘の建築現場には、東南アジアからの出稼ぎ労働者らがあふれていた。彼らは器用で、言われた仕事を覚えるのも早いが、それでも、プロかと言われれば大工としてはアマチュアである。

 それゆえに、同時期に建てられたものでも、施工や仕上がりは差が大きく、築何年という情報がそのまま物件の評価には反映しきれない。しっかりしたものと、いい加減なものとの開きが、大きすぎるのだ。

 田舎での移住や別荘物件を専門に扱う、ある企業の社長を取材したことがある。社長はバブルを経て倒産寸前にまで追い詰められた企業の再生を請け負ったが、バブル期に施工された物件の対応に苦労したという。

【鉄則6】よさげな休眠物件には、直接、オーナーに手紙を出してみる

 ようやく国も自治体も、休眠地や空き家が増えていることへの対策に乗り出した。この状況は、移住希望者にとっては朗報である。

 休眠地や空き家への課税強化は、所有権者に対する活用インセンティブとして働く。「これを機会に手放せるものならば手放そう、売ってしまいたい」というきっかけともなるからだ。

車で走っていると、立地はいいのに、庇(ひさし)やバルコニーが崩れたままになっているなど、もう何年もオーナーが訪れていないような建物をよく見かける。

さらに、こんな場所に新築できれば眺望も最高だろうな、という場所もある。日本には国道、県道、林道が張り巡らされているので、およそ人の入れない山はないに等しい。道路から少し入った場所に、周囲と隔絶された静謐な理想物件が眠っていることも少なくないのだ。

 そうした休眠物件は、自ら法務局に足を運び、登記を調べて所有者を割り出し、「個人なのだが売却意思はありませんか」と手紙を出すと良い。

 もう自分だけでは訪れることもままならない、高齢のオーナーも少なくない。そうした別荘物件は、親が子に相続しようとしても、維持費の問題がのし掛かる。子供たちにとっても、辺鄙な場所にある別荘など“負動産”でしかない。

 そのため高齢のオーナーたちは、どうしていいかわからずに放置していることが少なくない。売れるものならば売ってしまいたいが、自分で現地の不動産業者と交渉することは億劫だ。そのため、休眠物件が生まれるわけだ。人気の別荘地周辺でも、それこそ山のようにある。

 ただ、仮に山中で理想の土地、建物を発見したとしても、法務局で登記を閲覧することなど大変ではないか、と心配する方もおられるだろう。

 そんな時は、まずグーグルマップを活用するのがいい。グーグルマップは、どこまでも縮尺を細かくして詳細にしていくと、最後はストリートビューの画像が表示される。その手前で当該場所を指すと、細かな住所まで表示される。

 それさえ判れば、あとは法務局で地番を調べ、土地や建物の登記を調べることができる。持ち主に丁寧な手紙を添えて出せば、現地の不動産相場よりも安価で譲ってもらえることもある。

 この場合、不動産業者を探す必要もない。手数料も発生しない。不動産登記も、基本的には法務局が手取り足取り最後まで窓口で面倒を見てくれる。それが面倒だという人は、登記だけを現地の司法書士に頼めばいい。

 司法書士の事務所は、法務局の周辺に集中している。飛び込みでまったく問題はない。不動産業者と司法書士は、密接な関係を結んでいるところがある。斡旋料として司法書士からキックバックを取っている不動産業者も存在するほどだ。自分で司法書士に依頼すれば、料金が安くなる可能性もある。

取材・文/清泉亮(せいせん・とおる)
移住アドバイザー。著書に『誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書』(東洋経済新報社)

週刊新潮WEB取材班

2019年10月9日 掲載

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