年金は将来もらえないから保険料を払うのはムダなのか


少子高齢化で年金支給額は減るだろうが、年金が受け取れないということはあり得ない、と筆者(塚崎公義)は考えています。

■少子高齢化で年金が減るのは仕方ない

日本の公的年金の制度は、現役世代が支払った年金保険料で高齢者に年金を支払うという「賦課方式」なので、少子高齢化になると高齢者が受け取る年金は減らざるを得ません。

少ない人数の現役世代が払った年金保険料を多くの高齢者で分け合うわけですから、これは政府の失政でも何でもなく、少子高齢化による当然の結果なのです。このあたりの事情については前回の拙稿『年金受給開始が70歳になっても大丈夫か? 少子高齢化の二面性( https://limo.media/articles/-/23044 )』を併せてご参照いただければ幸いです。

しかし、だからと言って「若者は将来年金が受け取れないのだから、自営業者や学生等が年金保険料を支払うのはムダだ」という人の言うことを信じるのは危険すぎます。年金保険料を支払っておかないと、老後に年金が受け取れないからです。

■年金が受け取れないことはない

そもそも現役世代の人数がゼロになるわけではないので、年金が全く受け取れないということはあり得ません。加えて、公的年金の1階部分である国民年金(基礎年金)については、高齢者に支払われる年金額の半分が税金で賄われていますから、この部分は少子高齢化によっても消えてなくなるわけではありません。

サラリーマンの厚生年金については、サラリーマンが払った年金保険料と同額を会社も払っているので、少子高齢化が進まなければサラリーマンは払った年金保険料の2倍の年金が老後に受け取れるはずなのです。そうであれば、多少現役と高齢者の比率が変わったとしても、年金が受け取れないなどということにはならないでしょう。

厚生労働省は5年に1度、年金支払額の見通し(財政検証)を発表しています。直近の発表によれば、さまざまなケース分けがなされていますが、比較的保守的な前提を置いたケースVでも、将来の高齢者の受け取る年金は今の高齢者の受け取っている年金より少し減るだけ、という結果となっています。

ちなみに当該見通しはインフレ調整後の数字ですから、年金がインフレで目減りすることはここでは考える必要はありません。

ケースVでも前提が甘いという論者も多いようですが、そうだとしても受取額が2割減るのか3割減るのか、というレベルの話であって、年金が受け取れないといった話では全くない、というのが多くの専門家たちの一致した考え方となっているわけです。

■シルバー民主主義が年金を守るはず

少子高齢化が進むということは、選挙権を持つ人の多くが高齢者になる、ということです。人数が多い上に高齢者は若者より投票に行く傾向があるので、高齢者を怒らせるような政策を掲げる政党は次の選挙で痛い目に遭う可能性が大きくなります。

したがって、どの政党も高齢者に優しい政策を掲げざるを得なくなる、というのが「シルバー民主主義」と言われる状態です。

筆者としては、年金問題は与野党の政争の具にするのではなく、与野党が協力して政策を打ち出すべきだと考えていますが、実際には難しいでしょうから、与野党が競って高齢者のご機嫌を取るような政策を打ち出す可能性が高いでしょう。

そうなれば、「若者向けの支出を削り、現役世代に増税をしても高齢者への年金支払いだけは減らさない」という政策が採用される可能性が高いと考えて良いでしょう。

■年金を支給しないと生活保護が増える

さらに実質的な理由もあります。年金を払わないと、あるいは大幅に減額すると、生活保護を申請する高齢者が激増してしまうはずです。少子化ですから、身寄りのない高齢者が増えていくわけで、彼らは年金で生活できないならば生活保護を申請せざるを得ないからです。

そうなると、財政赤字はかえって膨らんでしまうことにもなりかねません。従って、財政当局としては「生活保護申請者の激増を防止するために、年金だけは必ず払う」という政策を採らざるを得ないのです。

■子のいない被相続人の遺産は国庫に入れるべき

現在の法律では、配偶者も子もいない高齢者が他界した時には、遺産は兄弟姉妹が相続することになっています。それを改正して遺産を国庫に収めることにすれば、高齢者への年金の支払いが容易になるはずです。

年金制度が賦課方式であるということは、子のいない高齢者が受け取っていた年金の原資は他人の子が支払った年金保険料だったわけです。そうであれば、使い残した分は次の世代のために国庫に返還させるのが公平だと筆者は考える次第です。

そもそも兄弟姉妹が相続するのは「棚からぼた餅」のようなものですから、この制度を廃止することに対する反対意見はそれほど強くないと筆者は考えています。そうであれば、これを廃止して遺産を国庫に収めるという案が通る可能性も小さくないかもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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