人と組織を変えるときに外してはいけない「3つの原則」とは?

− 「人材力」と「組織力」を高める方法 −


 コロナ禍という激動の時世においては、経営や事業に影響を与える「人・組織の問題」を解決する重要性が増しています。

 筆者はこれまで、企業の組織力を強化するためのコンサルタントとして、採用・人事制度・人材育成にまつわるさまざまなお手伝いを行ってきました。この記事では拙著『人材力・組織力強化アクションリスト』をもとに、「人と組織を変える実践方法」について考えていきます。

 人材力・組織力の強化における考え方には、次の3つの原則があります。

・原則1 逆算思考
・原則2 複眼思考
・原則3 システム思考

 それぞれ順番に解説していきましょう。

■原則1 逆算思考 有限の資源、有限の時間で結果を出す

「大金持ちにも貧乏人にも、時間だけは等しくある」という言葉もある「時間」ですが、「時間の使い方次第で得られる結果が変わる」という貴重な経営資源だといえます。

 そこで、効果的な事業展開においては、有限の資源と時間で結果を出すにはどうしたらよいかという「逆算思考」にもとづく「手順の明確化」が必須と言えます。

 中小企業は限られた人材で事業展開している必要上、少数精鋭でなければなりません。日本では「俺の背中を見て育て」という文化が残っていますが、これでは属人的な組織を脱することは困難です。まずは人材力・組織力強化の原則の一つとして、逆算思考(手順の明確化)を大切にしましょう。

■原則2 複眼思考 関係性向上と結果追求の2軸で行動する

「会社」には、人と人が集まる組織体という側面から「関係性の向上」を図る必要性と、売上・利益追求のための組織体という側面から「結果追求」を図る必要性の二つがあります。

 しかし、この二つのバランスを取ることが難しいことから、「仲良しクラブ」あるいは「売上・利益偏重(極端に言えばブラック企業)」に陥ってしまいがちなのです。

 この二つのバランスが重要という意味で、人材力・組織力強化には複眼思考が原則となります。実践の際には「ルールの順守」、つまり関係性向上と結果追求の2軸からルールを設定し、会社全体で順守するようにしていきましょう。

■原則3 システム思考 「2:6:2」を踏まえた人材・組織モデル

・優秀な2割の人材が業績を牽引して組織を作る
・普通の6割がそこそこの仕事をする
・下の2割は業績にも組織的にもあまり貢献しない

 これは「2:6:2」の法則???別名「働きアリの法則」とも呼ばれるものです。

 この下位2割の人材に貴重な管理職の時間を空費しないようにすべく、人材力・組織力強化の三つ目の原則として「システム思考」が重要になってきます。

まず「上の2割」と「普通の6割」で経営・事業が継続できるようにします。また、「下の2割」にはパターン化した対応を決めておき、組織的なコストをいたずらに消耗させないようにするのです。

 要するに「2:6:2」の人材・組織モデルとは「業務の仕組み化」と言い換えることができます。このモデルがある程度できて、はじめて本来的な問題に集中できるようになります。

■人と組織を変える2つの鍵「構造改革」と「漸進的変化」

 ここまでの原則を踏まえつつ、自社のあるべき姿、つまりどこに自社の人材や組織が向かうのかをイメージングしましょう。このイメージなくして手段や方法ばかり検討すると失敗の憂き目に遭います。その上で、実際に人と組織を変えるには「構造改革」と「漸進的変化」の2つの方法があります。

「構造改革」は「仕組み・ルール」を変えることで、従業員の思考や行動を変えていくやり方です。一方「漸進的変化」は、日々の業務や出来事に着目して、一つひとつ改善・改良を図ることで、従業員の思考や行動を変えていくやり方ですが、図表1(別図版)にまとめたように、それぞれメリットとデメリットがあります。

図表1 構造改革と漸進的変化

 この内容を踏まえて「メリットの最大化とデメリットの最小化」を図る必要があります。その上で「構造改革」と「漸進的変化」のどちらが妥当か、慎重に検討して決定しましょう。

■構造改革におけるシナリオとマイルストーン

 構造改革・漸進的変化のいずれの方法で進めるかが決まったら、取り組みにおけるシナリオとマイルストーンを具体化・言語化しましょう。

 構造改革のシナリオは次のとおりです。

シナリオ@ ルールや仕組みを大きく変える
シナリオA 総論賛成・各論反対という流れが必ず生じる
シナリオB 対立や反発・混乱の内容と、押さえるべき対象を明確にする
シナリオC 上記シナリオBを踏まえて丁寧に対処をして「雨降って地固まる」状態とする

 このシナリオに構造改革の一種である「人事制度改定」を当てはめてみると、以下のようになります。

@ 人事制度改定に関する社長の了解を得る、あるいは社長自らが先頭に立って人事制度の改定を決める
A 改定作業中、開示可能な範囲で情報共有する。色々な意見や反論が出てくるが、改革の趣旨や方針から一貫した対応を取る
B 新人事制度を施行する前後には、不満や説明要求等が出る
C 個別の対応をきめ細かく行うことで「雨降って地固まる」状態とする

 このシナリオを踏まえて、マイルストーンを設定すると以下のようになります。

(1)「ルール・仕組みの変更」(シナリオ@に対応)
(2)「ルール・仕組みの変更周知」(シナリオ@、Aに対応)
(3)「対立・反発・混乱等への対応」(シナリオA〜Cに対応)
(4)「ルール・仕組みの定着化」(シナリオB、Cに対応

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■漸進的変化におけるシナリオとマイルストーン

 続いて、漸進的変化におけるシナリオとマイルストーンについてですが、まずシナリオは以下のとおりです。

シナリオ@ 日常の不満や「もっと〜だと良い」を集めて取り組むべきテーマを決める
シナリオA 「ちょっとした努力で変えられること」から優先的に変えていく
シナリオB 「好ましい変化」を定着させる各種の施策を行う
シナリオC 前記Bを踏まえ、さらなるテーマ設定とその取り組みにより「塵も積もれば山となる」状態とする

 このシナリオを、漸進的変化のアプローチを用いた「業務改善活動」に当てはめてみると、以下のようになります。

@ 部署のキーパーソンが中心となって、日々の業務における部員の不満や「もっと○○だと良い」という項目をヒアリングして集約し、「ムダ取り」というテーマを決める
A 部内におけるeメールのコミュニケーション、会議の進め方を変える
B 上記Aによる変化を関係者に周知する、あるいは定量的に示して「好ましい変化」をデファクトスタンダード=事実上の標準化とする
C「ムダ取り」というテーマから「顧客志向の業務活動」というテーマに移行して取り組むことにより「チリも積もれば山となる」状態とする

 漸進的変化におけるマイルストーンは以下のとおりです。

(1)「日常の業務行動や習慣の見直し」(シナリオ@、Aに対応)
(2)「スモールゴールの設定」(シナリオAに対応)
(3)「行動の習慣化・定着化」(シナリオBに対応)
(4)「さらなるゴール設定と行動の習慣化・定着化」(シナリオCに対応)

 ここまでのアプローチ・シナリオ・マイルストーンを図表2(別図版)に整理しました。自社のあるべき姿を描いたイメージングを思い返しつつ、妥当なアプローチ・シナリオ・マイルストーンを引いてみましょう。

図表2 シナリオ・マイルストーンの例

 それができれば、いよいよ「あとはやるだけ」という状態になります。

■この記事の要点のまとめ

 人材力・組織力強化を具体的に検討する際は、次の2つの点を押さえましょう。

・3つの原則「逆算思考」「複眼思考」「システム思考」に基づいて、高い人材力・組織力のイメージングを行う

・「構造改革」「漸進的変化」いずれか適切なアプローチを選択して、シナリオとマイルストーンを設定する

■ 清水 裕一(しみず・ゆういち)
 株式会社コアインテグリティー代表取締役。大学卒業後アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)、ザ・ヒューマン株式会社(現ヒューマンアカデミー株式会社)を経て、株式会社リンクアンドモチベーション入社。同社で採用・育成、人事制度・組織開発の各種コンサルティング等を手掛け、創業期の中心的メンバーとして活躍。その後アルー株式会社にて、責任者として研修プログラムの企画・開発を手掛ける。2015年株式会社コアインテグリティーを創業。中小企業の健全な成長・発展を支援すべく、事業計画立案支援、人事制度・営業力強化等のコンサルティング及びビジネススキル研修を中心とする各種プログラムを提供。

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