ちっとも効率的じゃない日本のテレワーク。またもやガラパゴス化!?


昨年くらいから「テレワーク」に「働き方改革」「ジョブ型雇用」など、私たちの働き方をめぐって、さまざまなキーワードが飛び交っています。正直、「黙って仕事させてくれよ」という気さえしてきますよね。

今回は今年(2021年)の6月に発表されたテレワークの最新レポートをもとに、もしかするとガラパゴス化の予感もする日本のテレワークについて考えていきます。

■テレワークで総労働時間が増加!?

6月22日に発表されたレポート「新展開を迎えた働き方改革・テレワーク推進〜コロナ下における課題と取組〜」。これは一般社団法人日本テレワーク協会が、「働き方の未来特別研究プロジェクト」において交換された意見や企業の事例をまとめたレポートです。

このプロジェクトには、テレワークで先進的なNTTデータや富士通などITに関わる企業をはじめとして、日産自動車、日本航空、三井住友海上火災保険など、幅広い業界から約20社が参加。主に人事担当者がメンバーとなっています。

注目されるのは、これらのテレワークに前向きに取り組んでいる企業において、コロナ禍によるテレワークが進んだ2020年度は、2019年度よりも総労働時間が延びている企業が目立ったという記載があることです。

テレワークは本来、業務の効率化を実現するはずですが、なぜ、こんな不思議な現象が起きるのでしょうか。

■ウェブ会議が多すぎる

同レポートでは、労働時間増加の原因の1つとして、ウェブ会議があげられています。

オフィスでは立ち話程度で済んだ相談をウェブ会議で行うことが多くなったと分析。また、オフィスの会議室と異なり、ウェブ会議は簡単に延長できることも影響を与えているとのこと。これらの原因により、スケジュールがウェブ会議で埋まり、長時間労働につながっているとしています。

このレポートの分析を、どう感じますか? たしかに「ウェブ会議は多いなぁ」という実感はありますよね。しかし個人的感想としては、テレワークに前向きな先進的な企業でさえ、「そうなのかぁ」とちょっと愕然としました。

よく考えてみると本末転倒な気がします。そもそも、“オフィスでは立ち話程度で済んだ相談をウェブ会議で行うことが多くなった"というのがオカシイ。

日本の会議は、そもそも立ち話や雑談並みということなのでしょうか。やはり日本の会議自体が、変なのかもしれませんね。たとえば日本の会議の特徴としてよく言われる「参加人数が多すぎる」「一言も発しない人たち」「5分で終わる内容を60分で」などなど、海外ではあまりないことだと思います。

日本人は根本的に会議好きなのかとも思いつつ、その一方、筆者が思い出すのは少し前の人気ドラマの名ゼリフです。「事件は会議室で起きてるんじゃない」・・・懐かしいですね。これが喝采を浴びたのは、一方で日本人は“会議なんてクダラナイ"とも思っているからなのかもしれません。とても不思議です。

■管理職の労働時間が増加

話を日本テレワーク協会のレポートに戻します。総労働時間の増加をもう少し詳しくみてみると、職位別では管理職の労働時間が増えているという事例が共有されたとのことです。

背景として、管理職においてはリモートでのマネジメントスキルを一から身につけなくてはならない状況があったとのこと。ウェブ上での1対1の面談の増加や不慣れなマネジメントなどが重なり、さらに先ほどのウェブ会議でスケジュール埋まり、結果として長時間労働になるという傾向が見られたといいます。

ここで思いだすのは、やはり日本企業特有の過剰な「ホウレンソウ」です。たとえば、外資系企業で「なんでそんなどうでもいいことまで報告するの?」「それくらい自分の頭で考えられないの?」と嫌味を言われてしまう現象。

結局のところ、先進的な企業でさえ、従来のビジネス・スキームをそっくりそのままリモートワーク上に移行しようとして、四苦八苦していると言えるのかもしれません。

当レポートのメンバー企業の中にはグローバルでの競争力を高めるために、仕事に人を割り当て、仕事の内容や遂行状況をもとに評価する「ジョブ型」人事への転換を加速する動きが見られるとしています。

そのような変革を目指す企業ならば、従来の過剰な「ホンレンソウ」をそのままリモート上に移行するのではなく、“過剰なホンレンソウ自体をやめてしまえば!?"とも思うのですが。ジョブ型の働き方を志向するならば、本来そうなるはずだとも思います。

■いままでの慣習をデジタルに持ち込むな

これらの流れをみて、つい思い出してしまうものがあります。それは、一昨年(2019年)末に発表された新製品「自動ハンコロボット」です。日本政府が行政におけるハンコの原則廃止を打ち出す前年でしたから、かなり話題になりました。テレビニュースでも取り上げられていましたね。

このニュースを見て、自分も多くの人と同様に心のなかで“そんなのハンコやめればいいんじゃないの"と思ったものです。やはり、日本人には従来からのスキームが絶対で、それを前提としてテクノロジーを発想する悪癖があるのかもしれませんね。

つまり、“過剰なホンレンソウ"を実現するためにチャットやウェブ会議を駆使するのではなく、“過剰なホンレンソウ"自体をやめてしまえば良い、ということなのですが。

ただ現在は、過渡期でさまざまなことが同時に起きています。見落としてはいけないのが大手企業で進む早期退職プログラムだと思います。最近では、人員整理をタブー視してきたパナソニックの早期退職プログラムがニュースになっています。

早期退職の進行は総人件費の圧縮と解釈されがちですが、実のところは“過剰なホンレンソウ"の受け皿である中間管理職は、もう無用の存在なのかもしれませんね。そのような意味では、スケジュールがウェブ会議で埋まり、長時間労働につながるというのも、長い目でみれば一過性の出来事なのかもしれません。

●参考資料

  • 新展開を迎えた働き方改革・テレワーク推進〜コロナ下における課題と取組〜( https://japan-telework.or.jp/news/newsrelease_2020hatarakikatanomirai/ )(2021年6月22日、一般社団法人日本テレワーク協会)

関連記事(外部サイト)