M&Aでサラリーマンから経営者へ? ビジネスチャンスはネット上に

− 今まで知らなかった「ネットM&A」の世界 −


 これまでサラリーマンが経営者になる方法といえば、リスクを冒して起業するか、会社の中で出世して取締役や社長に上り詰めるかというのが、おおよその選択肢でした。しかし近年、後継者のいない会社を第三者が引き継ぎ、経営者として経営していくという事例が急増しています。そういった状況を生み出し、牽引しているのがネットM&Aの存在です。

 私は「バトンズ」というネットM&Aのプラットフォームを運営していますが、そこで成立するM&Aの多くは、大企業同士のM&Aなどではなく、スモールM&Aと呼ばれる規模の小さなものです。そして、そのスモールM&Aのマーケットの中心には多くの「個人」が存在し、これまで経営をしたことのない人が、会社や事業を買収し、次々に経営者として経営にチャレンジしているのです。

 この記事では、実際にどのようなスモールM&Aが行われているのか事例を紹介しつつ、拙著『マンガ あなたの夢を叶える! ネットでスモールM&A』で述べている内容をもとに、個人によるM&Aが急増している理由でもあるネットM&Aのメリットについて解説していきます。

■1年で5倍!? 急成長するネットM&A市場

 私はよく「ネットM&Aは増えましたよね」と言われることがありますが、実はそうした人たちが想像している以上にネットM&Aの件数は増えています。たとえば、バトンズの2021年の4月〜6月の四半期の成約件数は、昨年の同じ時期と比べて約5倍でした。ネットを介さない一般的なM&Aが、ここ10年で7倍に拡大したと言われている中、ネットM&Aの市場拡大スピードはそれを大幅に上回る速度で成長をしているのです。

 一般的なM&Aは着手金と成功報酬で最低でも1000万円以上のお金がかかる。そうした案件が年間1000件程度成約していて、市場は10年で7倍に成長している。10年で7倍というのもすごい成長ですが、ネットM&Aはどうでしょうか? 成約したときの報酬の桁が1つ少なくなるネットM&Aの市場であれば、参入できる人の数も格段に増えるため、1年で5倍、10年では50倍になっても不思議ではないでしょう。

 では、いま急成長しているネットM&A市場では、実際にどのような事業が売り買いされているのか、われわれ自身が経験した事例をいくつか紹介しましょう。

■患者に寄り添う看護師から新郎新婦に寄り添うオーナーに

 看護師として活躍するも、2人目の子どもを出産するタイミングでキャリアに迷いが出た新島さん。というのも、看護師の業界では他の職種へ転職するケースは少ないため、ご自身の中で出産後に看護師を続けるか、辞めるかの2つしか選択肢がなかったそうです。

 そんなとき、たまたまアクセスしたわれわれのサイトで、ウェディングドレスの販売・レンタルの案件に目が留まりました。新島さんは経営をしたこともドレスを販売したこともありませんでしたが、ウェディングドレスを選ぶ時の大変さ、そして輝かしい気持ちは、ご自身の結婚式で実際に体験し、よく理解されていました。

 すぐに旦那様と相談し、事業承継に応募することを決め、事業計画を作成しはじめたそうです。ドレスショップの仕事は人の夢をお手伝いできる仕事。看護師を続けるか、辞めるかの2つの選択肢しかなかった新島さんに、3つ目の選択肢が開かれた瞬間でした。

 成約後、取引先としっかりと話し合い、新しい契約を交わすと、すぐにリブランディングの計画を立てました。今までは「手頃な価格帯」と「オーナーの人柄」がショップの強みだったところを「〇〇なのに手頃な価格帯」という方針でリブランディングを始め、「長期間貸出なのに手頃な価格帯」としてドレスの長期間貸出サービスも提供を開始。新婦に寄り添ったサービスを心がける新島さんらしい、新しい形のドレスショップが事業承継から生まれました。

■創業90余年のサイダー屋さんを承継

 広島県の自治体で長年地方公務員として勤務されてきた森本さんは、公務員の業務を通じて、若年層の都市部への流出、高齢化の加速、人口減少による店舗の減少や空き家の増加など、地方の街の活力が失われていっていることを肌で感じてきました。業務として地域活性化に関わってきましたが、どうしても間接的になってしまうため、もどかしい思いを経験していたそうです。であれば、個人としてできることがあるのではないか? そういう思いから事業承継という手法を選んだのです。

 森本さんがそうした想いを持って案件を探していた時、たまたま見つけたのが、広島・尾道の名物として知られる老舗のサイダー屋さん、後藤鉱泉所でした。

 後藤鉱泉所は全国区のテレビ番組で取り上げられ、観光スポットとしても非常に知名度がある。そんな事業が売却案件として掲載されている。もし買い手が見つからなければ廃業してしまうのは非常にもったいない。「これはきっと何かの巡り合わせかもしれない」と考えました。地域に愛され歴史ある事業を承継したい、という軸を持って会社を探していた森本さんにとって、後藤鉱泉所の後継ぎ募集はまたとない機会だったのです。

 昭和5年創業の後藤鉱泉所は、地域の人々に長年親しまれ、目玉商品のマルゴサイダーは一本一本手作りしており、現地でしか味わえない幻のサイダーとも言われています。前オーナーからサイダーの製造方法などを受け継ぎ、「地域の発展とSDGsへの貢献」を事業全体のビジョンとして取り組み始めています。

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■ネットM&Aならではの特長とは?

 新島さんにしても森本さんにしても、特別に給与が高い企業で働いていたというわけではありません。ごくごく一般的なサラリーマンです。ネットM&Aは、そういった方が経営者になるのを可能にしているのです。

 ネットM&Aの特長は、「低コスト」と「圧倒的スピード」です。先に述べたとおり、一般的なM&Aに比べると桁1つ少ない金額で事業承継をすることが可能です。また、ネットを通じて情報のやり取りやコミュニケーションを取れるため、成約までのスピードが段違いです。一般的なM&Aの成約までにかかる期間は平均11カ月、対してネットM&Aは平均3.5カ月。早いものは1カ月以内で成約する案件もあります。時間もコストと考えると、ネットM&Aのメリットがどれほど大きいものかがわかると思います。

 そして、もう一つ、一般的なM&Aに比べて大きな違いは、売り手と買い手の数です。たとえばわれわれのサイトでは、現在、毎月約300件の売り案件、1500件の買い手の新規登録があります。買い手にとってはさまざまな案件を比較・検討することができ、売り手にとっては最良の買い手に出会える可能性が上がるのです。

 経営者になるなんて考えたこともなかったという人でも、何かしら「やりたいこと」「挑戦してみたいこと」があるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ、一度ネットM&Aの世界をのぞいてみてください。新しい道が見つかるかもしれません。

■ 大山 敬義(おおやま・たかよし)
 日本最大のM&A仲介会社・日本M&Aセンターの創業メンバーの一人。
 以来30年にわたり数百件もの中堅中小企業のM&Aの実務に関わる一方、数多くの講演や著作で多くの後進のアドバイザーの指導にあたっている。また、企業再生の専門家でもあり、内閣府認可特定非営利活動法人 日本企業再生支援機構の理事を務める傍ら、単なるM&Aのアドバイザーにとどまらず、経営者としてハンズオンでの企業再生を行った経験を持つ。
 2018年4月には、日本M&Aセンターからスピンアウトして小規模ビジネス向けM&Aインターネットマッチングサービスを提供する「株式会社バトンズ」を設立、代表取締役に就任。TV等のメディア出演の一方、「NewsPicks」のpro pickerとしても活躍し、インターネットを通じて多くの情報発信を行う。

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