わかっているようで実はあやふや? 経済成長率と景気はどう関係しているのか


経済成長率は、長期では国が豊かになっていく様子を、短期では景気の良し悪しを判断する材料だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

■経済成長率は実質GDPの増加率

経済成長率という言葉は良く聞きますが、実質GDPの増加率を指すのが普通です。実質GDPというのは「国内で生産された付加価値を実質ベースで見たもの」なのですが、わかりやすく言えば国内で生産された物(財およびサービス、以下同様)の数量のことで、その増加率が経済成長率だということになります。

つまり、経済成長率が高いということは、去年より多くの物が生産されるようになったということですね。様々な物の生産量の増加率を加重平均して計算するわけです。

わかりすく言えば、自動車の生産数量が1%増えて、鉛筆の生産数量が1%減った場合には、当然ですが自動車の方が重要なので、経済成長率はゼロではなく1%弱ということになるわけですね。

■長期的に成長率が高ければ国が豊かになっていく

経済成長率が高いということは、前年より多くの物が生産されるということなので、長期的に見ると毎年人々の暮らしが豊かになっていくということになります。多くの物が生産されれば多くの物が消費されるでしょうから、消費生活が豊かになるわけですね。

もちろん、理論的には例外があり得ます。王様が富を独占していて、生産された物はすべて輸出されて金銀財宝となって王様の金庫に入ってしまうような国では、庶民には全く経済成長の恩恵が及ばないといったこともあり得るからです。しかし、普通の国では庶民の生活水準も上がっていくと考えて良いでしょう。

日本の高度成長期には、毎年平均10%近い経済成長が続いたため、人々の暮らしは飛躍的に豊かになりました。生産量が増えた分だけ人々の給料が増えて消費量が増えたので、作った物が売れ残らなかったわけですね。

■短期では、経済成長率が景気と連動

経済成長率が高いと、長期では人々の暮らしが豊かになっていきますが、短期では失業が減ります。去年より多くの物が生産されるわけですから、去年より多くの労働者が雇われるはずで、その分だけ失業者が減るはずだからです。

雇われて給料を受け取った元失業者が消費を増やせば、景気がさらによくなって、企業はさらに増産して、そのために別の失業者も雇うといったことが起きるわけですね。

反対に、経済成長率が低いと労働者を雇う企業が減るので、失業者が増えてしまいます。不況です。

したがって、景気予想屋は来年の景気を予想する時に「来年の経済成長率は何%だと思うか」という話をします。「すごく景気が良い」「少し景気が悪い」などと言うよりも、数字の方が慣れた人にはイメージが湧きやすいからです。

もっとも、慣れない人は経済成長率の数字を聞いても景気が良いのか悪いのかイメージしにくいかもしれませんね。その場合には、景気予想屋の発言を聞いて言葉から景気をイメージするしかないでしょうが。

ひとつ注意しておきたいのは、景気の方向と水準を分けて考えるということです。景気が回復を始めたばかりの時には、経済成長率が高くて失業が減って利益が改善しているとしても、水準的には失業者が「超多い」から「多い」に減り、企業収益も赤字が縮小しただけという場合もあるからです。

したがって、正確には経済成長率が高い時には、「景気が良い」と言うべきではなく、「景気が改善しつつある」または「景気の方向が上を向いている」と言うべきなのですね。

■景気と成長率を考える際の基本は潜在成長率

経済成長率が高い時は景気が上向き、低い時は景気が下向きと上に記しましたが、高いか低いかを判断する基準が必要ですね。それが潜在成長率と言われるものです。これは、失業率を変化させないような成長率といった意味だと思ってください。

経済成長率がゼロだと不景気だと言われます。昨年と同じ量の物が生産され、消費されているので不満はないはずなのですが、そうではないのですね。その主な理由は技術が進歩するからです。

技術進歩というのは発明発見のことではなく、国内で使われている技術の進歩のことです。たとえば飲食店が自動食器洗い機を買うと、労働者一人当たりのサービス生産量が増えます。

その分だけ多くの客が来ないと少ない従業員数で店が経営できてしまうので、人減らしで失業者が増えてしまうわけです。飲食店の売上高が昨年と同じだと失業が増えてしまうので、不況になるわけですね。

潜在成長率というのは、失業者が増えも減りもしない心地よい成長率なので、成長率を潜在成長率に一致させるために政府・日銀が景気調節をするのが基本です。

もっとも、不況で失業者が大勢いる時には、潜在成長率よりも高い成長率を達成して失業者を減らす必要があるので、いつでも潜在成長率が望ましいというわけではありません。不況期と好況期を平均して潜在成長率、というのが好ましいと言えるでしょう。

■潜在成長率は国により時代により様々

途上国では手で畑を耕しています。そこにトラクターが導入されると、農業労働者一人当たりの生産力が何倍にもなります。余った労働者は都会に働きに行き、ミシンを作ります。

そうなると、洋服屋が手作業ではなくミシンを使って洋服を作れるようになるので、洋服の生産量が爆発的に増えます。こうして、途上国では失業者が増えも減りもせずに高度成長が可能になるのです。

一方、日本では既に農家はトラクターを持っていますから、最新式のトラクターに買い替えたとしても一人当たりの生産量はそれほど増えません。洋服屋についても同様です。

したがって、労働者一人当たりの生産量はそれほど増えず、ゼロ成長でも概ね前年と同数の労働者が必要となるので、失業者は少ししか増えません。

そこで日本では、毎年1%程度の経済成長があれば失業者は増えず、それ以上の成長だと労働力不足になってしまう、というわけですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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