【還暦60歳代】貯蓄2000万円ある人は32.9%。年金だけで生活できる割合は意外に少ない


夏休みを控え、レジャーの計画を立てている方も多いのではないでしょうか。出費が重なる季節ですが、みんなはいくらぐらいの貯蓄をしているのか気になるところです。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」によると、60歳代で2000万円〜3000万円未満の貯蓄がある割合は9.6%、3000万円以上の割合は22.8%です。

一見すると十分な貯蓄に思えますが、老後資金は2000万円以上あれば本当に足りるのでしょうか。

また、年金のみで生活できている割合も気になるポイントです。

そこで今回は老後資金にフォーカスし、年金と貯蓄を増やす方法について解説します。

■貯蓄2000万円あれば老後は安泰?

結論から申し上げると、貯蓄が2000万円以上あれば老後が安泰とは限りません。

2019年に話題になった「老後2000万円問題」ですが、おそらく多くの方が「老後に備えて2000万円貯めておけばいい」と考えているでしょう。

実際、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」にはこのように書かれています。

(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約 1300万円、30年で約2000万円の取崩しが必要になる。

※(2)は報告書8ページから述べている収入と支出に関する報告

出所:金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)厚生労働省提出資料「iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」をもとにLIMO編集部作成

ただし「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合」というのは、報告書に記載された平均値を元に算出された不足額です。

世帯によって収入や支出、必要な生活費は大きく異なります。単に「老後は2000万円の貯蓄があればいい」と考えるのは危険です。

■年金だけで生活できる人は何%?

次に、厚生労働省が2019年に実施した「国民生活基礎調査」のデータを見ていきましょう。

2019年時点のデータによると、年金および恩給で生活できている割合は48.4%となっています。

出所:厚生労働省「国民生活基礎調査」

残る51.6%の内訳は以下のとおりです。

  • 80〜100%未満の世帯:12.5%
  • 60〜80%未満の世帯:14.5%
  • 40〜60%未満の世帯:12.7%
  • 20〜40%未満の世帯:8.1%
  • 20%未満の世帯:3.9%

特に、年金および恩給が60%未満の場合、貯蓄が少ないとさまざまな弊害が出てくるでしょう。

■2022年に改定された年金制度をおさらい

2022年の4月と5月に年金制度が改正されました。60歳以降および現役世代の方は、次の4つを活用すると年金額を増やせます。

  • 在職中の年金受給の要件緩和
  • 在職定時改定の導入
  • 年員受給開始年齢の上限が75歳に延長
  • 確定拠出年金の加入条件見直し

具体的な内容を解説していきます。

■在職老齢年金制度の見直し

60歳〜64歳の方が働きながら年金を受け取る際、賃金と年金の合計額が28万円〜47万円の方は年金が支給されなくなります。

これまでの制度では、60歳〜64歳の方は賃金と年金の合計額が28万円を超えると、一部または全額が停止されました。

4月以降は、65歳以降の支給停止要件47万円が60歳〜64歳も適用されています。

この制度により、働きながら受け取る年金額が増加し、貯蓄に回せるようになりました。

ただしこの制度は、男性は2025年度・女性は2030年までの措置です。

■在職定時改定の導入

65歳以上で働きながら老齢厚生年金を受け取っている方は、毎年10月に年金額を改定し、納めた保険料が年金額に反映されるようになりました。

これにより65歳以上で働いている方は、納めた分だけ受け取れる年金が増加しています。

本制度は「在職老齢年金制度の見直し」とは異なり、現段階で期限は設けられていません。

■年金受給開始年齢の上限が75歳に延長

繰り下げ受給の上限70歳が引き上げられ、現在は60歳〜75歳の間で受給開始時期を選択できるようになりました。

本制度は、2022年4月以降に70歳を迎える方(昭和27年4月2日以降に生まれた方)が対象です。

繰り下げ増額率は1月当たり0.7%(最大84%)。65歳に受け取る場合は1ヵ月の年金受給額が増えるメリットがあります。

ただし繰り下げ受給した場合、社会保険料や住民税の負担が増す可能性や、加給年金が受け取れない可能性があります。

繰り下げ受給を検討する際は、上記のデメリットに注意しましょう。

■確定拠出年金の加入条件見直し

2022年5月より、iDeCoや企業型DCといった確定拠出年金の加入条件が緩和されました。具体的な内容は次のとおりです。

■企業型DCの加入可能要件見直し

緩和されたiDeCoの加入条件はこちらです。

  • 厚生年金に加入している60歳〜65歳未満の方
  • 国民年金に任意加入している60歳〜65歳未満の方
  • 国民年金に任意加入している海外の方

なお、受け取り時期も60歳〜75歳に拡大されました。

■中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲の拡大

企業型DC加入者がiDeCoに加入する際、企業の合意や労使合意にもとづく規約の変更といった条件が不要となり、本人の意思のみで加入できるようになりました。

ただし、加入者本人が掛け金を上乗せして拠出する「マッチング拠出」を利用している場合は加入できません。

更に、企業型DCとiDeCoを併用する場合、2つの掛け金合計額が5万5000円を超えないよう調整しなければなりません。

■個人型DC(iDeCo)の加入可能要件見直し

厚生年金や国民年金に任意加入している方がiDeCoに加入する際、年齢の上限が65歳未満まで引き上げられました。

ただし、自営業者などの第1号被保険者・専業主婦(夫)といった第3号被保険者は対象外です。

ちなみに受け取り時期は、企業型DCと同様60歳〜75歳に拡大されています。

■自身に合った方法で老後資金の準備を

年金制度改定により、年金額増加や確定拠出年金の加入条件が緩和され、老後資金の準備が多少容易になりました。

貯蓄や将来受け取る年金が心配な方は、ご自身に合った方法で老後資金を準備してみてください。

■参考資料

  • 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf )
  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/pdf/yoronf21.pdf )
  • 厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf )
  • 厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html )
  • 厚生労働省「被用者保険の適用拡大について」
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」

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