最新の平均寿命表から考える65歳以上「無職世帯」の平均貯蓄額と老後の備え
2022年09月12日 06時50分LIMO

9月も10日以上が過ぎ、日に日に日照時間が短くなってきました。秋の夜長といいますが、さまざまなことを考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
織田信長が人生50年という辞世の句を読んでから約450年の時を経て、今は人生100年に備える時代に変化してきました。
そんな中、2022年7月29日に公表された厚生労働省「令和3年簡易生命表概況」から平均寿命と老後の備えについて考えていきたいと思います。
■平均寿命の推移から分かる労働の考え方
それでは早速、平均寿命の推移を確認したいと思います。

出所:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」(2022年7月29日公表)
男性は81.47歳。女性は87.57歳であることが分かります。
コロナの影響がどこまであるのかはわかりませんが、この表で見る限り、この一年は初めて平均寿命が短くなっています。一方で、日本が長寿大国であることは間違いなさそうです。
一般的な年金開始年齢が65歳からですので、65歳から平均寿命まで、男性で約16年、女性で約22年あります。
年金制度が開始された1961年(昭和36年)頃の平均寿命は男性が65歳程度、女性が70歳程度であり、60歳年金開始であっても、男性で約5年、女性が約10年でした。
現在の我々は年金制度が始まった頃よりも男性で約3倍、女性で約2倍の年数が年金受給の人生だと言えるでしょう。
もらえる期間が長くなったことで、年金の財源がという話もよく耳にするようになり、今では60歳を超えても働く人が増えてきています。
内閣府の「令和4年版高齢者社会白書(全体版)」によれば、60歳代の就職率を2002年と2020年で比較すると、以下のようになっています。

出所:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
■60~64歳
- 57.1% 2002年
- 71.5% 2020年
■65~69歳
- 36.4% 2002年
- 50.3% 2020年
この20年で働く60代が増えていることが分かります。
働きたくて働いているのか、それとも働かざるを得なくて働いているのかは、個人によって異なるとことです。
果たして年金開始年齢の65歳以上の方は、どれほど資産を持っているのでしょうか。
■65歳以上の無職世帯の貯蓄事情
ここからは、65歳以上の貯蓄状況を、総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2021年平均結果(二人以上世帯)」で確認してみます。
■65歳以上無職世帯貯蓄額
平均貯蓄現在高:2342万円
《内訳》
- 通貨性預貯金:623万円
- 定期性預貯金:924万円
- 生命保険など:403万円
- 有価証券:388万円
- 金融機関外:4万円
平均貯蓄現在高は2000万円を超え、老後2000万円問題も乗り越えられそうですね。
ただ、平均値は一部の大きい値に引っ張られ、しばしば実態とかけ離れることもありますので、注意が必要です。
とは言うものの、この内訳を見てみると、銀行にお金を7割も預けていることがわかります。その他には生命保険や株、投資信託などで3割となっています。
意外と投資にもお金は回っていると考えるか、それとも少ないなと感じるか、分かれるところかもしれません。
65歳では今後資産を取り崩すことになっていくので、急な不景気に備えて、このぐらいの現金があることは大切に感じます。
しかし、資産形成層が同じ様に資産を配分することは危険かもしれません。
■資産形成とは
先程のデータで、我が国の65歳は意外と合理的な資産形成をしていることがわかりました。
それでは次に資産形成をしていく中で、大事な3つのポイントについてお話したいと思います。
■資産形成のポイント1. 目標を知る
自分の望む老後を過ごすために必要な資金とはいくらでしょうか。自分の将来の年金はいくらで、いくら貯めればいいのか。
それは持ち家か賃貸かでも変わりますし、会社員か自営か、介護にいくら備えるのかなど人それぞれです。まずは自分の貯めたい額をイメージしましょう。
■資産形成のポイント2. 早く始める
株は上がるか下がるかわからない。お金が減るのは怖い。これはたしかにそのとおりですが、なぜそのようなイメージがついたのでしょうか。
それは我々が日本人だからでは無いでしょうか。ご存知のとおり、日経平均は1989年バブル期にピークをつけ、その後約35年間一度もそこに到達していません。しかし、世界全体の株式の価格は、同じ時期から今までで約7倍になっています。
リーマンショックやコロナショックが起こってもその状況は変わらず、世界人口の増加に伴って今後も上昇することが予想されています。右上に上がるチャートの買い時は今であり、少しでも早く始めることが2つ目のポイントです。
■資産形成のポイント3. 積立投資を利用する
一括で運用できる資金がすでにある場合、一括で運用するほうが運用効率は上がるというのは事実ですが、投資を始めるのに、誰もが最初からまとまった資金を持っているわけではありません。
月3万円でも30年積み立てれば元金が1080万円になります。これを年率5%で最初から運用いていたら約2500万円に到達します。
投資にはリスクも伴いますが、世界株式の過去100年の平均利回りはおよそ7%なので、5%で考えていただいたとしても積立投資力は偉大と言えるでしょう。
■まとめ
今回は、平均寿命が伸びたことで必要になった「資産運用」について解説しました。
資産運用と聞くと、分からないと思ってしまう方もいらっしゃいますが、資産運用はゴルフと似ています。
ゴルフの道具には、距離は飛ぶがブレやすいドライバーと、距離は出ないが正確なパターがあります。
65歳以上のグリーンにのっている方にドライバーを渡す人がいれば、どのように思いますか?
逆に資産形成層にパターを渡すことも、これと同様に危険なことだという考え方もできます。
我々は今の年齢やゴールを正確に把握して、豊かな老後を目指したいものです。
■参考資料
- 厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」(2022年7月29日公表)( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life18-02.pdf )
- 内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」( https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s2s_01.pdf )
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)」( https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000000330007&tclass2=000000330008&tclass3=000000330009&stat_infid=000032191007&result_back=1&tclass4val=0 )
記事にコメントを書いてみませんか?