「いきなり!ステーキ」大規模閉店。ライザップとの違いは何か

いきなり!ステーキのペッパーフードとRIZAPの差分析 いきステに根強いファンの存在

記事まとめ

  • いきなり!ステーキ運営のペッパーフードが3月13日、当初の業績見通しを非開示とした
  • いきなり!ステーキは、15%近くの削減となる74店の閉店計画を明かし、注目を集めた
  • ライザップとはビジネスの強さの違いがあり、いきステ低迷はいずれ底打ちする可能性も

「いきなり!ステーキ」大規模閉店。ライザップとの違いは何か


「いきなり!ステーキ」運営のペッパーフードは2020年3月13日、新型コロナウイルスの影響で当初の業績見通しを非開示とした。当初は、今期に関しては減収となる計画であったのが、今回の新型コロナウイルスによるいわゆる「コロナショック」によってさらに見通しが立ちにくい状況となったことになる。今回はペッパーフードの業績悪化の原因を探るほか、財務的危機とその打開策についてライザップとの比較を紹介する。

■「いきなり!ステーキ」"74店"閉店へ

ペッパーフードは2020年2月14日、2019年12月期決算と2020年12月期の業績計画を発表した。前期の連結売上高が675億円(前の期比6.3%増)、営業損益が7100万円の赤字(前の期は39億円の黒字)、純損益が27億円の赤字(同1億円の赤字)。

当初の今期の見通しは売上高614億円(前期比9.1%減)、営業利益6億円、純利益2300万円とした。前期は損益面の悪化が激しく、今期についても当初は減収計画となっており、見栄えは悪かった。しかし、その後新型コロナウイルスの影響で業績見通しを一旦非開示とした。

もっとも、株式市場の注目をより集めたのは、決算説明会資料( https://www.pepper-fs.co.jp/_img/ir/lib/2020/PFS20200226.pdf )で明かされた今期「いきなり!ステーキ」74店の閉店計画だろう。

出店が2店舗予定されているので実質72店舗の減少となるが、2019年末時点での493店舗に対して15%近く削減することとなる。そして何より、近年急激に拡大してきた「いきなり!ステーキ」の店舗数が減少に転じるということが大きな転換点だ。

ペッパーフードは「いきなり!ステーキ」事業のほか、「ペッパーランチ」「レストラン」「商品販売」の計4つの事業を手掛けているが、「いきなり!ステーキ」事業の寄与は非常に大きい。

「いきなり!ステーキ」の店舗当たり売上高はその高単価・高回転の強みを活かすことで、「ペッパーランチ」の約10倍にも上る。

「いきなり!ステーキ」事業はスタートして以降、「ステーキを立ち食いする」という斬新なコンセプトがヒットし、メディアへの露出増加やネットでの話題性もあって繁盛した。それに伴い、店舗数も急拡大。会社全体の売上高も2018年12月期までは驚異的なペースで伸びてきた。

ペッパーフードの業績拡大の立役者となってきた「いきなり!ステーキ」事業だが、今期の当初計画は店舗数、セグメント売上高ともに減少する見通しだ。店舗数を増やし過ぎたせいで店舗同士の客の取り合いが激しくなり、事業としての収益性が悪化しているとの見方もある。

実は、この兆候については2018年12月期から出始めていた。この期の第4四半期(2018年10月〜2018年12月)に、「いきなり!ステーキ」の関連資産で10億円規模の減損損失を計上。

また、2019年12月期では、6月に出店計画を210店舗から115店舗へと大幅に下方修正し、それに伴って業績予想も引き下げ。11月にはさらに44店舗の閉店を決定しており、多額の減損損失も計上することで、冒頭に述べた2019年12月期、純損益27億円の赤字の着地に至った。

■背景には「世間の飽き」?

「いきなり!ステーキ」の既存店売上高は2017年のピーク時には前年比20〜40%増と非常に高水準な成長を見せていたものの、2018年に入ると鈍化。同年4月以降からは前年割れが長らく続いている。

2019年7月からは30%以上にまで減少幅は広がり、最も悪い月だと40%を超える月もあった。客単価はここ数年ほぼ横ばいであるものの、客数の減少が顕著であり、それが既存店売上高の軟調につながっている。上述したように、これについて会社側は店舗数の急増に伴う店舗間の競争激化が原因としている。

ただ、「ステーキを立ち食いする」という斬新さ・話題性が集客につながっていたという側面を踏まえると、「いきなり!ステーキ」の繁盛は一種のブームだったとも考えられ、既存店の軟調の原因には店舗同士の競争激化のほか、単純に「世間が飽きた」という筋も大いにあり得そうだ。

■自己資本比率の実績はわずか"2%"台に

業績の急拡大から一転、多額の損失を計上したペッパーフードの財務は急激に悪化している。純資産は2018年12月期末の37億円から、2019年12月期末には6億円にまで減少。

もともと負債を活用して規模を大きくする「レバレッジ経営」を進めてきたこともあって、自己資本比率は2018年12月期末の14%から2019年12月期末には2%にまで低下した。

純資産がマイナスの状態となる「債務超過」目前の状況である。現預金も2018年12月期末の67億円から2019年12月期末には25億円まで減少しており、資金繰りの点でも不安が大きい。

この危機的状況を打開するために、ペッパーフードは2019年12月終盤にMSCBを発行すると発表した。

MSワラントとは正式名称を「行使価額修正条項付新株予約権」という。この資金調達手法は株式の希薄化リスクが大きいので、機関投資家などの大口株主からは警戒されることが多い。そのため、業績が堅調だったり、財務が安全だったりする企業はまず行わない手法だ。

■前期フリーキャッシュフローは大きな赤字に

2018年12月期には65億円のプラスだった営業キャッシュフローは、2019年12月期には6億円のマイナスとなった。投資キャッシュフローについては、毎期継続的に建物などの有形固定資産を取得していることで、2018年12月期、2019年12月期ともに60億円のマイナス。これにより、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)は69億円のマイナスとなった。

株価(以下、株式分割を考慮)は、2017年1月までは500〜700円で長らく推移していた。そして、業績拡大やマザーズ市場からの市場変更が好感され、同年2月以降に急上昇。11月には8000円を超え、わずか1年足らずで俗にいう「テンバガー(株価が10倍まで上昇)」を達成した。

しかし、そのタイミングで既存店売上高の伸びが鈍化し始め、以降は成長期待の剥落や業績悪化を背景に売りが継続。直近ではFCFの大幅赤字なども嫌気され、2020年3月30日現在で株価は431円。振り返ると、2年ちょっとで「逆テンバガー」を起こすなど、ジェットコースターのような株価推移となった。

■バリュエーションもジェットコースターの様

バリュエーションも大きく変化してきた。以下、前期の純損失や今期の低水準な純利益を考慮してPER(時価総額 / 純利益)ではなく、PSR(時価総額 / 売上高)で説明する。

ペッパーフードのPSRは株価が上昇し始める2017年2月までは、1倍前後で推移してきた。1倍という水準は典型的な成熟企業とおおむね同じ水準であり、成長はさほど期待されていない。

しかし、以降は株価上昇に伴って急激に上昇し、同年終盤には4〜5倍で推移。PSR4〜5倍というと、業種こそ違えど、高成長の期待される企業などにつくような水準である。

好調な既存店売上高を背景に、いかに市場で楽観的な見方が広がっていたかがわかる。しかし、2018年以降は急低下し、3月上旬は約0.2倍と、株価急騰前の水準どころかそれをさらに下回っている。

■同じジェットコースター銘柄「ライザップ」よりも回復の見込み有り?!

ペッパーフードのジェットコースターのような株価について、プライベートジムを運営するRIZAPグループ(以下、ライザップ)も時を同じくして似たような値動きを辿っていた。ライザップの株価は2017年4月までは200円前後で推移しており、それ以降急上昇。11月には1500円を超えた。しかしその後は売りが続き、現在150円台となっている。

ライザップはジムを運営するかたわら、経営難の企業を次々と買収し、事業を拡大させていった。その際、「負ののれん計上益」を積み上げることで営業利益を大きく伸ばしてきた。

負ののれんとは簡単にいえば他社を割安で買収できた時のそのディスカウント分であり、会計を成り立たせるために必要とされている面が強い。それゆえ、なにかモノやサービスを売って得た利益とは異なり、負ののれん計上益を上げたからといってそれ自体にキャッシュの流入は伴わない。

実際に、2018年3月期の営業利益に対して、営業キャッシュフローはわずか8700万円のプラスだったように、利益とキャッシュの動きに大きな乖離があった。

会計上の仕組みを使った増益はいわば「帳簿上だけの増益」に過ぎず、そのしわ寄せが来たことでライザップの営業利益は一転して大きく悪化。こういった経緯により、ライザップの株価もペッパーフードと似たような推移となった。

株価の推移や利益の大幅増・大幅減という共通点はあるものの、ペッパーフードとライザップのケースには決定的な違いがある。

それまでの業績拡大が「実業によるものなのか、そうではないか」という点だ。ライザップは「帳簿上だけの増益」、いわば虚業の成果を重ねることで利益を伸ばしていた。

しかし、ペッパーフードはというと「いきなり!ステーキ」という実業を展開することで利益・キャッシュを両方伸ばしてきた。

ここに、ライザップとペッパーフードの「ビジネスの強さの違い」があると考える。客数の減少は激しいものの、根強いファンの存在などにより「いきなり!ステーキ」の低迷はいずれ底打ちする可能性が高い。

増え過ぎた店舗を大きく減らして膿を出すことで、それ以降は需要と供給、収益と費用のバランスがとれた事業に戻る可能性もある。

加えて、当初計画ベースでペッパーフードには「いきなり!ステーキ」事業の他にも年間売上高90億円台、セグメント利益10億円台の「ペッパーランチ」事業などがある。顧客に支持されてきたという実績と手持ちの駒の多さなども踏まえれば、同じ「ジェットコースター銘柄」といえど、ライザップよりもペッパーフードの方が経営再建の見通しは明るいとみている。

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