もうニューヨークに未練はない!コロナ禍で、ニューヨークを去る富裕層たち


黒人差別に対する抗議デモがアメリカ各地に広がり、ニューヨーク市内にもデモに参加する人が大勢集まりました。

コロナ禍では、ニューヨークの超富裕層は優雅に別荘地で自主隔離。結局新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害をうけたのは、街の必要業務を担う職業の人々で、医療従事者を除き、その多くは低所得層でした。そのため格差問題を強調することになったのです。抗議デモではただ単に黒人差別だけではなく、こういったアメリカの差別や格差という社会構造の不公平さに対する抗議でもあるといえます。

そんな格差が最も激しいニューヨークではパンデミックで失業した人だけではなく、高い家賃や不健全さを我慢してまで住む価値はあるのかと、街を去るニューヨーカーが増えています。

コロナ禍で多くのレストランやバーなども潰れ、人口流出にも拍車がかかり、姿を変えていくニューヨークの未来について考えます。

■空洞化するニューヨーク

「今回は今まで以上に複雑だ」「ダメージが深すぎて、影響は長く続くだろう」とニューヨークで慈善基金団体を運営するキャロル・ケラーマンさんは言います(※1)( https://www.ft.com/content/a313a40c-b046-4b11-b302-41d9f347cddb )。

今まで、ニューヨークは2001年の9.11の同時多発テロ事件、2008年の金融危機などの他に様々な自然災害に襲われた時も、ニューヨークは強さを増して立ち直ってきました。しかし、今回のパンデミックからはそう簡単に立ち直れないだろうと、ニューヨークの未来に悲観的な意見が目立ちます。

COVID-19はニューヨークが今まで抱えてきた様々な問題を一気に悪化させてしまったのです。

実は、ここ数年ニューヨークでは格差問題の他に人口流出が顕著になり、税収減での財政逼迫や、街中に空き店舗が増えるなどの問題を抱えていました。家賃の高騰が止まらず、昔からの住民は悲鳴を上げて引っ越しせざるを得ない状況でした。また州所得税が高過ぎると、フロリダなど所得税率の低い州へ引っ越す富裕層達も多くなりました。

そして、パンデミックは人口流出に拍車をかけています。3月1日~5月1日の間にニューヨーク市の約5%(約42万人)が街から流出していることが明らかになりました(※2)( https://www.nytimes.com/interactive/2020/05/15/upshot/who-left-new-york-coronavirus.html )。

■高い家賃を払う価値がない

パンデミックで失業し家賃を払えず、街を出ていく人もいます。また、数十年間地元の常連に支えられながら続けてきたという名物レストランや商店も街の閉鎖で家賃が払いきれず、店を閉めるというオーナーも大勢います。

しかしプロフェッショナルなミレニアルズにとっても、リモートワークという新しい働き方が推進されるようになり、シティーライフを考えなおす機会となったようです。

英Daily Mail(※3)( https://www.dailymail.co.uk/news/article-8345919/Young-people-joining-rich-leaving-NYC-cheaper-dense-cities-coronavirus.html )のインタビューに対して、広告テクノロジーの仕事をするマルガリータ・リヤドワさんは、「とっても小さな部屋を借りているが、陽もあたらない部屋で一日過ごすのは不健全、食品の買い出しも公共交通機関を使わなきゃ行けなし…」

「ニューヨーカー同士の交流で刺激し合えることが醍醐味だったが、それが制限され、夏に再開したとしてもまた秋に第2波も予想されています。高い家賃にしばられているわけにはいかない、と故郷でリモートワークをし、いずれはニューヨークではなくもっと家賃が安く人混みの少ない街に引っ越す予定」と話しています。

また、デート/交際術コーチをするパット・ステッドマンさんは、「自分と妻の仕事はリモートワーク可能だから、今は、ニュージャージー州の郊外に引っ越してきた。いずれは物価の安い(妻の国)ポーランドに引っ越し、お金を貯める予定」だといいます。

彼は「ニューヨークにはもうエネルギーがなくなってしまった。人々が楽しんだり、夢を実現する場所ではなくなった」「もう、ニューヨークから卒業だ。いずれ立ち直るだろうけど、以前とは違う姿になる」とすっかり見切りをつけた様子です。

匿名の専門家グループBlindが行った調査によると、テクノロジーや金融関連の企業に務めるニューヨーカーたちの69%は、「このままずっとリモートワークができるのならニューヨークを去ることを考える」と答えているということです(※3)( https://www.dailymail.co.uk/news/article-8345919/Young-people-joining-rich-leaving-NYC-cheaper-dense-cities-coronavirus.html )。

TwitterやFacebookでは多くの社員にリモートワークを永久的に定着させていく方向でいることを発表しています。このような傾向を考慮すると、ますますニューヨークの人口流出は増加しそうです。

■楽観視する声もあるけれど…

ファイナンスタイムズ(※1)( https://www.ft.com/content/a313a40c-b046-4b11-b302-41d9f347cddb )では楽観的な意見もみられるといいます。

元ニューヨ―ク開発業者のラドウさんは、「もしかしたら空洞化で不動産の価値が下がれば、投資のチャンスとなるかもしれない」と言います。過熱した家賃がリセットされ手頃になれば次の世代の人達が集まり、彼/彼女らが空いたスペースを前世代が思い付かなかったような使い方をするかもしれない、と希望を語る人達もいるのだそうです。

やっかいなビジネス規制などの市の古い体制を合理化し、ライフサイエンス産業など新しい高給なビジネスを呼び寄せたい、と期待する市のリーダー達もいます。また市長は、今までにない「ブレイクポイント」の時だと強気な態度を示しているといいます。

しかし一方で、1970年代の犯罪の多いニューヨークに戻ってしまうのではないかと指摘する人もいます。筆者にとっても沢山の思い出のあるニューヨーク。今まで通りの魅力的なニューヨークに戻ってくれることを願います。

●参考

(※1)FINANCIAL TIMES ,”Can New YORK avoid a coronavirus exodus?”( https://www.ft.com/content/a313a40c-b046-4b11-b302-41d9f347cddb )
(※2)The New York Times,”The Richest Neighborhoods Emptied Out Most as Coronavirus Hit New York City”( https://www.nytimes.com/interactive/2020/05/15/upshot/who-left-new-york-coronavirus.html )
(※3)Daily Mail online,” Exodus from NYC: The young join the rich in ditching the Big Apple as the coronavirus economic downturn drives professionals out and companies accept staff permanently working from home”( https://www.dailymail.co.uk/news/article-8345919/Young-people-joining-rich-leaving-NYC-cheaper-dense-cities-coronavirus.html )

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