55歳の人の年金額はいくらになる?〜老後リスクに備えた資産形成〜


2019年に金融庁の報告書(※1)( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html )により、「老後2,000万円問題」が大きな話題となりました。公的年金以外に2,000万円が不足するという試算ですが、そもそも年金はいくらもらえるのでしょうか。

55歳の人の予想年金額や、老後に向けたリスクマネジメントについて考えていきましょう。

【参照】
(※1)「金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について」( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html )金融庁

■年金額は日本の経済成長により変動する

年金額は、日本経済の状況により変動があります。国民年金の場合、満額納付者の場合で、

2019年度:月額6万5,008円
2020年度:月額6万5,141円

このように1年間だけでも0.2%の変動があることが分かります。

■現在の厚生年金加入世帯の「モデル年金額」例

サラリーマンなどの厚生年金に加入している世帯の受給額については、厚生労働省から「モデル年金額」として夫婦二人世帯の老齢年金が例示されています。

夫:厚生年金に加入。男子の平均的な賃金で40年間就業(厚生年金・国民年金)
妻:40年間専業主婦(国民年金)

このような世帯(夫婦二人分)の受給額は、

2019年度:22万266円
2020年度:22万724円

となり、同様に0.2%の変動があります。また、この厚生年金受給例はモデル世帯のケースですが、自営業など国民年金のみの世帯(夫婦二人分で月額約13万円の受給)と比較すると大きな開きがあることが分かります。

■55歳のサラリーマンが将来もらえる年金額は?

では、1964年度生まれのサラリーマン世帯が将来もらえる年金額はどのくらいになるのでしょうか。厚生労働省の「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html )から将来の年金額を見てみましょう。

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1964年度生まれ(55歳)の将来のモデル年金額(厚生労働省の資料をもとに編集部作成)

(数値については、各時点の名目額を物価上昇率で2019年度時点に割り戻した実質額を記載。)

経済成長率0.0%のように経済が停滞した場合は、20万円を切る時期もある見込みです。そして、物価変動の影響も受けるため、0.9%のように経済が上向きであっても、年金額が下がる時期もあることが分かります。

ただし、この年金額はモデル世帯(満額納付者)のケースであり、厚生年金への加入期間や給与の違い、国民年金の未納期間があるケースなど、個人により異なります。自身の年金見込み額については、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」などで確認するようにしましょう。

【参照】
「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html )厚生労働省
「令和2年4月分からの年金額等について」( https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200401.html )日本年金機構

■50〜59歳の資産はどのくらい?

老後のことを考える際に、総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)−2019年(令和元年)平均結果−(二人以上の世帯)」( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html )から世の中の50代の資産について見ていきましょう。

●《50〜59歳》の貯蓄・負債の平均額

貯蓄現在高
平均:1,704万円

  • 通貨性預貯金:443万円
  • 定期性預貯金:573万円
  • 生命保険など:422万円
  • 有価証券:179万円
  • 金融機関外:87万円

負債現在高
平均:652万円

  • 負債保有世帯の割合:55.3%

年間収入
平均:852万円

貯蓄から負債を差し引くと、純貯蓄額は1,052万円となります。定年退職金に期待が集まりますが、退職給付額(※2)( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf )は、低下傾向にあります。ピークだった1997年当時(大卒・大学院卒で3,000万円超)と比較すると、平均で1,700万円〜2,000万円程度。約3〜4割も減少しているのです。

【参照】
「家計調査報告(貯蓄・負債編)−2019年(令和元年)平均結果−(二人以上の世帯)」( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html )総務省統計局
(※2)『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf )金融庁(P.13、16)

■50代の資産形成 人生のリスクに備える方法とは

老後に向けてしっかりと貯蓄できるのでしょうか。日本の平均寿命(男性約81歳、女性約87歳)は伸びていますが、収入を得られる「現役」の時間は限られています。とくに「健康寿命」は、男性で約72歳、女性で約75歳といわれています。

日常生活に何らかの制限が加わると、収入は減少し、改築や介護費用など特別な支出が必要となることもあるでしょう。長い人生に備えるには、健康面も含めた準備や計画が重要だといえます。

●[1]50代の今からできる老後資産の計画

金融庁の「老後2,000万円問題」によると、高齢の夫婦無職世帯の平均的な毎月の赤字額は約5万円と試算されました。老後の人生が20年間と仮定すると、必要となる金額は約1,300万円、30年間では約2,000万円にのぼります。

公的年金と現在の貯蓄を勘案するために、まずは年金額の確認をしてみましょう。日本年金機構の「ねんきんネット」( https://www.nenkin.go.jp/n_net/ )であれば、これまでの加入記録や年金の見込額を詳細に確認できます。

そのうえで老後のプランを立ててみましょう。また、退職金を大切に活かすためにも、住宅ローンや教育ローンなどは、できるだけ退職前に完済に近づけておきましょう。

●[2]非課税制度の活用で資産形成

老後の生活に備えて投資を検討することもあるでしょう。ただし、大切な資産を、リスクを受け入れながら積極的に投資していくのは重すぎる面もあります。50代からの資産運用には限りがあることを念頭に置かなくてはなりません。

そこで例えば非課税制度を利用できる「iDeCo」「つみたてNISA」があります。資産形成のために国が整備した制度で、どちらも非課税枠が利用可能です。iDeCoは原則60歳まで利用できて、積立資金は全額所得控除となり、運用益も非課税。60歳まで引き出すことができないという良い制限があります。また、「つみたてNISA」であれば退職後も運用の継続が可能です。

●[3]再就職と老後の収支

資産運用と同時に考えていきたいのが定年後の収入面です。65歳で定年退職した場合、平均寿命まで15年以上あります。継続就労できれば、資産の寿命も延ばすことが可能となります。2016年のデータですが、65歳から69歳の男性の55%、女性の34%が就労しています(※3)( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf )。

就労は健康維持にもつながりますし、収入面を確保できることで、老後の生活をより豊かに計画できるようになるでしょう。

【参照】
(※3)『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf )金融庁(P.3、4、10、11)

■まとめにかえて

個人により退職金も年金額もそれぞれです。定年前に年金額の確認や家計の見直しなど、現状を把握しておきましょう。そのうえで老後のライフプラン、マネープランを検討し、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するなど、できるだけ具体的な準備を進めていくことをおすすめしたいと思います。

●【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

●【ご参考】年間収入とは

総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1〜6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額

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