シェアハウスの3つ目のメリット〜暮らしながら稼ぐ田中さんの生き方


「今の若者はお金を使わずに暮らすんですよ」

シェアハウスの管理人、そして住人でもある田中顕司郎(31)さんは、満面に笑みをたたえました。中学時代に決めた将来像は芸人。コメディスクールに1年間通い、修業を積んだというだけあって、尽きることのない話が軽快なテンポで続きます。

シェアハウス暮らしは2018年末から。家賃が安く、孤独感が軽減。この2つは、シェアハウス暮らしのメリットとして知られています。田中さんの場合は、むしろ3つ目のメリットに魅かれたようです。管理人になれば、仕事をしない時期にも収入が見込めるのです。

■初期投資ゼロで、月々7万円弱の副収入

田中さんは、JALの客室乗務員をしていた母親、国際結婚をした2人の親戚のなかで育ったせいか、幼いころから海外を身近に感じていたそうです。大学卒業後、芸人を目指しますが、まずは人のやらないことをやろうと考え、世界一周の旅に出ます。

その旅で、帰国後コンビを組むことになる相方と出会います。そして、シェアハウスを運営する株式会社リバ邸の現代表取締役である片倉廉さんと出会ったのも、この旅でした。その縁で、シェアハウスの管理人に誘われたのです。

芸人を断念し、イベント会社で働きながら世界中を旅していたときでした。旅をしている間は、無収入。おまけに貯金は刻々と減っていきます。「収入がない期間に少しでもお金が入ればいい」と引き受けたのです。

シェアハウス管理人の田中顕司郎さん(右)

通常、建物を入手し、改装するために初期投資が必要ですが、一切なし。改装が終わり、備品などもすべてがそろったシェアハウスだったのです。「住人を集めるだけなら」ということで承諾し、月々7万円弱の副収入を得ることになりました。

入居者数は、田中さんを含めて6人。1人3万8000円の家賃で計22万8000円。リバ邸に収める15万円、光熱費を払った残り7万円弱が田中さんの収入というわけです。これに新たな入居ごとに徴収する2万円が加算されます。

家賃のほかに毎月1000円を徴収しますが、大半が調味料代。余ることが多く、その分は貯金し、一定額に達したところで住人全員で焼肉を食べに出かけたりしています。

また、田中さんのポケットマネーで毎月10キロのお米を購入し、入居者にプレゼント。10キロまでなら食べ放題です。

■入居者募集はツイッターで

コロナ禍はシェアハウスにも及んでいます。4月以降、新規入居予定の2人がキャンセル。住人同士の距離が近いので孤独から解放される半面、三密のイメージがつきまとうため、新たな入居者も集めにくくなっているようです。

現在は、入居者4人なので赤字。ルームシェアとちがい、住人が欠けた分は管理人の負担になるのです。

元々、入居期間は2〜3カ月から半年〜10カ月ほどと短く、そのため住人集めには慣れていて、これまで困ることは一度もなく、コロナ騒動が収まるのを待つばかりです。

募集方法はツイッターのみなので、経費はかかりません。現代版口コミの効果は絶大のようです。

シェアハウス内の様子


「飛ぶ(家賃不払いで逃げる)人は、大体、最初にわかりますよ」

飛ぶ人の多くは、家出。不審を感じたときは、入居と同時に前家賃として賃料をもらっているそうです。それでも、不払いが出ることはあります。泣き寝入りかと問うと、「おもしろい経験したなって思って、笑って寝てます」と苦笑していました。

服と歯ブラシさえあれば、今すぐにでも入居可能。クーラー、コタツ、炊飯器、Wi-Fiなどが完備。ただし、すべて1つずつ。フィジー島のケレケレ(皆でシェアする)にならったもので、1つを皆と使うことで集団生活を身に付けてもらいたいという願いが込められているのです。

備品が壊れたときや、新たな購入しなければならなくなったときは、全国のリバ邸50件で融通しあっているので、そのための予備費を徴収した経験も、予定もないようです。

■ムダにお金を使わない、豊かな暮らし

田中さんには、プレ・シェアハウス暮らしともいうべき経験があります。芸人を目指してコンビを組んだ相方と同じ部屋に住み、アルバイトをしながらコメディスクールに通っていたときです。収入は月14万円でしたが、毎月7万円ずつ貯金できていたそうです。

その貯金で、これまで旅したのは40カ国ほどに及んでいます。そのなかには、7人でキャンピングカーを借り、アメリカ大陸を横断した26日間の旅も含まれています。航空券を入れて、1人40万円ほどで収めたそうです。

やりたいことをやれるのは、最高のぜいたく。今の若者は、ムダにお金を使わず暮らし、豊かに人生を過ごしているようです。

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