日本は「赤字」? それとも「黒字」? ありがちな誤解を解く


国は赤字で借金は巨額ですが、日本国は黒字で純資産も巨額なので、過度な懸念は不要だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

■「国の赤字」は中央政府の財政赤字のこと

「国は大赤字で巨額の借金を抱えている」と言われると、「日本国が外国から巨額の借金をしていて、借金が返せないと外交問題になる」といった心配をする人がいるかもしれませんが、幸いなことに、それは誤解です。

「国の赤字」というのは、「財務省が地方公共団体の財政収支と区別するために中央政府の財政収支について論じると、それは赤字である」という意味なのです。

日本国と海外との取引を記録した統計は国際収支統計で、その中で最も重要とされているのは経常収支です。その経常収支は大幅な黒字となっているのです。つまり、日本国は外国との関係では大幅な黒字なのです。

どういうことかというと、日本国の中の中央政府以外(以下、民間部門等と呼びます)が超大幅な黒字を稼いでいるということです。民間部門等は国内取引で中央政府に対して大幅な黒字であるのみならず、海外との取引でも大幅な黒字だ、ということです。

■経常収支は貿易収支等の合計

経常収支という統計は、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の合計です。

貿易収支は財の輸出から輸入を引いた値です。サービス収支はサービスの輸出(外国人観光客から受け取る料金等)からサービスの輸入(日本人が海外旅行で払う料金等)を差し引いた値です。第一次所得収支は外国からの利子配当収入から利子配当支払いを差し引いた値です。第二次所得収支は対途上国援助です。

貿易収支とサービス収支は性格が似ているので、貿易・サービス収支として取り扱われることもあります。日本人が外国人のために自動車や料理を作る労働をし、外国人が良い思いをして代金を支払うのが日本の財やサービスの輸出、輸入はその反対だからです。

日本の経常収支は、巨額の黒字を続けています。貿易収支もサービス収支も第二次所得収支も概ねゼロ近辺なのですが、第一次所得収支が巨額の黒字となっているからです。

■経常収支が黒字なら、日本国の対外資産が増える

経常収支は、日本国の家計簿と言って良いでしょう。家計簿が黒字ならば家計の財産が増えますが、経常収支が黒字ならば日本国の財産が増えるからです。財産が増えずに借金が減る場合もありますので、正確には「純資産」が増えるわけですが。

たとえば貿易収支が黒字だと、輸出企業が海外から輸出代金のドルを持ち帰ります。そのドルを銀行に売りに行くわけですが、それを買うのは主に日本人投資家です。日本の輸出企業からドルを買うためには日本円を持っている必要があるからです。

つまり、貿易黒字だと誰かがドルを買い、それを海外に投資するので、日本全体としては海外に持っている国債や株や工場などの財産が増える、というわけですね。

そうして過去に投資された財産が利子や配当等を生み、それが現在の経常収支黒字となり、その黒字分が再度株式等に投資されてさらに大きな経常収支黒字を将来もたらす、ということが起きているわけです。

■経常収支と家計簿が似ている理由(初心者向け解説)

経常収支が黒字ならば日本国の純資産が増えるという点が家計簿と似ているだけではなく、実は各項目も家計簿と似ているのです。

貿易とサービスの輸出は、日本人が外国人のために働いて外国人が良い思いをして対価を日本人に払うわけですが、これは家計簿で言えば会社のために働いて給料を受け取るのに似ていますね。

貿易とサービスの輸入は、外国人が日本人のために働いてくれて、その対価を支払うものですね。これは家計簿の消費に似ていますね。他人が作った財を買ったりサービスを受けたりして対価を支払うわけですから。

第一次所得収支は、利子配当の受け取りから支払いを差し引いたものですから、家計簿にもそのまま当てはまります。まあ、今の低金利では巨額の利子配当を受け取っている家計はあまりないでしょうが(笑)。

第二次所得収支は、赤い羽根共同募金等に似ていますね。以上を合計したものが家計簿の黒字赤字であって、経常収支の黒字赤字だ、というわけです。

ちなみに、経常収支の黒字は、儲けではありません。家計簿の黒字が儲けでないのと同じです。企業の決算の黒字赤字は利益と損失ですが、それとは異なるので注意が必要です。まして、賭けマージャンの勝ちとは違います。

経常収支や家計の黒字は、我慢の結晶です。頑張って働いて倹約した結果が黒字なのですから、生活水準は給料以下なのです。賭けマージャンで勝った人が給料以上の生活をエンジョイするのとはワケが違う、ということですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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