完全無農薬農業を太陽光発電と融合させた男の「思いと戦略」

− ストックヒ?シ?ネス連鎖経営とは? −


最初に一つストックビジネスを作り、そのストックで長期的な次のストックビジネスを作るという、ストックビジネスの連鎖経営をしている経営者がいます。それは、株式会社グリーンシステムコーポレーション( https://green-system.jp/ )の阿久津昌弘社長。

阿久津社長は、常に新しい事業を作り出しているアントレプレナーで、筆者が携わるストックビジネスアカデミー( https://otaketakahiro.com/academy )の会員でもあります。その阿久津社長に、太陽光発電事業と融合する新たな農業のカタチについて伺いました。

■「健康」という超長期的なテーマを事業に取り入れる

自分が感じた「世の中の不具合」を解決しようと思っても、そのテーマが大きすぎると採算が取れず断念せざるをえません。世の中への思いと会社経営の両立は別物なのです。

阿久津社長が気づいた「世の中の不具合」の解決に必要なのは、完全無農薬農業という誰もが採算で怖気づくような難しい分野です。

健康問題はこれからも確実に伸びるのはわかります。日本中がいつか気づいてくれるであろう未来の大きな需要も感じるかもしれませんが、今はまだ採算が見えず、経営者としては参入しにくい分野。阿久津社長がそこに向けた長期戦を始められたのは、太陽光発電というストックビジネスを持っているからです。

一度は農業への夢破れ、住宅の屋根につける太陽熱温水器の販売で稼ぐフロービジネスの時代がありました。稼ぎがフローだった時代は、短期的に利益が出ても農業を行う余裕はありません。しかし、太陽光発電事者になってからは状況が一変します。

太陽光発電によりストックビジネスのオーナーになるとその突破力は加速し、太陽光発電の業界でも屈指の開発力を持つ事業者として、大手でさえも注目する存在になりました。そこから安定的に上がる収益を原資にしながら、夢だった農業に打って出る準備が整ったのです。

■無農薬農業に向かったきっかけ

実は阿久津社長には闘病経験があります。その経験から、いかに「世の中の食べ物」が問題かを知り、この社会課題解決と事業化に長期戦で挑むことを決意。その戦いを支えるストックビジネスとの組み合わせがチャレンジを後押ししました。

それは、太陽光発電のコストである維持費を農作業と相殺できる仕組みを考え、単独ではできなかった完全無農薬農業をバランスさせたこと。さらには、完全無農薬の生産物の出口をつくるべく、完全無農薬のパンやお米などのブランド作りに注力しています。

誰もが問題だとうすうす気づきながらも、採算を考えるとできなかった社会課題解決に、「オーガニックスマートアグリ」でチャレンジするーー。以下、阿久津社長との対談です。

左:阿久津昌弘社長、右:大竹啓裕


大竹:阿久津社長がこういった新しい農業に向かうキッカケというか、原動力はどこにあるんですか?

阿久津:若いころですが、昼夜働いて寝不足で学校に行って勉強し、しかもプロボクシングをやるという生活をしていたら、しょっちゅう風邪を引くようになってしまいました。そして、40度の熱が下がらず肺炎になり、3週間くらい入院したことが何度かありました。そこで抗生物質を投与され、アトピー性皮膚炎になってしまったのです。

アトピーにステロイド剤をあまり使わないようにはしてきたんですが、どんどん強い薬になっていく。3年前から重症化して大変でした。

大竹:ステロイドの功罪についてはよく聞きますね。

阿久津:そうなんです。でも、このままではいけないとステロイド剤を使わない方針の治療に切り替え、食事も玄米と無農薬の野菜中心、加工食品は一切なし、乳酸菌を多く摂取するようにしたら、大変だったんですが2〜3カ月で劇的に改善しました。

大竹:それが無農薬農業に向かったきっかけですか?

阿久津:はい。小麦の自給率は10%くらいで、無農薬・無化学肥料・無除草剤となると0.3%くらいです。

学校給食や大手メーカーのパンからは基準以上の除草剤「グリホサート」が検出されており、しかも政府はその基準を上げようとしているみたいです。

大竹:そう聞くと怖くて何も食べられなくなりますね。

写真提供:グリーンシステムコーポレーション(以下、特記のないものは同じ)


阿久津:需要としては洋食化の流れがあるのでパン食の需要が伸びて、ご飯は減少していますし、無農薬米は世の中に既にあるので麦を中心にしていく予定です。

大竹:確かに完全無農薬の国産小麦はあまり聞いたことがありません。

阿久津:インターネットで検索しても、超小規模な個人農家のようなところは除いて、完全無農薬・無添加のパンは他にはありません。しかも小麦はお米に比べて手が掛からないという栽培上のメリットもあります。

大竹:農家は高齢化と人出不足ですから、そのメリットは大きいですね。

阿久津:米作りに必要な苗の栽培が不要で耕しながら種まきが可能ですし、田んぼではないので水の管理も必要ありません。当然刈り取りという作業はありますが、これはお米と変わりません。

お米は5月に田植えしてから雑草との闘いですが、麦は11月に種まきして6月に収穫ですから雑草対策が比較的楽です。細かい数字は割愛しますが同じ労力で、ざっくりお米よりも3倍の広さの畑で栽培が可能になる計算です。

大竹:無農薬での栽培は難しくありませんか?

阿久津:まだまだ勘でやっている農家が多いんですが、最近では科学的に土を分析することが可能になっていることもあって、ちゃんと検査して調整していけば大きな失敗はありません。

また、どの世界にも成功者はいるので、その人に素直に協力を仰いで教えてもらいます。

■太陽光発電と無農薬栽培をどう両立させているのか

大竹:麦の栽培は需要でも手間の面でもかなりメリットがあるわけですね。

阿久津:麦の収穫も他に比べて20%ほど効率がよくなっています。そこに太陽光発電を絡めることで、さらに収益性が上がります。

実は、太陽光発電は一見手間いらずに思えますが、あっという間に草が茂ってしまうので草刈りとメンテナンスが必ず必要になります。

大竹:メガソーラーの草刈り費用が年間1,000万円を超えるという話を聞いたことがあります。

阿久津:ブレーカーが落ちれば、それを上げに行く必要もあります。でも、畑ならば当然草刈りはしますし、ブレーカーを上げるのも農作業のついでにできる範囲です。

大竹:なるほど。

阿久津:具体的には、大手企業や投資家に「管理耕作費用」を出してもらうと農家に年額10万円を管理コストとして支払うことができます。農家はお米や麦の栽培で稼げる農業収入と合わせて、この耕作費用が入ることによって所得が倍になります。


阿久津:他にも、高校の恩師が推奨する農業の省力化も参考にしています。たとえば、輪作(りんさく)といって「大豆⇒麦⇒お米」という順序で栽培すると土の状態が良くなって土壌改良も肥料もいらないとか、田んぼにレンゲ草を植えた後で米を作ると肥料がいらないなど色々なノウハウがあります。

加えて「BLOF(Bio Logical Farming:ブロフ)農法」――日本語ですと生態系調和型農業と訳されるんですが、納豆菌や乳酸菌を自分たちで培養して土に混ぜるなど、色々な成功事例の“いいとこどり”で、お金をかけずに収穫率をあげる工夫をしています。

少し難しいかもしれませんが、マメ科の植物は空気中の窒素分を土に還元してくれるなんて話もあります。

結果的には、宇都宮での慣行栽培による小麦の平均収穫量10アール当たり300キロに対し、無農薬・無化学肥料・無除草剤のソーラーシェアリング農場で10アール当たり368キロ収穫しました。

■無農薬素材による無添加食品と経営者視点

大竹:すごいですね! 先行する成功者の協力によって収穫率を上げ、省力化によって手間が減るとはいえ、企業の経営者としては、なかなか難しい決断をしている――経営が成り立たない面もあるのではと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

阿久津:正しいことをしていれば失敗はないと考えています。まだまだ赤字のパン事業ですが、職人は「こんな仕事がしたかった」と喜んでいます。さらに今後はラーメン、ピザ、スパゲッティの展開も考えています。

大竹:営農型太陽光発電で、畑で作物を栽培しながら太陽光発電で収益を上げている人はいても、いわゆる「6次産業化」して、パンなどの食品に加工しての販売やレストランを展開することまでできるというのは、他にはないかなりの強みですね。

株式会社グリーンウィンドHPより( https://green-wind.jp/ )(グリーンシステムコーポレーション グループ企業)


阿久津:そこに加えて、田植えや種まきや収穫の体験をしながら家族の絆を高め、食べ物に関心を持ち自分の命を大切にする農業体験学習会、いわゆるグリーンツーリズムに力を入れていきたいと思っています。

大竹:未来型の観光農業のイメージが湧きます。いいですね!

阿久津:要するに、これも食育の一環なんですが「これが良い育て方、これが悪い育て方」というのを特に子どもたちに体験を通じて知ってもらいたい。

大竹:社員とその家族も一緒に交流できる会社イベントとしても最高ですね。

阿久津:ぜひ、うちの田んぼに飛んでくる白鳥も見に来てください。

大竹:完全無農薬無添加のパンにも惹かれますが、阿久津社長が経営者として考えつくした、新しい時代に合った農業にも興味がさらに深まりました。本日は、ありがとうございました。

対談者紹介
株式会社グリーンシステムコーポレーション( https://green-system.jp/ ) 阿久津昌弘 代表取締役
農業大学校卒業後、父親が始めた家業である養豚場に就職。その後、家業を兄弟に任せ「太陽熱温水器」販売大手企業で活躍し独立。個人宅向けの太陽光発電システムの販売に着目し業績を拡大。
「営農型太陽光発電」の仕組みを活用し、無農薬栽培食材を使った無添加食品の企画から生産、販売という6次産業化を推進。


※今回はストックビジネスアカデミー( https://otaketakahiro.com/academy )「実践企業インタビュー」から一部抜粋でお送りしました。

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