人脈作りには「優秀さ」より「好感度の高さ」が重要な理由


「有力な人脈がほしい」と考える人は少なくありません。そして人脈を構築する手段についていえば、

「相手を引きつけられる、輝く実績を持ちなさい」

といった主張が見られます。しかし、筆者は優れた人脈を作りたければ、優秀さより相手から好感を持ってもらう振る舞いこそが重要だと考えます。

今回は「人脈は実績で作る」という従来のあり方から、「人脈は共感で作る」への変化を考察したいと思います。

■「人脈」は足し算ではなく、引き算である

「人脈とは、お互いにビジネスメリットを享受できる利害関係を作る行為」と定義するなら、本来のあるべき人脈というのは「努力して作るもの」というより、「信用を勝ち取った結果、残るもの」というのが本質ではないでしょうか。

人脈を作ると考えると、積極的に人脈を開拓するイメージがつきまといます。せっせと、人の集まる場所にでかけて、お酒の力を借りて胸襟を開いて話をして名刺交換…。筆者はかつて人脈の作り方がわからず、異業種交流会にせっせと足を運んで、たくさんの名刺をばらまいてきました。

しかし、結果としては頼んでもいないのに、相手のメルマガに勝手に登録された挙げ句、営業メールがたくさん来るようになったり、「今度、当社のセミナーに参加してくれませんか?」という勧誘ばかりです。結局、今、連絡を取り合える人脈は1つもできませんでした。

しかし、人脈を残るものと定義すれば、このような徒労に終わる活動をするべきでないことは明らかです。ビジネスをした相手を丁重に対応し、相手に安心感を与えるようにホウレンソウを心がけ、相手の期待値を超える成果物を提供し続ければ、人脈を意識することをしなくても、ビジネスの関係は継続するものです。

筆者もお互いにメリットのあるビジネスを気持ちよくやり取りできるように心がけた相手とは、何年経過しても仕事をする人脈として残っています。

人脈は作るものではなく、残るものなのです。

■何を買うか?より誰から買うか?

時代は変わり、モノやサービスは溢れかえっています。

「世の中でこの人にしかできない仕事」となれば、相手の好感度など気にせずとにかくお願いせざるを得ないでしょう。しかし、同じ価値を提供してくれる相手を見つけるには困らない時代になりましたから、「何を提供してもらえるか?」で差別化をするのは困難になりました。

そうではなく、「誰に提供してもらうか?」へと変化してきたと思うのです。そう、同じ成果物を得られるなら、「好感が持てる相手」に頼みたいと思うものなのです。これは上述した人脈に通ずる部分があります。

そのことを裏打ちしてくれる記事があります。東洋経済オンラインの『「頭の良さより「好感度」で人生が決まる納得理由」』( https://toyokeizai.net/articles/-/399570 )によると、日本人ビジネスマンは「自分はいかにデキる人かPR」する傾向があるといいます。これは自分の力を誇示することで、相手を魅了できると考えていることの表れではないでしょうか。

しかし上述の通り、人が誰かについていきたいと思う時は、相手に惚れ惚れとするような実績の有無だけではないというのです。それよりも「相手に魅力を感じるか?」こそが重要なファクターです。

■経済は感情で動いている

同記事によると、昨今は従業員やエンドユーザーなど多くの利害関係者を力強くリードする、世界的トップ経営者の様相にも変化が見られるといいます。

米国のリーディングカンパニーのCEOといえば、かつてはトップダウンでカリスマ的な経営者が目立っていたといいます。確かにスティーブ・ジョブズ氏や、ジャック・ウェルチ氏などがあげられるでしょう。

その一方で、アップルのティム・クック氏、マイクロソフトのサチャ・ナデラ氏、グーグルのサンダー・ピチャイ氏といった共感方リーダーが台頭することで、米国ITテック企業をリードすると分析しています。そして新たなリーダーは「ビジネスは共感が重要」と主張しているというのです。

ビジネスは合理性がすべてではないことは、投資や商品購買行動にも現れています。株式投資の世界でも、「企業活動を応援したいから、この好きな企業の株を買いたい」という投資行動が見られ、商品の購買においても「企業理念に共感した会社の商品だから」という理由で購入する動きが見られます。

これは人がお金を使う時においても、共感が行動の源泉になっている事例といえます。「リターン>コスト」という純然たる合理性だけで行動するわけではないのです。

■「応援したい!」の気持ちで人は買う

山梨県南アルフ?ス市にあるさくらんほ?農園は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受け、一時は窮地に追い込まれていました。感染拡大の影響を受けたことで、観光バスの運行が休止し、さくらんぼ狩りができなくなってしまったというのです。

経営するのは90歳のおばあちゃん。孫のSNSを活用して、農園にかける想いや自分の置かれた窮地を発信した結果、商品発送が追いつかないほどに注文が殺到しました。もしも、この農園の発信を見て、「応援したい!助けたい!」という共感が生まれなければこのような購買にはつながらなかったのではないでしょうか。

また、筆者が運営している高級フルーツギフトショップ「肥後庵」( https://www.higoan.jp/ )でもかつて熊本地震発生時に似たような状況がありました。震災後、ほどなくして発送が追いつかないほどの注文があったのです。「故郷熊本のフルーツのおいしさを広げてくれる企業を応援したい!」というコメントは数え切れないほど頂きました。

相手から好感を持てるかどうかは、ビジネスの優秀さより重要なファクターなのです。

■「デキる人」より「愛される人」

職場の人間関係においても、「デキる人」より「愛される人」が重要であるといえるでしょう。上述の東洋経済オンラインの記事内では、2005年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』で公開された行動心理学の調査結果をもとに、

  1. 好感度は高いが、仕事はできない「愛される愚か者」
  2. 好感度は低いが、仕事はできる「できるが嫌な奴」

を比較しています。実は、好まれるのは「1」だということです。

あなたも、「仕事が抜群にできるけど、お説教をしがちな頼れる上司」より「仕事はそこそこだけど、大変さを理解して優しく接してくれる同僚」に仕事を相談した経験があるのではないでしょうか。人間は血の通った感情を持った動物であり、誰しも自己愛があります。たとえ、合理性や仕事の結果が求められる職場においても、自己愛が傷つけられる行動を回避したくなるのが人間心理と言えるでしょう。

相手がどんなに力がある人でも、こちらを見下す態度を取ったり、自慢やマウントを取る人にお願いしたいとは考えないものです。

SNSやブログ、動画メディアを使って、自分のロジックや正論ばかりを振りかざす人が見られますが、つけられたコメントの数が多いのに、フォローしている人は意外なほど少ないと感じることがありました。今回の話を踏まえて考えると、かつてと比べて求心力を持つのは「何をいうか」より「どういう言い方か」が重要という、共感社会へ変化してきたことの表れと考えると合点がいく気がします。

●参考資料

  • 岡本 純子『「頭の良さより「好感度」で人生が決まる納得理由」』東洋経済オンライン( https://toyokeizai.net/articles/-/399570 )
  • 添田 裕女『Withコロナ時代に再注目の「応援消費」、その新しい形と女性の“推しゴコロ”の作り方』MarkeZine(マーケジン)( https://markezine.jp/author/1280 )