Clubhouseはmixi的なものへの回帰か?中国へのデータ送信の実態も整理


招待制音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」にまつわるニュースが日本でも報道され、盛り上がりを見せています。「招待制」というところから、かつて日本で人気だったSNS「mixi(ミクシィ)」との類似性を指摘する意見も見られます。実際にClubhouseとmixiは似ているのでしょうか。Clubhouseとmixiの仕組みの比較を行い、Clubhouseの「中国へのデータ送信」についても概説します。

■Clubhouseのユーザー数推移

Clubhouseの開発・運営元は「Alpha Exploration Co.」という企業ですが、Clubhouseの公式ページ以外は企業のサイトと呼べるものが存在せず、「公式発表がない」という状況です。

今のところ、アプリマーケティングツールを提供するAppAnnieのレポートが最も信頼できる情報源となっています。グラフと説明文を要約すると下記の通りになります。

●<ユーザー数推移>

  • 2020年4月頃:米国で約5000ダウンロード(Techcrunchより)
  • 2020年12月6日:ダウンロード数の拡大が始まる
  • 2021年2月1日:全世界で350万ダウンロード
  • 2021年2月16日:全世界で810万ダウンロード(うち米国で260万ダウンロード)

上記からわかるのは、Clubhouseが急激にダウンロード数を伸ばしたのは昨年末〜今月にかけてということです。現状はiPhone(iOS)でのみ提供ということもあり、Androidにも対応しているアプリと比べてダウンロード数の増え方が緩やかになっています。

「2020年に世界で最もダウンロードされていたアプリ」のランキング(Apptopia調べ・iOS/Android合算)と比較すると、

  • TikTok:8億5000万ダウンロード
  • WhatsApp:6億ダウンロード
  • Facebook:5億4000万ダウンロード
  • Instagram:5億300万ダウンロード
  • Zoom:4億7700万ダウンロード

と「億単位」の規模となっており、Clubhouseの拡大はまだまだ限定的であることがわかります。

■mixi誕生から17年。mixiと似ている点・異なる点は何か?

続いて、かつて日本で人気を博したSNS「mixi」との比較してみましょう。

mixiは2004年に日本で誕生しています。当初は「招待制」を取っており、Clubhouseと同様のユーザー拡大方法でした。

しかし、2004年当時はモバイルと言えばいわゆる「ガラケー」全盛期であり、「スマートフォン」やそれに類するデバイスは一部の好事家のみが扱っていた商品です。したがって、mixiもPC(パソコン)で使う前提の作りでした。

また、mixiには「あしあと」機能があり、「誰が自分のページに来たのか」がすぐわかる作りになっています。この考え方はLINEの「既読」表示にも共通しているでしょう。

一方、Clubhouseはスマートフォンが世界的に浸透した2020年にリリースされており、最初からスマートフォン「のみ」で使う作りになっています。

さらに、徹底的に「その場」を重視しており、記録に残すことも拒否する構造です。訪問ログも確認できませんし、作成したルームで話した内容を参加者との書面での同意なく録音・記録することは規約で禁じられています。

規約にも、「禁止例」として下記のような記載があります。

2. record any portion of a conversation without the express written consent of all of the speakers involved
3. share information (on Clubhouse or elsewhere) that the speaker explicitly stated was to be treated as “off the record”

なお、一部メディア・SNSでは「書面の同意なく=without the express written consent」という記載を省いて「一律禁止」と書いていることがありますが、その解釈は妥当ではありません。可能な限り企業の公式資料をもとに分析することをお勧めします。

このように比較すると、clubhouseとmixiは「招待制であった(mixiは途中から招待制を事実上廃止しています)」点以外、共通性がないことがお分かりいただけるでしょう。

■「Cluhouseが中国にデータを送信している」件の実態について

最後に、「Clubhouse」が中国にデータを送信している件について、状況を整理していきます。

本件は、スタンフォード大学の付属機関である「Stanford Internet Observatory(スタンフォード・インターネット観測所/SIO)」が2/12に公開したレポート「Clubhouse in China: Is the data safe?」が発端です。

このレポートで、

  • 上海に拠点を置くリアルタイム・エンゲージメント・ソフトウェアのプロバイダーであるAgoraが、Clubhouseアプリにバックエンド・インフラを供給していることを確認
  • ユーザーの固有のClubhouse ID番号とチャットルームIDが平文(筆者注:暗号化せず、そのままの状態)で送信され、Agoraはユーザーの生の音声にアクセスできる可能性が高く、中国政府もアクセスできる可能性がある

の2点が公表されました。

このレポートに基づいた報道が行われた結果、Clubhouse側は「72時間以内」に対応する旨の声明を出していますが、その後の動向は不明です。

ユーザー入力のデータを利用・加工する第三者の(サードパーティー)システムを使用している場合、プライバシーポリシーおよび、アプリ内のクレジット表記で記載が必要になることがあるのですが、Clubhouseの場合、そのどちらの箇所にもAgoraについての言及がありませんでした。

更に、先述した「企業公式サイトが存在しない」点と併せて考えると、今後のサービス運営に懸念が増します。非上場とはいえ、注目が集まっている中必要な説明を行わない対応は誠実とは言えません。ユーザー側から見れば改善を求めるところでしょう。

●参考資料

  • Clubhouse 公式ページ( https://www.joinclubhouse.com/ )
  • Clubhouse 利用規約( https://www.notion.so/Terms-of-Service-cfbd1824d4704e1fa4a83f0312b8cf88 )
  • Stanford Internet Observatory Clubhouse in China: Is the data safe?( https://cyber.fsi.stanford.edu/io/news/clubhouse-china )

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