日系企業の経済活動へのリスク、海外テロ情勢における注意点


2020年は新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲い、各国で都市封鎖や外出制限、国際線フライトの削減などが実施され、人々の移動は大きく制限された。

それも影響してか、世界のテロ情勢はこれまでの年と比べると落ち着いていたと言えるかも知れない(2020年のテロ統計は今後複数の研究機関から発表されるので、確実とは言えない)。

だが、ワクチン接種が世界的に進み、それに伴い各国がコロナ禍から日常の生活を取り戻すことで、テロ組織の活動も再び活発化する恐れがある。それを踏まえ、今週は今後のテロ情勢の行方についていくつかポイントを紹介したい。

■日系企業にとって要注意のインド、インドネシア

まず、インドだ。幸い日系企業の進出が進むインドでは、近年大きなテロ事件は発生していない。

しかし、インドの情報機関などは去年もニューデリーやムンバイなどでイスラム過激派によるテロの恐れがあると断続的に警戒情報を発信し、未然にテロが防止された事件も多くある。おそらく、今年も同様のリスクが続くことから、注意が必要だ。

また、東南アジアでは、インドネシアのテロ情勢で1つ懸念すべきことがある。

最近、筆者を含むテロ対策専門家の間では、2000年代に入ってジャカルタやバリ島で欧米権益を標的としたテロを続けたジェマーイスラミア(JI)の動向に懸念の声が高まっている。

この10年、JIへの警戒はほぼなかったといえるが、最近国内でJIメンバーが逮捕されるケースが複数報告され、また、JIの創設者であるアブ・バカル・バシル受刑者が1月上旬に出所した。現在、JIの差し迫ったテロの脅威があるわけではないが、今後はJIの動向も注視したい。

中東では、メディアではほぼ報道されなくなったが、イラクやシリアで活動するISによるテロが続いている。

治安が改善していたバグダッドでは先月、約3年ぶりに大きな自爆テロがあった。32人が死亡、100人以上が負傷し、ISが犯行声明を出している。イラクでは今年6月に国民議会選挙が予定されており、治安の悪化が懸念される。

■天然ガス開発が進む地域でIS系のテロが増加するアフリカ

そしてアフリカでは、IS系やアルカイダ系のイスラム過激派によるテロ事件が続いているが、特にモザンビーク北部、そしてブルキナファソやマリ、ニジェールなどサヘル地域でテロ事件が増加しており、今後の行方が懸念される。

天然ガス開発で外国企業の注目が集まる(日系企業も参加する)モザンビーク北部ガーボ・デルガード州では、2017年以降、IS系の武装勢力によるテロ事件が増加している。

また、サヘル地域ではテロ組織の活動範囲が拡大しており、ガーナやトーゴ、コートジボアールやセネガルなどギニア湾諸国も同イスラム過激派の浸透を警戒している状況だ。

最後に、欧米であるが、1月6日に発生したワシントン連邦議事堂襲撃のように、今後は移民・難民などを標的にする極右勢力の動向に注意が必要だ。

近年、欧米では白人至上主義や反イスラム、反ユダヤなどを標榜する極右勢力(個人)によるテロ事件が断続的に発生している。新型コロナウイルスが収まり始めれば、ロックダウンなどの社会的制限は緩和されていくが、それに伴って極右勢力の動きがさらに活発化していく可能性もある。

■おわりに

今年2月のミャンマークーデターのように、クーデターやテロ、暴動などの政治的暴力は突然発生することが多い。依然として、テロがいつどこで発生しても不思議ではない。テロ情勢の動向を注視していくことが何よりも重要な危機管理である。

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