日本人が「税」について関心が低い理由は源泉徴収にあり!?

日本人の税についての関心度は高くない。それと同時に、国家としても経済政策の柱がない日本政府。原因を探るうえで重要なキーワードとなる「税」「政治」「財務官僚」などの観点から、日本経済の問題点を産経新聞特別記者の田村秀男氏が解き明かします。

※本記事は、田村秀男:著『「経済成長」とは何か -日本人の給料が25年上がらない理由-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■所得税・法人税と消費税の違い

▲経団連会館 出典:Ystudio / PIXTA

景気が悪くなると税収は減ります。一方、家計はというと、子どもたちを食べさせないといけないし、最低限は使わないといけないことがいくつもあります。したがって不況になっても、家計の支出は大きく変わりません。そのため消費税の税収は、それほど減りません。つまり、所得税や法人税は景気の良し悪しで乱高下がありますが、消費税はあまりない。

これが財務官僚としては“しめしめ”なのです。いちばん見通しが立ちますので。だから政治家に対しても、盛んに「消費税の税率を上げたら、確実に財政収支の悪化を防げる」「社会保障費になる」と甘い囁きをする。

さて、一方で消費税を上げる代わりに、所得税や法人税、ほかの税金を下げるという発想は財務省にはないのか、と思われるかもしれません。実際、アベノミクスで法人税減税をやりましたが、これは経団連と取引したのです。「消費税を上げることに賛成すれば、法人税を下げてやる」と。

じつは、そこにはもうひとつ約束がありました。「法人税率を下げるなら、企業は国内投資を増やす」はずだったのに、実際には国内投資はほとんど増えていません。こんな嘘つきはダメです。道義というものがあります。いみじくも「国内投資を前年比で10%増やす」と約束したのだから、それは守りなさいよと言いたい。

ある種の倫理観や「国民経済をよくしないといけない」という国家観は、財界にはないということでしょう。国民経済がいいからこそ、企業(その大小は問わず)の経営は成り立つわけです。だから、きちんと貢献しないといけないと思います。

■日本とアメリカの税意識の違い

例えば、アメリカ人と日本人の税意識の違いは大きい印象があります。アメリカ人は自分の払った税金がどう使われているかにすごく関心が強い。一方で日本人は一般的に弱い。

▲アメリカ人は税への意識が強い イメージ:Piotr Adamowicz / PIXTA

これには徴収制度の違いが大きく影響していると思います。アメリカでは、サラリーパーソンでも「タックス・リターン」といって、確定申告をやります。日本のような源泉徴収はないのです。だから税理士に相談して、きちんと税の申告書を書かないといけません。

つまり、アメリカ人は自分の税の納付額を正確に把握していて、経費がいくらで、還付金はこれだけあったと全部わかってるわけです。

当然、彼らはできるかぎり節税するでしょう。ただ、アメリカでは「脱税をやった」ことがはっきりすると、市民権を失うくらいのモラル違反になります。税金を取る側、国や州の政策に対して厳しいと同時に、税を不正に逃れる者にも厳しい……それがアメリカです。

一方、日本人の税の使われ方に対する意識は、希薄というか他人事になっている印象が強い。この主たる原因は源泉徴収があることでしょう。わたしもサラリーパーソンなので理解できます。給与明細に正確に記されているとはいえ、支給される金額は税金を差し引いたあとのものです。だから「税金を取られている」という実感があまりない。それゆえ、自分の払った税がどういうふうに使われているかということを追求しない。

だから、消費税が上がるときも「しょうがないんじゃない」「社会保障費、足りなくなるし」みたいな感じになってしまいます。これでは財務省の思うつぼです。

■「国家」のための財政政策を考えていない財務省

財務というのは資産の部と負債の部があり、このふたつはバランスします。即ち、資産のほうを増やそうと思えば、負債のほうも同時に増えるのです。

政府や企業、家計といった組織内の問題になりますが、負債を増やして資産を増やしても、その資産が全然利益を生まなかったら、とんでもないことになります。こうなると、家計も企業も、借金を恐れて負債を増やそうとしません。

これを前提に国家の経済を考えていくと、単一のセクター、つまり政府や企業、家計での資産と負債のバランスを考えても仕方なく、国家全体として考える必要があります。ここで政府も緊縮財政をやるということであれば、資産は絶対に減ります。厳しいときに借金を増やして、資産を増やせるセクターは政府しかありません。

政府が堂々と負債を増やして、資産をきちんと増やすことは大事なのですが、その資産がいつも赤字を生むというか、収益を生まないと、いつか破綻します。だから、政府はワイズ・スペンディング、要するに賢い支出をしないといけません。

政府のやる投資、つまり資産を増やすのは借金が前提です。これは何十年もかけて次の世代に向けてのさまざまな教育、それからインフラの整備も該当します。それと技術開発、とくに基礎研究です。これらはすぐに収益につながるものではありません。こういうことこそ政府がやる必要があります。

しかし残念ながら、これらのことをどんどん切ってきたのが緊縮財政です。経済学的に考えても、非常に理屈に合わない話です。

▲厳しいときに借金を増やして、資産を増やせるのは政府だけ イメージ:CORA / PIXTA

なぜ日本政府も財務省も、こんな考え方をするのかというと、日本にはまとまった国家としての経済政策のあり方、国家全体を考えた場合にどうすべきかという、その考え方がないからです。財務省は自省にとっての財政政策を考えていて、国家のための財政政策を考えているわけではないのです。国益よりも省益を追求している。

財務省では増税して成功すれば、必ず後世まで褒め称えられます。さらに財政赤字を減らして均衡化させると、財務官僚としては大きな功績です。だから、どうしても財務官僚はそれらの追求に走ってしまう。

よく言われることですが、結局、官僚は出世が第一です。出世するためには、やはり自分のいる官庁での評価が高まらないといけません。そういうなかで「減税すべきだ」「歳出を増やすべきだ」と主張する官僚が財務省にいたら、まず出世できません。

■増税すると経済が萎縮してしまう

現在の財務省は「国債は借金だ」ということについて、一般の人が「借金」という言葉に対して持つマインド、つまり「借金はよくない」という感覚をうまく利用しているとしか思えません。

デフレで民間需要が不足しているのに「借金はやめろ。貯蓄をしろ。無駄遣いするな」と。こんなことをやっていたら、経済は伸びない。デフレ不況が続くに決まっています。

資本主義経済というのは、先行投資、つまり将来に向けて投資することで活力が生まれるのですが、そのためには借金が不可欠であり、金融市場と金融機関が整備されているのです。

民間が動かない重要分野に、政府が民間であり余る資金を国債発行で吸い上げて投資するのは当然のことです。民間のみならず政府が借金に怯えていれば、国力が衰退する一方になります。

財務省とそれに追随する御用メディア、政治家は家計と国家を混同して、借金はダメだという論理を世論に刷り込み、経済を低迷させるのです。恐るべき経済への無知の仕業です。

▲増税すると経済が萎縮してしまう イメージ:Graphs / PIXTA

不況のとき税収は伸びません。減ります。減ったときは、政府が赤字国債を発行して、予算確保をせざるを得ません。これは景気が上向いてしまえば、一時的な話で終わるので問題ありません。ところが、不況が長引いて赤字国債の償還がなかなか進まないと、日本のように消費税を増税していくわけです。

国債償還のために増税すると何が起きるか? 経済が委縮します。それはなぜでしょう? 増税というのは、国民(企業を含むわけですが)から収入を政府が取り上げるということです。

収入を取り上げて、それを再投資するならいいのです。しかし、その多くを借金の返済、つまり国債償還に充てるとなると、国民の収入はどこかに飛んでしまっている、返ってこないわけです。そうなると需要が奪われるということになる。需要が少なくなるので、要するに経済が極端に悪くなります。

これは小学生にもわかる理屈です。でも、なぜか国債償還ばかりにこだわってるのが財務省です。非常におかしな話です。

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