スマホ料金戦争の勃発! 大手3社と争う楽天モバイルの狙い

菅前総理が主導した携帯料金の大幅値下げによって、2021年に全個人契約数の約2割が値下げを実現した。しかし、値下げプランをネットで申し込むことができたのは若者が中心で、中高年層にはまだ届いていないかもしれない。経営評論家の山田明氏に、現在の値下げ合戦の概要と問題点を教えてもらいました。

本記事は、山田明:著『スマホ乗り換えで毎年5万円貯金できる』より一部抜粋編集したものです。

■通信企業が激動の時代を迎えようとしている

現在、行われている携帯料金の値下げ合戦で、中心的な役割を果たしている携帯会社は楽天です。楽天は2020年4月にサービス開始したばかりで、日本の携帯市場での歴史が浅いにもかかわらず、携帯料金の値下げ競争は大手3社対楽天の様相を呈しています。

しかし楽天は、通信に関しては格安携帯会社の経営しか経験のない素人集団であり、多くの関係者が楽天の市場参入に不安を感じていました。

そして、この不安は的中し、楽天は総務省へ提出した計画で約束した19年10月のサービス開始を実現できず、20年4月になってようやくサービス開始に漕ぎつけました。この間、総務省からは何度も無線基地局建設等の工事を急ぐよう督促され、楽天の携帯事業に取り組む体制を充実させるよう指導も受けました。

▲総務省 出典:Mugimaki / PIXTA

また、19年10月に始めた試験サービスも通信障害を起こし、技術的な面でも利用者に不安を感じさせました。楽天が通信事業者として、初めて本格的に採用したクラウド型の通信システムは、世界の通信事業者のなかでも技術面での野心的な取り組みと言えます。

これが楽天の低料金に貢献しているのですが、通信品質が落ち着くまで時間を要してしまいました。ただし、このような現象はソフトバンク等が携帯市場に参入した当時にも見られ、携帯事業者にとって避けて通れない道ともいえます。

楽天も、なんとか苦しい時期を乗り越えて通信が安定し、無線基地局の建設計画も5年前倒しするなど、21年には大手3社と競争できる環境が整ってきました。

一方、大手3社の保有する設備は、旧来の技術で構築されてきた期間が長いため、すべて新しい技術と設備でスタートする楽天に比べて、コスト面で不利になることは否めません。

海外の既存大手通信企業数社が、通信システムのクラウド化による基地局インフラの軽量化に動いていることが報道されており、世界の通信企業が激動の時代を迎えようとしている可能性があります。

楽天が導入したクラウドシステムは、新時代の通信システムを日本で本格的に採用した世界初の事例と言われ、楽天はこのクラウド型の通信システムを世界の通信事業者へ輸出する計画を立てています。

しかし、携帯サービスが開始されてから30年近く経過し、大手3社がこの間に起きた、大規模災害も何度か経験しながら今日まで事業を継続してきたことが、ユーザに安心感を与えていることも事実です。長年使い続けてきたユーザにとって、3社のブランドが持つ意味は小さくないと思われます。

■日本郵政グループと提携をした楽天の狙い

このように現在の日本の携帯市場は、旧来のハード中心の技術をベースに構築されたネットワークを利用して割高なサービスを提供する大手3社に対し、世界でも初と言われるクラウド型の通信ネットワークを構築し、割安なサービスで楽天が挑むという構図です。

そして21年3月に、楽天は日本郵政グループとの資本・業務提携を発表しました。楽天を第4の携帯事業者として市場に招き入れたと言われる前首相の菅義偉氏は、携帯市場における競争促進への執念を持ち続けています。新たな競争ルールを定めた19年10月の電気通信事業法改正に続いて、楽天を後押しする一手を繰り出したと考えられます。

20年4月のサービス開始以来、楽天のサービスを申し込んだ主なユーザは、ネットに抵抗が少なく、料金にも敏感に反応する若い人たちでした。しかし、携帯ビジネスを本気で拡大するには、大手3社の携帯を黙々と使用している中高年のユーザ層、高齢者のユーザ層を取り込むことが求められます。

彼らは、若者ほどITに詳しくなく、フェース・ツー・フェースで説明する必要があります。そのため営業活動や、お客へのサービス提供のためにリアルなリソースが必要と考えたことが、楽天が提携に踏み切った一番の理由だと思われます。

会社設立以来の理念であったバーチャルな会社として成長していくイメージを修正し、リアル企業である日本郵政から1,500億円の出資を受け入れて、新たな道を歩み始めるという、楽天にとっては腹をくくった決断だったと思われます。

▲日本郵政グループと提携をした楽天の狙い イメージ:ryuukikou / PIXTA

全国に2万4千ある郵便局内のスペースに、楽天モバイルの申し込みカウンターを設置して、地域住民の申し込みに応じる体制を構築する準備を進めています。楽天はショップでの申し込みを受け付けますから、これは地方に住む高齢者にも朗報でしょう。

携帯事業に関する楽天と日本郵政の提携で、最も重要と思われる点は、これまで値下げ合戦の蚊帳の外に置かれてきた、大手3社の中高年のユーザ層(低利用でも高い携帯料金を払い続けてきた物言わぬ多数派の人たち)にとって、楽天携帯を申し込むための敷居・ハードルが一気に低くなることです。

最寄りの郵便局で、あるいは自宅を訪れた郵便局の担当者と話ができれば、自分の携帯の利用状態を聞いてもらえ、データ利用の少ない高齢者などにふさわしい料金プランを説明してもらうことも容易になります。それは当然、携帯料金の大幅削減につながることでしょう。

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