有名ゲームを真似たロゴTを作成したい…「著作権法違反」になるか?【弁護士が解説】
2023年03月02日 09時02分幻冬舎ゴールドオンライン

意外なところで著作権違反は発生します。もし有名キャラクター等にあやかり、一部をオマージュしたオリジナル商品を作成・販売した場合、罪に問われるものなのでしょうか。いわゆる著作権や商標権は、わかっているようで理解が行き届いていなかったりするものです。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、フォントの著作権について松尾裕介弁護士に解説していただきました。
著名商品のフォントでTシャツ作成…
相談者のIさんは、有名なゲームタイトルのフォントを使って、有名なゲームタイトルの一部をオマージュした別の名前のロゴTシャツの作成を考えています。
懸念しているのは、著作権法違反に問われるのかどうかです。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。
(1)フォントのコピーは著作権法違反に該当するのか。
(2)本件で他に法的に問題になりそうな点はあるか。
(3)作成したロゴTシャツの商標登録は可能か。
著作権侵害になる可能性は低い?
フォントのコピーは著作権法違反に該当するのか。
有名ゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったオマージュ作品を作りたいといったニーズは少なくないと思いますが、そもそもフォント(字体、書体)は著作権法で保護されるのでしょうか。
著作権法で保護される「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。
この点、書体の著作権性が争われた事件で、最高裁判所は、印刷用書体が著作物に該当するためには、①従来の書体と比較して顕著な独創性を備え、②美的にも優れた特徴を備えていなければならないと判示しています。
そのため、フォント(字体、書体)が、例えば、書画であったり、芸術作品・美術品として鑑賞対象となるといった程度にまでなると、フォント(字体、書体)それ自体に➀独創性と②美的特徴を備えているとして、著作権法で保護される「著作物」であると判断される余地があります。
そこまでいかない場合には、一般には、フォント(字体、書体)は「著作物」とは認められず、著作権侵害は成立しないと考えられます。
最高裁判所は、➀仮に緩い基準で印刷用書体を「著作物」と認めてしまうと、印刷用書体を用いた小説、論文などの印刷物の出版に著作権者の許可が必要になってしまい、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、文化の発展に寄与しようとする著作権法の目的に反することになり、また、②印刷用書体は、一般には、文字の有する情報伝達機能は発揮するため、必然的にその形態には一定の制約を受けるため、わずかな差異で著作物としての成立を認めてしまうと、印刷用書体の権利関係が複雑となり、混乱を招くことが予想されるといって、厳しい基準で書体の著作権性を判断する理由を説明しています。
そのため、有名なゲームタイトルで使用されているフォント(字体、書体)を使用して、その一部をオマージュした別の名前のロゴTシャツを制作したとしても、フォント(字体、書体)それ自体が特に顕著な➀独創性を備え、②美的特徴を有するといった場合を除いて、著作権侵害になる可能性は低いと考えられます。
本件で他に法的に問題になりそうな点はあるか。
著作権法違反のほかに、以下の法令違反の有無を検討する必要があります。

(1) 商標権侵害について
有名なゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったロゴや文字、その一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されていないか確認する必要があります。商標登録されている場合には、同一又は類似の商品について同一又は類似の商標を使用した場合には、商標法に違反するおそれがあります。
類似商標に該当するかは、外観、称呼、観念などにより出所混同のおそれがあるかを総合的に判断されますが、実際の状況にもよりますので何とも言い難いですが、フォント(字体、書体)が同じだけで全く別の名称になっているといった場合には、一般には類似商標と判断される可能性は低いと考えられます。
なお、商標権侵害に該当するためには、商標を「商標として使用」する必要があります。
商標とは、そもそも自他の商品やサービスを見分けられるようにし、その商品やサービスを誰が提供しているかという商品やサービスの出所を表すために使用されるものです(自他商品役務識別機能、出所表示機能)。
そのため、たとえ登録済みの商標であったとしても、商標として認められるような態様(Tシャツであれば、例えば、タグへの表示や胸へのワンポイント表示)としてフォント(字体、書体)を使用するのではなく、例えば、Tシャツの胸部の全体に使用するなどフォント(字体、書体)を一種のデザインとして意匠的・装飾的に使用した場合には、商標自体の周知性(広く知られているか)にもよりますが、商品やサービスの出所を表したものではなく「商標的使用」に当たらないとして、商標法違反にはならない可能性があります。
もっとも、「類似」するかしないか、「商標的使用」に該当するかの判断は微妙であり、紛争になるおそれが少なくありませんので、登録済みの商標である場合には、事前に商標権者の許諾を得るか、他人の登録済み商標と同一又は類似する商標の使用は控えたほうが無難です。
(2) 不正競争防止法違反について
有名なゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったロゴや文字、その一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されていない場合であっても、その表示が広く知られている表示(周知表示又は著名表示)である場合には、出所識別機能を有する態様で当該表示と同一又は類似の表示を使用した場合には、他人の知名度を利用して不当な利益を得ているとして、「周知表示混同惹起行為」又は「著名表示冒用行為」として不正競争防止法に違反するおそれがありますので注意が必要です。
作成したロゴTシャツの「商標登録」は可能か?
有名なゲームタイトルのフォントを使って有名なゲームタイトルの一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されておらず、登録済みの商標と類似の商標に該当しない場合には、商標登録をすることが可能です。
もっとも、未登録の商標であっても、「他人のよく知られている商標(周知商標)と同一又は類似の商標」、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」や「よく知られている商標(周知商標)と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標」については、拒絶理由に該当し、商標登録が認められませんので注意が必要です。
有名ゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったオマージュ作品のみならず、商品にロゴや文字を付して販売するといったケースは少なくないと思いますが、このように、商品へのロゴや文字の使用については、著作権法、商標法、不正競争防止法と知的財産権に関する複数の法律が関係し、法令違反の有無の判断も具体的な状況によって異なり容易ではありませんので、商品化の前に事前に知的財産権に精通した弁護士、弁理士にご相談されることをお勧めします。
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