「60歳前に自主定年退職」を実現した元教授が語る!「運用利回り10%」を目指せる投資法と「安心・安全な投資先」の選び方
2023年03月07日 05時00分幻冬舎ゴールドオンライン

多くの人が、60代以降の老後の生活について、様々な不安を抱えています。「円安」「インフレ」が顕著な今日ではなおさらです。本記事では、60歳を前に「自主定年退職」した元・大学教授で会計学博士の榊原正幸氏が、著書『60代を自由に生きるための誰も教えてくれなかった「お金と仕事」の話』(PHPビジネス新書)から、快適な老後を迎えるための「お金」と「仕事」への向き合い方について解説します。
「両取り」で運用利回り10%を目指す!
老後に目指す株式投資での運用利回りは、配当利回りで3%、売却益で7%(いずれも税引き後)の10%を目標とします。
そうすれば、老後の運用資金総額が5,000万円なら年額500万円、1億円なら年額1,000万円の運用益が見込めますので、十分な老後の安心が得られるからです。
この投資法の特徴は、配当の受け取りという「インカムゲイン」と、売却益という「キャピタルゲイン」を両方狙うことにあります。配当を受け取りながら、株価がある程度上昇して目標の株価に達したら売却して「キャピタルゲイン」も得ることによって、投資資金を育てていきます。
本章で解説する投資法は、老後に必要な資産(できれば1億円以上のまとまった資産)を形成するのにも役立ちますし、1億円以上といった、まとまった資産を創り上げたあともずっと続けていき、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」を年金代わりに受け取っていくための投資法でもあります。
原則として「手取りで3%かそれ以上」の配当利回りを狙うことを前提とします。そのため、市場の低迷などによって株価が長期的に低迷した場合でも、「手取りで3%かそれ以上」の運用利回りを得ることができますので、じっくりと腰を落ち着けて投資することができます。
もちろん、「手取りで3%かそれ以上」の運用利回りが未来永劫続く保証はありません。
リーマンショックやコロナショックのような大きな経済的なマイナス要因が勃発した際には、配当額が減額されることが実際に起こりますが、その際には、安値で買い増して株数を増やし、平均単価を下げることによって対応します。
安値で買い増しすることができるようにするためにも、3~5銘柄くらいに「分散して投資する」ことは基本です。
3~5銘柄くらいに分散して投資しておくと、そのうちの一つの銘柄(銘柄A)が、買い増しするに値するほどの安値になっている時に、他の銘柄(銘柄B)が高値(売り値)になっていて、その銘柄Bを売った資金で銘柄Aを買い増しするということができる場合が多いのです。
もちろん、リーマンショックやコロナショックのような大きな経済的なマイナス要因が勃発した際には、持ち株がすべて安くなってしまうこともありますが、分散していないよりは分散しているほうが、ここで述べた「銘柄Bを売った資金で銘柄Aを買い増しする」ということの可能性が増大します。
安全・安心な投資先を選ぶための基準
さて、いよいよ具体的な投資手法に入っていきたいと思います。
本書で紹介する投資法、すなわち「Prof.サカキ式投資法」は、私が長年かけて企業の財務データを分析し、さらには自分の資金をつかって実践を繰り返してきたことによって磨き上げてきた投資法です。
「Prof.サカキ式投資法」をものすごく簡単に表現すると、「より安全・安心な投資先を選び、その会社の株価が安くなって、一定の基準を満たしたら購入。」「そのまま保有し続けて配当(インカムゲイン)を得る。」ただし、「保有株の株価が高くなって、一定の基準を満たしたら売却して売却益(キャピタルゲイン)を得る。」というものです。
ですので、銘柄選びに関しては、「安全・安心な投資先であること」が最優先されます。より具体的には、「財務的に安全かつ健全な企業に絞ること」です。
いくつかの基準によってこの財務安全性をスクリーニングし、基準に当てはまる企業のみを投資対象とするわけです。
その第一の基準は「東証プライム市場」に上場している銘柄であることです。2022年4月、長年親しまれてきた「東証一部」という名称がなくなり、「プライム市場」が誕生しました。
厳密には旧東証一部市場とプライム市場では上場するための条件が異なるのですが、今はプライム市場に上場している企業こそが、日本の株式市場において最も信頼できる企業群であるといえます。
ちなみに同じ時期に東証二部やマザーズといった区分も廃止され、「スタンダード市場」と「グロース市場」が誕生し、合わせて三つの市場に分類されました。ただ、このうち「スタンダード市場」と「グロース市場」に上場している企業群は、株価形成が理論的ではないことが多く、株価も乱高下しがちなので、ここでは投資対象から除外します。
次に、プライム市場上場企業の中から、投資対象を「国際優良企業」と「財務優良企業」に絞ります。これはどちらも私の造語です。
「国際優良企業」とは日本を代表する国際的な大企業で、さらにその中で一定の基準を満たした優良企業のことを指します。
「財務優良企業」は、財務内容が非常に健全な企業群であり、後に述べる一定の基準を満たした優良企業のことを指します。
世界的に活躍する「国際優良企業」
まずは「国際優良企業」の基準についてです。
【国際優良企業の選別基準】
・基準1|毎年10月31日において、東証のTOPIX Core30とTOPIX Large70に該当している大企業
・基準2|海外売上高比率が30%以上
・基準3|1日平均の売買代金が30億円以上
・基準4|BPSの値が500円以上、かつ、自己資本比率が30%以上
この四つの基準をすべて満たす企業が「国際優良企業」として投資の対象となります。
東証の「TOPIX Core30」「TOPIX Large70」とは、時価総額が大きく、流動性が特に高い30社と、それに続いて時価総額が大きく流動性が高い70社の計100社を東証が選んだ銘柄群です。
海外売上高比率は各企業の本決算(第4四半期決算)の決算短信や有価証券報告書に、「所在地別セグメント情報」の項目で載っていることが多いです。
「基準3」の「1日平均の売買代金が30億円以上」は、その企業が有名かどうかを見る基準として設けています。また、売買代金が少ないと売買そのものがしにくくなり、出来高が少ない銘柄の株価は、理論的な動きをしないことも多いので、投資対象から除外するのです。
「基準4」の「BPS」というのは「Book value Per Share」の略で、「1株当たりの純資産」を意味します。各企業の純資産の額を発行済株式総数で割ったものです。株価が純資産に対して割高か割安かを判断する基準です。
投資未経験者の方には見慣れない用語もあるかと思いますが、これらはすべて、企業のホームページや「Yahoo!ファイナンス」等の投資関係のサイトなどで確認することができます。
また、最近の証券会社のサイトでは、条件によって企業のスクリーニングができるところもあり、こうした機能も活用するといいでしょう。
抜群の安定度を誇る「財務優良企業」
続いて「財務優良企業」の基準です。
【財務優良企業の選別基準】
・基準1|プライム市場に上場している企業
・基準2|純資産額が500億円以上
・基準3|純資産額が1000億円以下の企業は、1日平均の売買代金が1億円以上
・基準4|BPSの値が1000円以上、かつ、自己資本比率が60%以上
「基準1」と「基準2」はまさに、財務の面から「安定性」を見たものです。
純資産額が1,000億円以下の企業は、その企業の株式の売買代金が少ないものもあるので、1日平均の売買代金での基準を設けています(基準3)。売買代金が少ないと売買そのものがしにくく、株価が理論的な動きをしないことが多くなるためです。
「基準4」にある「自己資本比率」とは、「自己資本(純資産)÷総資本(総資産)」で算出される値で、一般的には40%を超えていれば、財務的には健全であると考えられています。この比率は高ければ高いほど財務的な安全性が高いということで、ここでは60%という、かなり高めの基準を設けています。
これらも企業のホームページや「Yahoo!ファイナンス」等の投資関係のサイトなどで簡単に調べることができます。
これらの条件を満たす企業の株価をチェックし、ある一定の基準に達したら売買を行うというのが、「Prof.サカキ式投資法」の基本です。
榊原 正幸
元大学教授
会計学博士・税理士
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