アップル=時価総額3兆ドルに、皮肉の声「ドイツGDPと同じ額」専門家が「米国はバブル崩壊まっしぐら」と断言するワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

様々な要因によって世界的なインフレが起こり、将来の展望が正確に描けない昨今。自身の資産を守り、未来につなげていくためには、どのような行動を取ればいいのでしょうか。複眼経済塾の取締役・塾頭、エミン・ユルマズ氏が、著書『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)から、世界経済の展望と、日本経済にに潜むチャンスについて解説します。

インフレが止まりない米国が、デフレショックに見舞われる可能性も

金融市場にお金があふれ、リスクオン、リスクテイク志向が高いときには、ありとあらゆるリスク資産は換金性が高くなり、現金性が高まる。昨年(2021年)の暗号通貨(仮想通貨)などの暴騰はその典型だ。

けれども、リスクオフになると、このようなリスク資産は、たとえば恒大集団の社債のようなものについては買い手がつかず、現金性が一気に低くなってしまう。

いまの米国はインフレにはなっているが、アセット(資産)バブルが崩壊するとデフレショックに見舞われる。そのかげりが見え始めた。

エブリシング・バブルとITバブルの決定的な違いとは?

(※写真はイメージです/PIXTA)
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繰り返しになるが、私は最初、これは普通の強気相場だと考えていた。しかも、そのスタートがコロナショックのクラッシュの直後だと。そうなると、どこかで自然に調整が入るだろう。調整幅はおそらく5%ないし10%だろうと踏んでいた。しかしこれは間違っていた。

当初私は、「ITバブルのときには、どうでもいい役に立たない企業にただ『ドットコム』が付いているだけで株価が上がっていた。だが今回株価を上げているのはGAFA(Google、Apple、Meta〈Facebook〉、Amazon)で実態が伴っている」と、主張していた。しかし、その後ITバブル同様に中身のない、ファンダメンタルズが伴っていない企業の株価が暴騰し始めた。いわゆる「ミーム株」である。

そして実態はあるとはいえ、GAFAの時価総額はバカバカしいレベルに達した。たとえばアップルの時価総額が一時3兆ドルを超えた。これはドイツのGDPに近い数字であり、当然ながら一社だけで世界のパワーハウスの一つであるドイツの経済規模になるのはおかしな話である。

さらにITバブルのときはIT企業株が特に高騰したが、今回はありとあらゆる分野でバブルが起きている。IT、半導体、電気自動車、オルタナティブ・エネルギー、バイオテックをはじめ、すべてのセクターがバブルである。

加えてリーマン・ショック直前のように、米国では不動産までがバブルに陥っている。そしてリーマン・ショック時には存在しなかった仮想通貨やNFT(非代替性トークン)も、バブルの真っ最中だ。それらの時価総額が2兆ドル(約230兆円)を超えるなど、とんでもないことになった。

これらをひっくるめた、いまの米国における経済現象を、エブリシング・バブルと私は呼んでいる。

今回のエブリシング・バブルと2000年のITバブルとは、株の世界においても大きな違いが見て取れる。ITバブル時はほとんど実体のない企業の株が買われていたが、それでも実際に株が買われていた。

それでは今回は何が起きているのか? 株ではなくオプションが買われているのだ。

株投資におけるオプションとは?

日常的に使うクレジットカードの契約にもオプションは存在する

オプションとは「権利」のことである。オプションについてはよくわからないという人が多いと思うが、コールオプションとは、あるものを「決められた時期までに決められた価格で買う権利」で、プットオプションは逆にそれらを「売る権利」のことである。

私たちが一般生活で使っているものにもオプションは存在する。皆さんが気付いていないだけの話である。

たとえば、ローン契約にはたいていはオプションがついている。クレジットカードも同様で、通常はお金を借りると一定期間で一定の金利で返していく。ただし、借りた側にはそれを早期で終了させるオプションがついているわけである。早期返済も立派なオプション契約といえる。

昨今米国市場で流行するコールオプションとは?

それはさておき、今回の米国株バブルのなかで流行やっているのがコールオプション。これは現物株の10分の1などの小さな価格設定がなされていて、少額で買えるわけである。オプション契約をつくって販売するのは証券会社で、彼らはマーケットメーカーと呼ばれる。

オプション販売によりガタガタになる米国の証券会社

(※写真はイメージです/PIXTA)
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コールオプションを販売したときに証券会社で何が起きているのかというと、証券会社自身がリスキーなポジションを取っているのだ。

つまり、設定した銘柄の株価が上がったときには、当然ながらコールオプションを買った人がオプションの権利を行使したくなるわけで、そのときに証券会社がその株を持っていないと、市場で高いままの現物株を買わざるを得ず、そこで損を出してしまう。

つまり、コールオプションが買われるほどマーケットメーカーは、自分のポジションをヘッジするために実際の株を買わなければならない。

エミン・ユルマズ

複眼経済塾取締役・塾頭

著者画像撮影 Rikimaru Hotta

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