「その視点はなかった!」定年後の家計が「赤字転落」する原因および解決法と、「それでも足りないかも…」という場合の対処法【CFPが解説】

「その視点はなかった!」定年後の家計が「赤字転落」する原因および解決法と、「それでも足りないかも…」という場合の対処法【CFPが解説】

定年後の家計「赤字」の原因

(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が、老後のセカンドライフのプランや生活資金について、漠然とした不安を抱えています。その不安の内容を明らかにし、解決するためには何をすればよいのでしょうか。本記事では、元キャスターでCFP・ジャーナリストの和泉昭子氏が、著書『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』(KADOKAWA)から、定年後の家計が「赤字転落」しないために必要な考え方と対処法について解説します。

セカンドライフにはいろいろな不安が付き物です。そもそも老後のライフプランを考えたことがないという人も多いのではないでしょうか。そこで、理想の老後を過ごすためにはどんなことをすべきかについて、「先生」と「生徒」の2人とともに考えてみましょう。

日常生活費のスリム化だけではダメ!定年後の赤字の源は「特別費」にあった!

【CHECK!】

・「特別費」は3つに分けて考える

・自分がやりたいことを実現するために、「前厚費」を意識して優先的に確保する

先生:日常生活にかかるお金をダウンサイジングしようと思う人が多いと思いますが、「家計が赤字に転落する」ことになりかねない原因は、日常生活費以外の「出るお金」にあるんです。

生徒:赤字に転落! それは避けたい。何を確認するのですか?

先生:そのお金とは「特別費」です。

生徒:特別費とはどのようなものですか?

先生:食費や光熱費、通信費などの「基本生活費」のように、毎月必ずかかるお金ではありませんが、1年に1度や数年に1度などの単位で必要になるお金のことを「特別費」と呼びます。このお金は、内容によりますが1度に数万~数十万円、場合によっては数百万円などまとまったお金が必要になります。

[図表1]「特別費」は3つの種類に分けて考える

生徒:数万円~数百万円! それはしっかり見ていく必要ありますね。

先生:特別費は「定期特別費」「不定期特別費」「前厚費」の3つに分けて考えます。まずは、「定期特別費」から。たとえば、家や車を保有しているなら、「固定資産税」「自動車税」は1年に1度ほぼ決まった額がかかります。

定期特別費の目安としては、20~30万円程度、確保しておきたいところです。

生徒:固定資産税は金額が大きいから確保しておかないと。

先生:2つ目は、「不定期特別費」です。

生徒:不定期特別費? イメージできるような、できないような……。

先生:たとえば、家電の買い替えや、家の修繕費などは、数年に1度は発生すると想定して、きちんと把握しておくこと。給湯器の交換やトイレの修理など、家の修繕にかかる費用は、数十万円など高額な出費になる可能性も。婚葬祭費なども不定期特別費にあたります。

生徒:たしかに、突然給湯器が壊れてお湯が出なくなったという話も聞きますね。家電の故障も予測できないし。

「不定期特別費」と「前厚費」それぞれの用途

先生:また、家のリフォーム費や、自分の葬儀代や墓代など、死後整理に必要なお金も不定期特別費です。さらに、子どもがいる人は、子どもの結婚や出産のサポート費、子どもと一緒の旅行費用など、家族に関わるイベント費も対象になります。

生徒:長く住んでいる家だと、定年後リフォーム費が必要になりそうですね。

先生:そうですね。老後になると、築年数20年、30年となる人も多いと思いますので、キッチンや浴槽などをリフォームするなど大規模な修繕になると数百万円の費用がかかる可能性もあります。

そして、3つ目は「前厚費」。この費用をしっかり確保することが、充実したセカンドライフをおくるカギとなります。

「前厚費」とは、60歳から75歳までの間に、好きなことをするための費用です。

私は、母の介護をした経験から、「自由に動ける時間って意外と短い」ということを痛感しました。だから、老後を60歳以降の30年間と想定したときに、前半と後半に分けて、前半の「60歳から75歳までの間」に多めにお金を使い、自分のやりたいことをして充実させる。そのために、お金の配分についても「前を厚くする」という考え方です。

生徒:なんとなく、親や子どもと行く旅行は前厚費に入る感じがするのですが、これは入らないのですか?

先生:それでもいいのですが、自分以外の家族と行く旅行などに使う費用については、不定期特別費として費用を確保し、前厚費はあえて、「自分がしたいこと」にフォーカスして予算組みしたいのです。

生徒:前厚費は、「自分だけ」の楽しみということですね。

先生:そうです。ただ、夫婦の場合は、たとえば共通の趣味があって、2人で一緒に楽しむのであれば、夫婦の前厚費として考えることでもいいと思いますので、資金をどう分けておくのか2人でよく話し合ってください。

[図表2]家族のイベント費を分類するコツ

生徒:前厚費は自分軸で考えることが大切なんですね。

先生:はい。家族のための費用と、自分がやりたいことの費用を同じ枠で予算立てしてしまうと、気づいたら自分のためにかけるお金が足りなくなったということになりかねません。自分の希望を明確にして、どのくらいの費用が必要なのかを把握し、費用を確保するようにします。

もし費用の捻出が厳しくなりそうなら、子どもへの援助は、結婚式まではするけど孫の教育援助まではしないなどと決めて意思を伝えておくなど、前厚費を確保するように工夫しましょう。

生徒:意識して、前厚費を確保できるように工夫していくことで、自分のやりたいことが実現できるわけですね。

先生:そうです。定年後は、収入を大きく増やすことは望めませんので、特別費をしっかり計画しておかないと、老後破綻につながりかねません。

計画に無理が生じるようなら、見直すことも大切になります。

「前厚」ライフをしたいけどちょっと心配「医療・介護」の資金はどうやって準備する?

【CHECK!】

・医療と介護のお金は特別費とは別に「万一のお金」として準備

・高額な治療費が心配なら医療保険で準備する方法も

・介護施設への入居金は「iDeCo」を利用する方法もアリ

生徒:前厚費をしっかり確保できるように工夫することはわかったのですが、老後は、病気や介護のリスクが高まるから、どうしても心配になります。

先生:そうですね。病気や介護のリスクは年齢が上がるほど大きくなりますし、突然、大病や介護が必要になることもあり得ます。

生徒:どのように備えておけばよいのですか?

先生:まずは医療費から、説明しましょう。持病などで、既に病院にかかっている人も少なくないかもしれません。日常的にかかる医療費については、基本生活費に含めて考えておきます。

高齢になるに従い、日常的な医療費は増えますが、一方で体力が衰えると、遠くへ出かけることやたくさん食べることなどができなくなりますので、前厚費や特別費を減らして、その分医療費を多くとるといいでしょう。

生徒:年齢に合わせて、お金の配分を変えていけばいいのですね。でも、突然、がんなどになって、高額な治療費がかかる場合は、どう備えたらいいでしょうか?

[図表3]老後の医療・介護のリスク

先生:そのようなときのために、特別費などとは別枠で「万一のお金」を準備しておきます。退職金など貯蓄で準備できればよいですが、先進医療なども考慮して、終身型の医療保険やがん保険に加入しておくのも一法です。早い時期に大病になったら、不定期特別費や前厚費を利用することも考える必要があります。

生徒:介護費用はどうしたらいいでしょうか?

先生:介護リスクは70代後半くらいから高まるので、その分の費用を基本生活費に含めて考えておきましょう。ただ、介護施設に入居する場合は、数十万円から数百万円といった金額が必要になりますので、iDeCoなどで準備する方法もあります。

それでも、資金が不足してしまうという場合は、生命保険の解約返戻金の利用や、最終手段として持ち家を現金化するという方法もあります。

和泉 昭子

生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー/人財開発コンサルタント

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    21 生活保護を受給する条件は、以下の5つです。 ・収入が国の定める最低生活費を下回っていること ・持ち家や車などの資産を持っていないこと ・怪我や病気で働けなくて生活が困窮していること ・公的融資制度や公的扶助の対象外になること ・三親等以内の親族から支援を受けられないこと 9番さんがこれに該当するならもらえます。持ち家は居住用ならOKみたいですが、退職金が出ているならアウトでしょうね。

  • 22

    19,20は集りの素質がありますね。

  • 21

    17、18だけど。 確かに、決めつけているよね。 プロに聞いたら、違うと思うよ。

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