YouTubeで「パクリ」や「焼き直し」の動画がバズり続けるワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

YouTubeでバズらせるためには、時として「パクる」という考え方も重要です。なぜなら、YouTubeのアルゴリズムにおいては「パクられた側」も大きなメリットを受けられるからです。かつて楽天で「ラクマ」や「6時間タイムセール」等のヒット企画にかかわったYouTubeプロデューサーの大原昌人氏が著書『会社の売上を爆上げする YouTube集客の教科書』(自由国民社)より、そのしくみを解説します。

安心して今すぐパクれ! パクり、パクられるほど再生回数は伸びていく

海外のトレンドを取り入れるのはともかく、よそでバズった動画をマネするのは気が引ける――。

競合チャンネルと同じようなネタを配信したら「パクリだ」と糾弾されるのではないか――。

良識ある人ほど、そんな葛藤を感じられるかもしれません。

でも、心配は無用です。

YouTubeにはパクリを非難する文化はありません。なぜならYouTubeはそのシステム上、パクった側もパクられた側もWin-Winになるようにできているからです。

たとえば少し前に「ワンチップチャレンジ」という激辛スナックを食べる動画が大流行しました。韓国のとあるユーチューバーがやってバズったのを、みんながマネするようになったのです。

実際にYouTubeで「ワンチップチャレンジ」と検索すると、数えきれないほどのユーチューバーが同じことをやっています。

しかもネタだけではなくサムネの雰囲気もそっくりで、どれもこれも判で押したように「商品のパッケージ」「あまりの辛さに悶えている表情」「辛さを想起させる炎のイラスト」の3点セットで構成されています。

チャンネル登録者数740万人以上を誇る超人気ユーチューバーのフィッシャーズさんも、まさにこの3点セットのサムネイルでワンチップチャレンジに参戦しています。

でも、誰もそのことで彼らを責めたりはしていません。企画内容からサムネのデザインまで、誰がどう見てもパクリでしかないのに、おおむね好意的なコメントばかり寄せられています。

しかもワンチップチャレンジのパクリ動画は、再生回数も軒並み伸びています。もっともまわっている動画は驚異の約4,500万回再生、それより3か月ほど後にアップされたフィッシャーズさんの後発動画でも、325万回も見られています。

同じような動画があふれている中、どうして後発の動画でもそこそこの再生回数を稼げるかといえば、それがまさにYouTubeのアルゴリズムだからです。

視聴者がAさんの「ワンチップチャレンジ」を見ると、関連動画にはBさんのワンチップチャレンジ動画が表示されます。

それで興味を持った視聴者がBさんのワンチップチャレンジを見ると、今度はその関連動画にまたAさんの動画が表示される。

こうやって関連同士がリンクし合い、シーソー方式で再生回数が伸びていくのです。

[図表1]再生回数が伸びていく「シーソー方式」のイメージ

しかもYouTubeはサムネやタイトル内容をAIで読み取って、関連性が高いものを紐づけて表示するので、サムネも瓜二つにパクった方が、バズった動画の関連動画に載りやすくなります。

YouTubeはパクった側とパクられた側が再生回数を奪い合うのではなく、双方が1再生ずつもらえる協力ゲームといえます。

パクられればパクられるほど流入が増える――逆にいえば、誰かにパクってもらえないと伸びない仕組みになっているので、パクられたことに目くじらを立てる人はまずいません。むしろシーソー方式で再生回数を伸ばしていくために、どんどんパクってほしいと願っているはずです。

だからあなたも安心して流行に乗ってください。

「オリジナリティが大事だ」「パクリは恥ずべきことだ」という世間一般の常識はいったん忘れ、すでに需要のあるところに飛び込んでいくのが、YouTubeで再生回数を伸ばす一番の近道なのです。

バズった動画は「水戸黄門方式」で量産するのが正解

YouTubeを立ち上げた直後はまったく注目されていなかったチャンネルでも、「半年100本」を達成するころにはYouTubeからも認識されはじめ、ある日バーッと伸びる動画が必ず生まれます。

このとき多くの企業が致命的なミスを犯します。

ようやくヒットが出たことを喜びながらも「よし、次のテーマでもヒットを狙おう!」と、せっかくのヒットを1回で終わらせて、すぐに次へ移ってしまうのです。

これではヒットの意味がありません。

YouTubeでは、1回ヒットしたテーマは切り口を変えて何回でも焼き直すのが正解です。パクリ、パクられることで伸びていく現象は、自社チャンネル内の動画にも当てはまるからです。

YouTubeの公式解析ツールである「YouTubeアナリティクス」でも、再生回数が多い動画については「この動画の傾向をつかみ、同じような動画を発信すべし」という分析結果を読み取ることができます。

つまりYouTube側も、ヒットした動画はあの手この手で量産しましょうと公式に推奨しているわけです。

しっかりした企業ほど「同じような動画ばかり配信するのは視聴者に失礼ではないか」「視聴者も飽きてしまうだろう」「またか、と思われるのでは」などと案じ、焼き直し作戦には消極的になりがちですが、そんな心配は無用です。

視聴者は飽きたり憤慨するどころか、気に入ったテーマの動画は何本でも見たいと思うものなのです。

水戸黄門やサザエさんを思い出してください。

水戸黄門はテレビ番組史上屈指の長寿番組ですが、その内容は驚くほどワンパターンです。旅先で出会った庶民を助けるために黄門さま一行が代官らの悪事をあばき、最後に「この紋所が目に入らぬか~」と印籠を掲げると、悪人たちは平伏して一件落着――。

この定型フォーマットのドラマを、日本人は飽きることなく40年以上にわたってひたすら見続けたのです。

サザエさんの方はもう少し話にバリエーションがあるものの、それでも全体としては「いつものメンバーが、にぎやかで平和な日常を送るアニメ」という枠を逸脱することはありません。

視聴者の多くは、まったく目新しい番組よりも、安心して見られる定番の番組を好みます。

作る側は飽きるかもしれませんが、見る側は飽きません。一時的に飽きたとしても、数か月後にはまた見たくなります。だからYouTubeでもヒットしたネタは「水戸黄門方式」で量産して、定期的に何回でもやる。それが視聴者ニーズに応えるということなのです。

「水戸黄門方式」の具体例

私のチャンネルも、まさにこの「水戸黄門方式」で確固たる基盤を築きました。チャンネル開設から4か月後、初ヒットとなった「持続化給付金ネタ」を量産したことで、登録者数が一気にひとケタ増えたのです。

量産のコツは、少しだけ切り口を変えたり、続報として追加情報を加えたりすることです。私の給付金・助成金ネタでいえば、こんな感じです。

・持続化給付金の基本情報(申請期間・計算・ポイントなど)

・持続化給付金の申請方法(Web申請できない高齢者向け)

・持続化給付金の申請方法(フリーランス・個人事業主向け)

・持続化給付金の続報(申請手順と必要書類の最新情報)

・持続化給付金の続報(入金後にやってはいけないNG集)

・持続化給付金に審査で落ちる原因

・持続化給付金の不正受給の手口 etc.

[図表1]持続化給付金関係の動画サムネイル
[図表2]持続化給付金関係の動画サムネイル
[図表3]持続化給付金関係の動画サムネイル


このほか類似のテーマとして、一律10万円の特別定額給付金や、事業者向けの「家賃支援給付金」および「一時支援金」、学生のための「学生支援緊急給付金」という切り口でも動画をアップしました。給付金・助成金シリーズは計30本以上作成し、再生回数は多いもので37万回以上にのぼりました。

大原 昌人

株式会社ダニエルズアーク

代表取締役・YouTubeプロデューサー

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?