40代二児の母、短期間で「2度」の万引き…。初回は不起訴、「窃盗2度目」に下される処分は?病的な場合の対処等【弁護士が解説】
2023年04月11日 11時15分THE GOLD ONLINE

万引きで逮捕。誰しも魔が刺すことはあり、1度は許してもらえるかもしれません。しかし、2度目、それも短期間でとなると罰則は不可避?窃盗症という病的な場合もありますが、いずれにせよ予断は許さないでしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、短期での万引き再犯について、村山大基弁護士に解説していただきました。
短期間に2度万引きをした二児の母…起訴は不可避?
相談者のまいこさん(女性・仮名)は、 40代二児の母。8ヵ月前に2,000円分の食品の万引きで逮捕・起訴猶予、そして先月、同じく1,800円分の食品の万引きで、在宅から検察の呼び出しに行ってきました。いずれも買い取りと謝罪はしています。
まいこさんは、猛省し、改めて罪悪感を感じ、異常性を認識しました。専門医の受診や自助グループへの参加も予定しています。「もう2度とやるまい」と、再犯防止の対策などをご主人ともしっかり話し合い、そのことを真摯に検察官へお伝えしたそうです。
とはいえ、短期間での再犯。まいこさんは、取調べ後すぐに罰金となることを覚悟していました。しかし、検察官からは、「私からは、『今回だけは、なるべく寛大な処分を』との意見を伝えます。ただ、私だけの判断ではないので、どうなるかは断定できない。次は罰金や刑務所に行くことになるから、絶対だめです」というような説諭を受けました。
さらに、「結果が気になると思うから、20日後くらいに電話する」と伝えられ、その日は帰されました。
さすがに今回は起訴されてしまうのだろうか。気が気でない相談者のまいこさんは、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)この状況から不起訴もあり得そうか。
(2)再犯防止対策はいつまで続けるべきか。
2回目の処分と、再犯防止について
質問(1)不起訴の可能性について
今回、相談者さんは罪を認めています。刑事処分としては、①正式起訴、②略式起訴、③起訴猶予の3種類が考えられます。①正式起訴というのは、よくドラマであるような、公開の法廷で話を聞いて、弁護人や検察官が横にいて、という手続きです。
②略式起訴は、罪を認めている場合に、正式な裁判をせず、罰金で終わらせる簡易な手続です。
③起訴猶予というのは、①②にしようと思えばできるが、本人が罪を認めて反省しているなど、いろいろな事情を考慮して起訴しない、という内容です。前科がつかない(罰金だと罰金前科がつく)、という言い方もできます。
<考慮要素と処分見込み>
一般的に、「初めての場合なら比較的処分は軽め、何度もやるとだんだん処分が重くなっていく」といえます。今回の場合ですと、前回起訴猶予で終わったにも関わらず、再び犯行に及んでいます。この点を重視すれば、前回よりも重い処分、例えば略式起訴(罰金)となってもおかしくありません。
他方で、2回目なら絶対起訴猶予にならないというわけでもありません。被害者との示談の他、専門医の診察を受ける、窃盗に関する自助グループに参加する、家族が再犯防止のために協力してくれるなど、プラスになるような事情も踏まえ、起訴猶予となる可能性もあります。
例えば、①は「欲しいがお金を払いたくないから盗む」とか、「盗んだものを売って利益を得たい」みたいなケースです。
他方で、窃盗の主な目的が財産ではないのではないか、というケースもあります。
実際聞いたことがある工夫としては、「必ず買い物は家族が付き沿う」とか、「買い物は通販のみ、実店舗に行かない」などがあります(医師と個別に対応を相談しましょう)。
場合によっては、病的なものであるということで、入院して治療を図ることもあります。
質問(2)再発防止の対策について
・一般論として、窃盗の動機について
窃盗の動機として、単純な二分は難しいですが、①不正に財産的な得をしたいケースと、②盗むのがメインのようなケース、があると思います。
例えば、「欲しいがお金を払いたくないから盗む」とか、「盗んだものを売って利益を得たい」みたいなケースです。
他方で、財産的な得がメインで窃盗しているのではないのではないか、というケースもあります。例えば、何度も窃盗を繰り返し、次やったら刑務所に行くのが確実な中で、数百円くらいの品物を盗む(飲まず食わずというわけでもなく、財布には買えるだけのお金がある)といったケースです。もちろんケースによるでしょうが、病的なもの(病的窃盗、窃盗症)である可能性もあります。
・再犯防止について
再犯防止の対策をいつまで続けるか、というご質問については、窃盗の原因が病的なものであることを前提にすると、「医師と相談の上、必要な期間」が正しいと思います。
実際聞いたことがある工夫としては、「必ず買い物は家族が付き沿う」とか、「買い物は通販のみ、実店舗に行かない」などがあります(全員うまく行くかはわかりませんので、医師と相談しましょう)。いつまで、という点については、個別に専門家である医師の診察を受けて意見を聞いてみるのが一番だと思います。
病的な窃盗に関し、医師の関与の必要性
窃盗の中には、専門家である医師の助けが必要な場合があります。窃盗の原因が病的なもので、医師による治療が必要なケースです。
相談とは離れますが、病的な窃盗が疑われる場合について、個人的にこういった方法も考えられるのでは、という意見を述べます。要は、病的な窃盗というのは、一般的な刑事処罰の想定を外れる(罰を与えれば再犯が予防できる、ということには必ずしもならない)ので、専門家である医師の助けが必要では、ということです。
1.窃盗をしてしまったご本人に対して
万引きの原因が病的なもので、専門医の助けが必要かもしれませんので、もしかしたら、と思われたら早めに医師への受診をお勧めします。同種の悩みを抱えておられる方が集まる自助グループも、助けになるかもしれません。複数の方から聞いた、よく聞く状況としては、「盗んだ時のことははっきり覚えていない」「頭が真っ白」「ふと気づくと店員に腕をつかまれていた」などです。
弁護士が弁護する場合、「すでに行なってしまった犯罪について、示談や環境調整など、事後的にできることをする」ことになります(予防のための体勢づくり、例えば医師に繋ぐ、家族と今後の監督について相談する、などがメインになる)。以前罰金や懲役などの処罰を受けていても、再犯を繰り返される方も少なくありませんので、医師の協力の重要性を感じることはよくあります。
2.ご家族等に対して
ご本人が窃盗をされたことに対して、非常にショックだと思います。病的な原因がある可能性もありますので、場合によっては本人に受診を勧めるなど、専門家の助けを借りることが効果的かもしれません。
自分が同じ状況ではないため、想像しにくいとは思います。弁護士としては、刑務所に入ったこともあり、どれだけ窃盗が重大な結果になるかわかっているのに、再度そこまで高くないものを盗まれたりすると、病的では、というような印象を受けます。家族が参加する自助グループもありますので、調べてみるといいと思います。
一般的には、病気が原因で窃盗を行うというのは、想像しにくいかもしれません。個人的には、窃盗を繰り返されている方と接する中で、病的な原因があるのでは、医師の助けが必要なのでは、と思うことは少なくありません。専門医への受診を検討する他、家族が参加する自助グループもありますので、調べてみるといいと思います。
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