いちいち「国土交通大臣」「警察署長」の許可が必要!? ドローンのライブ配信で守るべき「法令」とは【弁護士が解説】
2023年04月15日 05時00分THE GOLD ONLINE

今やもっとも身近なメディアのひとつとなった「YouTube」。誰でも動画を撮影してアップロードできますが、ルールをよく理解せずに利用しているケースも多く見受けられます。本記事では、元ITエンジニアでITに詳しい弁護士・河瀬季氏が、著書『IT弁護士さん、YouTubeの法律と規約について教えてください』(祥伝社)から、ドローンを用いた撮影を規制する法令等について解説します。
YouTubeとドローンのライブ配信
◆ドローンを利用する時の注意点
Q.最近では、ドローンを使用する機会も増えてきました。ドローンについての法規制は全く知りません。YouTubeでドローンのライブ配信を行うことは適法なのでしょうか?
A.ドローンとは、遠隔操作または自動操縦を行うことができる無人航空機のことですが、ドローンを利用してライブ配信を行う場合、広い範囲の撮影が可能となるので、様々なものが写り込む可能性がありますよね。そのため、他者の肖像権やプライバシー権を侵害してしまう可能性が生じます。
また、ドローンを墜落させてしまった場合には、他者が所有する建物や車を損壊してしまったり、他者に怪我をさせてしまったりする可能性があります。
他者の人権や財産などを侵害してしまうと、まず、民法第709条(不法行為による損害賠償)、同第710条(財産以外の損害の賠償)により、不法行為として、損害賠償を請求される可能性が生じます。
ドローンを利用してライブ配信を行う場合には、他人の権利や他人の財産などを侵害しないよう、注意をする必要があります。
次に、航空法との関係です。
航空法とは、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定めた法律です。この航空法に「無人航空機」に関する定めがありますが、ドローンはこれに該当するので、航空法の適用を受けることになります。
この航空法では、「飛行の禁止空域」が規定されています。
【航空法第132条の85(飛行の禁止空域)】※骨子のみ抽出して記載
何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない(第1項参照)。
1. 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
2. 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空
ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。(第2項参照)
ドローン使用時に許可を得なければならないケース
航空法第132条の85第1項1号及び2号に該当する場所でドローンを使用しライブ配信を行う場合には、事前に国土交通大臣の許可を得る必要があります。
具体的には、空港周辺、ヘリポート周辺、地表又は水面から150m以上の高さの空域などでは、国土交通大臣の許可が必要です。
人口集中地区の上空での飛行についても、国土交通大臣の許可が必要になります。人口集中地区は、5年毎に実施される国勢調査の結果から設定されます。
人口集中地区については、以下のサイトで確認することが可能ですので、ドローンを使ってライブ配信を考えている場合には、事前に確認が必要です。
※ e-Stat政府統計の総合窓口「地図による小地域分析(j STAT MAP)」
また、航空法では、「飛行の方法」についても規定されており(航空法第132条の86)、夜間の飛行、目視外での飛行、第三者または物件から30m未満の距離での飛行、催しが行われている場所の上空での飛行、危険物の輸送のための飛行、物件の投下のための飛行を行う場合には、国土交通大臣の承認が必要とされています。
そのため、ドローンを使用してライブ配信を行う場合には、事前に承認を得ることが必要になります。
道路交通法も関係してきますよ。
ドローンを飛行させる場合、道路ではなく上空を飛行させるため、原則としては、道路交通法上で規定されている道路の使用許可等は必要ありません。
ただし、「道路において祭礼行事をし、又はロケーションをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」(道路交通法第77条1項4号)に該当する場合には、管轄する警察署長の道路使用許可を得る必要があるのです。
ドローンを用いてライブ配信を行う場合、人気がある配信者であれば、ファンが集まり、一般交通に著しい影響が生じることも考えられます。
そのため、ドローンを使用してライブ配信を行う場合には、事前に道路の使用許可を得る、又は、道路交通法第77条1項4号に該当しないようにライブ配信を行うことが必要になります。
航空法、道路交通法以外に気をつけたい法律
Q.撮影そのものではなく、付随して起き得る渋滞や人混みのために道路交通法が関係してくるのですね。これら以外にも、関係する法律があるのでしょうか?
A.「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(以下、「小型無人機等飛行禁止法」)があります。ドローンは、この小型無人機等飛行禁止法の第2条3項の定義に該当するのでその適用を受けることとなります。
この小型無人機等飛行禁止法第10条1項では、「何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない」と規定されています。
ここで、「対象施設」とは、例えば、以下の施設を言い、対象施設周辺地域とは、対象施設及びその周囲おおむね300mの周辺地域上空のことを言います。
・国会議事堂
・内閣総理大臣官邸並びに内閣総理大臣及び内閣官房長官の公邸
・特定の対象危機管理行政機関の庁舎
・最高裁判所の庁舎であって東京都千代田区隼町に所在するもの
・皇居及び御所であって東京都港区元赤坂2丁目に所在するもの
・特定の政党事務所として指定された施設
・特定の外国公館等として指定された施設
・特定の原子力事業所として指定された施設
例外的に以下の場合には、小型無人機等飛行禁止法の規定は適用されません。
・対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行
・土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行
・土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行
・国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
ただし、自衛隊の施設等の対象防衛関係施設及び対象空港の敷地又は区域の上空については、土地の所有者もしくは占有者が当該土地の上空において行う飛行や国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行であっても、対象施設の管理者の同意が必要となります。飛行が許されていない場所について定められているので、注意してください。
それから、電波法も関係しますよ。
ドローン使用に関わる「電波法」
ドローンを遠隔操作する場合、リモコンからドローン本体に電波を飛ばすこととなります。また、ドローンで撮影した映像などを送信するために、ドローン本体からも電波が出ています。そこで、電波法が関係してきます。
電波法では、電波を利用する際には、国内の技術基準に合致する無線設備を使用する必要があります。また、原則として、総務大臣の免許や登録を受けて、無線局を開設することが必要となります(微弱な無線局や一部の小電力無線局は除かれます)。
ドローンを用いてライブ配信を行う際には、使用するドローンがどのような周波数を発するドローンなのかを確認し、場合によっては、総務大臣の免許や登録を受ける必要があります。詳しい基準は、総務省のHPにありますよ。
※ 総務省:電波利用ホームページ周波数割当て
最後に条例について。
ドローンを使用してライブ配信を行う場合には、条例との関係にも留意する必要があります。
例えば、東京都千代田区では、区立公園22ヵ所、児童公園24ヵ所、広場13ヵ所が千代田区都市公園条例第6条により、千鳥ヶ淵ボート場が千代田区営千鳥ヶ淵ボート場条例施行規則第5条により、ドローン等の使用が禁止されています。
ドローンを使用して公園からライブ配信を行いたいと考える人もいると思いますが、公園でのドローンの使用は、このように条例で禁止されている場合もあるので、注意が必要です。条例もしっかりと確認することが重要となります。
ドローンに関する条例については、国土交通省が公表しているリストがありますから、ドローンを使用したライブ配信を考えている場合には参照するといいでしょう。
※ 国土交通省:無人航空機の飛行を制限する条例等
【まとめ】
・ドローンのライブ配信では、航空法、道路交通法を知っておく。
・その他、電波法やそれぞれの地域の条例も関係する。
河瀬季
モノリス法律事務所
代表弁護士
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