GAFAはリファラル採用で5割の人材を獲得!生産性が高い企業ほど導入する理由

(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍においても生産性が高い企業は、採用人数の3割近くをリファラル採用で確保していることがわかっています。日本においてはメルカリ、海外ではGAFAなどはリファラル採用で5割近くの人員を確保しています。鈴木貴史氏が著書『人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

社員が紹介したくなる仕組みづくり

▶リファラル採用の歴史

■リファラル採用とは

リファラル採用とは、「リファラル(紹介、推薦)×リクルーティング(採用)」の造語です。信頼できる友人・知人からの紹介を通じた採用手法が、リファラル採用の定義といえます。

2012年以降、米国においては最も人材獲得数が多い採用チャネルとなっています。企業の80%がリファラル採用の制度を導入して、実践しているのです。また、求職者の採用経路に関しても、リファラル採用が最も多いという状況になっています。

一方で、日本においても近年になって、ようやくメインの採用手法として盛り上がりを見せています。

日本の採用市場は、2008年のリーマンショック以降、有効求人倍率が右肩上がりで上昇を続けてきました。それに伴い、2010年代から採用トレンドも変化し、従来のような求人広告を出して「待つ」だけの採用手法から、企業から優秀な人材にアプローチするダイレクト・リクルーティングと呼ばれる「攻め」の採用へとシフトしてきました。

その後、Z世代の社会進出に伴いソーシャルでの情報収集が当たり前になり、より戦略的に優秀な人材を獲得する手法としてリファラル採用が着目されるようになったのです。

日本においては、2015年、我々MyRefer(現TalentX)がリファラル採用の概念を提唱しました。この時点では、多くの企業から「そもそもリファラルとは何か」「縁故採用と何が違うのか」といった声が聞かれました。

それが、現在では70%ほどの企業がリファラル採用を推進するに至っています。

とはいえ、一口に「リファラル採用」といっても、2015年当時と現在とでは、その定義が大きく変わってきていると感じます。そうしたリファラル採用の変遷を、私たちは「1.0」「2.0」「3.0」と定義して、分類しています。

■「動かす」ではなく、「動きたくなる」リファラル採用3.0

リファラル採用の「1.0」はいわゆる縁故採用です。縁故採用というのは、社長や経営幹部の近親者などが、そのつながりによって入社することを指します。古くは「コネ採用」とも呼ばれてきたものですが、戦略的に優秀な人材を獲得する手法ではありません。

「2.0」は「社員紹介採用」と呼ばれてきた、日本におけるオーソドックスなリファラル採用です。「1.0」と「2.0」の違いは、選考要素があるかどうかです。優秀な人材を獲得する戦略的な採用手法としてのリファラル採用が確立するのが、この「2.0」の段階です。

しかし、「2.0」の段階では社員をリクルーター化するために、インセンティブの制度を設けて、「なんとか動いてもらう」ということが主流となっていました。そのため、質のよい採用を行なっていくのにはどうしても限界がありました。

また、「リファラル採用はとにかくインセンティブを設定して動機付けすれば社員は動くだろう」という考え方が蔓延し、本質的な促進ができていない企業も多く散見されました。

そこで私たちが提唱しているのが、リファラル採用「3.0」です。社員をファン化して、彼らが紹介したくなる仕組みづくりから考えていくのが、「3.0」の特徴です。

会社にとっても紹介された友人・知人にとってもよい成果を生み、さらに持続可能性があるこの「3.0」の手法こそ、日本の多くの企業に重視してほしい採用手法です。

Z世代にはリアルな情報が求められるという話は前述のとおりです。

消費者は、スポンサーの広告費により強制的に動かされているタレントがおすすめる商品を信頼するでしょうか?

消費者がCMではなく、心から「この商品がいい!」という身近な人の言葉を重視するようになったのと同様に、リファラル採用においてもインセンティブで無理やり動かそうとするのではなく、「動きたくなる」仕組みを考えることが重要になったのです。これはまさに、採用においてもマーケティングの考え方が必要になった証左であり、「戦わない採用」が求められる背景といえます。

リファラル採用が会社のパフォーマンスを高める

▶なぜ「つながり」で採用がアップデートされるのか?

海外ではリファラル採用が語られる際に、「Talent know talent」という言葉が使われることがあります。直訳すると〝才能(優秀な人材)は才能(優秀な人材)を知っている〟ということです。実際に、プロフェッショナル人材の4割は自身の人脈やつながりによる口コミで情報収集しているというデータもあります。

企業がリファラル採用でつながりをうまく活用すると、競合と戦わない採用を実現し、企業競争力を高めることができます。一方で、社員のつながりで友人・知人にアプローチする手法であるリファラル採用にはデメリット(留意点)もあります。導入に際しては、メリットとデメリットをきちんと理解する必要があります。

■リファラル採用のメリット

リファラル採用のメリットは大きく4つあります。

1つ目は、転職潜在層へのアプローチが可能となり、市場に出てこない優秀な人材を獲得できることです。たまたま前職の同僚と飲みに行ったタイミングで仕事の相談を受け、リファラル採用につながったということはよくある事例でしょう。

2つ目は、ミスマッチを抑制し、入社後の定着率を高められることです。自社で働く従業員は、現場で求められる経験や人物像と友人・知人の経験や人物像の双方をよく理解したうえで紹介できるため、マッチングの精度が高くなります。

3つ目は、自社をおすすめしたいと思えるような「仕組みづくり」から考えていくことになり、そして従業員が自社のよさを友人・知人に語ることで、その経験を通じて組織のエンゲージメントが高まっていくことです。

4つ目は、いわずもがなですが、採用広告をマス向けに打つようなことがなくなるので、採用コストを削減できることです。

まとめると、リファラル採用は優秀な人材をミスマッチなく獲得でき、またそういった仲間集めを全社員で行っていくことでエンゲージメントが高まる、非常に費用対効果の高い採用手法だといえるのです。

■リファラル採用が組織にもたらす効果

リファラル採用の費用対効果や定着率の高さについては、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、従業員エンゲージメントが向上するという点については、初めて耳にする方も多いかもしれません。

そこで、紹介活動がもたらす組織効果について、もう少し詳しく説明したいと思います。

「組織市民行動」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

少し耳慣れない概念かもしれません。

組織市民行動とは、会社のためになる自発的な役割外行動を指します。例えば、「職場に落ちているゴミを拾う」「新入社員が困っていたらサポートしてあげる」などの本来の自分の役割を超えた組織行動のことです。

組織市民行動を行うほどエンゲージメントが向上し、さらには、組織市民行動を行う人が多いほど会社のパフォーマンスが高まることが、これまでの多くの研究から示されています。組織はあらかじめ定められた役割行動だけでは成立しません。役割外行動を主体的に行う人がいれば、会社が円滑に回るようになり、経営的な成果にもつながるのです。

紹介行動、すなわち、自社を友人・知人に宣伝するリファラル採用は、組織市民行動の1つであるといえます。

会社として紹介行動をとる従業員を増やすことは、組織市民行動をとる従業員を増やすことにもなり、会社のパフォーマンスを高めることにもつながっていきます。

リファラル採用に力を入れることは、採用の成果につながることはもちろん、会社の成長にも影響を与える非常に重要な組織戦略なのです。

コロナ禍の組織対策としても注目された

■リファラル採用のデメリット

「リファラル採用はメリットばかりでデメリットはないのか?」という点も気になってくるでしょう。デメリットは導入・実装の壁とも言い換えられますが、こちらも大きく4つ挙げられます。

1つ目は、人間関係と人材配置に配慮が必要なことです。従業員側からすると「大切な友人を紹介して、不合格となったら人間関係にヒビが入るのではないか」という懸念を抱きやすいです。こうしたことへのケアが求められます。

2つ目は、社員の理解と認知が重要なことです。「採用は人事がするもの」と捉えている社員はまだまだたくさんいます。全社員がリクルーターとなって友人に声掛けするということ自体への理解や認知が欠かせません。

3つ目は、情報が可視化しにくい点です。リファラル採用の制度設計をしても、3ヶ月程で形骸化してしまう企業も存在します。PDCAを回し、情報を可視化していく意識を持たなければ、せっかく導入しても廃れていってしまいます。

4つ目は、促進・活性化するまでに一定の工数が必要なことです。リファラル採用は新たな取り組みであり、社員の協力が不可欠であるため、一朝一夕で大きな効果が出せるものではないと理解しておきましょう。

■リモートワーク時代のつながりの必要性

リファラル採用のメリット・デメリットの解説をしましたが、実はコロナ禍においては、リファラル採用の新たなる価値も着目されています。

ご存じのとおり、2019年12月以降、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で全世界がパンデミックに見舞われました。

多くの企業がオフィス勤務を廃止し、リモートワークが広がりました。オフィスに出社しないことで社員間のコミュニケーション機会が減少。社内での雑談や社外との名刺交換のないままに、オンラインでの打ち合わせがメインになったことで、会社への帰属意識を感じる機会が減少しました。

ある調査データによると、リモートワークによって人間関係(信頼関係)の維持に対して危機感を覚えている社員は実に70%以上にのぼるといわれています。

帰属意識の低下は、エンゲージメントの低下にもつながります。エンゲージメントは企業の生産性にもつながる非常に重要な概念です。新たな働き方のなかで、いかに社員が会社への帰属意識を持つことができるかが大きな課題となったのです。

特に新入社員の帰属意識の醸成は多くの企業が頭を悩ませました。

選考活動もオンライン化したことで、求職者が入社前に受け取る情報量はこれまで以上に希薄化し、入社後に「こんな会社だと思わなかった」という状況に陥るリアリティショックにも拍車がかかるようになりました。

「コロナ転職」「コロナうつ」という言葉が流行するなど、「オンラインでの新入社員のオンボーディングの難しさ」は社会的な課題ともいえました。

加えて、コロナ禍による景気の悪化により、多くの企業で採用人数が縮小。従業員が減るなかで業績を維持しなければいけないとなれば、量から質への転換を余儀なくされます。

すなわち、社員の生産性向上がテーマとなったのです。新入社員のオンボーディングを果たし、エンゲージメントを向上させ、どうパフォーマンスにつなげていくか。それが企業にとって喫緊の問題となったのです。

つまりは、人と組織、人と人のつながりが希薄化したコロナ禍では、入社前の「入口段階でのエンゲージメント」と「入社後エンゲージメント」の双方が重要になってきているということです。

こうしたコロナ禍における組織対策としても、リファラル採用は注目されました。

候補者は現場社員のつながりでリアルな情報を取得して応募することができ、会社とのミスマッチを防ぐことができます。

企業側も、選考段階において、書類や面接だけではわからない候補者の本質的な能力を紹介者から耳にすることでミスマッチを防ぐことができます。

また、入社後は紹介した社員が友人を気にかけて自然とサポートをし、オンボーディングが促されます。そして、入社者もまたリファラル採用において紹介者の立場を経験することで、自社を語る立場となり、組織への愛着が増すのです。

以上のように、リファラル採用を軸にポジティブなサイクルが回るようになり、組織のエンゲージメントや生産性向上にもつながっていくと考えられるのです。

実際に、コロナ禍においても生産性が高い企業は、採用人数の3割近くをリファラル採用で確保していることがわかっています。日本においてはメルカリ、海外ではGAFAなどはリファラル採用で5割近くの人員を確保しています。

シリコンバレーでは、リファラル採用の比率が50%を下回ったら、採用担当者が解雇される企業すらあるといわれています。

これらの企業は従業員が仲間を連れてくるリファラル採用を通じて、文化形成やビジョン浸透を加速させ、エンゲージメントの高い強固な組織を築いているのです。

鈴木 貴史
株式会社TalentX(旧株式会社MyRefer) 代表取締役CEO

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