39歳妻「文京区以外に住む気ないから」...36歳・年収850万円のエリート夫「6畳1Kのアパートでカップ麺の日々」に涙【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日系の大手メーカーに勤める、年収850万円のAさん。29歳のときに結婚し、幸せな日々を送れると思ったのもつかの間、妻の「教育熱」が暴走し、とんでもない生活に……。妻のプランを叶えるには、いったいいくら必要なのでしょうか。FP Office株式会社の福井雅子FPが、実際にかかる教育費など具体的な数字をもとに、A一家の問題解決策を解説します。

教育熱心な妻を放置した結果、言い放たれた「衝撃のひと言」

日系の大手メーカーに勤めるAさん(36歳)。本社は大阪で、Aさん自身も関西の出身ですが、現在は東京本社で働いています。年収は850万円ほどで、29歳のとき、契約社員として同じ職場に勤務していた3歳年上の妻と、半ば押し切られる形で結婚しました。

その2年後、妻は待望の第1子の妊娠がわかるとそれを機に退職。本やSNSで、熱心に育児関連の情報収集をするようになりました。出産後も、「早期教育」や「知育」を謳うものを次々と試します。

真面目で堅実なAさんは、なかなかお金が溜まらないことに焦りを感じ、そんな妻の様子を気にしつつも「初めての子どもだし、家にいる妻がいろいろと調べてやってくれているから無知な自分が口を挟まないほうがいいだろう」と放置。

しかしその結果、A家の家計は大変な事態に陥ることになったのです……。

東京都文京区は、東京大学をはじめとする名門大学や難関私立中高が多く存在し、「わが子をエリートにしたい」と願う教育意識の高い家庭が多く集まるエリアです。実際、東京都23区「中学受験進学率」ランキング《2021年》をみても文京区は49.44%で1位となっています

※ 関連記事:『東京都23区「中学受験進学率」ランキング《2021年》』

また、このような区全体の教育意識の高さから、文京区は公立であってもレベルの高い教育を受けられると評判です。そのため、「わが子を文京区の公立小学校に通わせたい」として他の地域から移住を希望する家庭も多くみられます。

Aさんの妻も、賢明な情報収集の結果いつの間にか「文京区信者」になっており、事あるごとに「文京区に引っ越したい」と口にするようになりました。

自分1人の収入ですべての生活費と子どもの教育資金をまかなう以上、「文京区に住むのは難しい」と反対するAさんでしたが、妻は語気を強めてこう言い放ちました。

「文京区以外に住む気ないから」

Aさんの妻の「理想通り」に子育てすると、お金はいくらかかる?

子どもの教育のことだけを考えれば、そうした地域で愛するわが子に質の高い教育を受けさせたいと願う妻の気持ちもわからないわけではありません。

しかし、文京区は人気エリアのため当然家賃相場も高く、さらに周辺に住む高所得世帯のママ友とお付き合いをするとなると出費もばかになりません。また、将来的に中学受験をして難関私立中高を目指すことになれば、大学卒業までに多額の教育費がかかります。

仮に、妻の理想通りAさんの子どもが小学校まで公立、中学受験後は私立の中高に進み、大学は私大理系(自宅通学)に進むとすると、中学受験の塾代を入れて教育費の総額は約2,100万円という試算です。

いくら年収850万円のAさんでも、文京区の家賃と生活費だけで毎月の手取り収入を超えそうな金額ですから、そのうえ上記のような高額な教育費は現実的ではありません。

理想を追うほど教育費は膨らむ

教育費は、小学校から大学(大学院)までどのような学校を選ぶかで金額が大きく変わってきます。

小学校から高校までの平均教育費は、すべて公立の場合約475万円であるのに対し、すべて私立の場合は約1,670万円かかります※1。また、4年制大学に進学した場合国立の平均教育費は約537万円ですが、私大文系だと約697万円、私大理系だと約832万円です。子どもが親元を離れ、下宿するとなるとそれぞれさらに約300万円が上乗せされます※2

※1 文部科学省「平成30年子供の学習費調査」より

※2 日本政策金融公庫「令和2年度教育費負担の実態調査結果」、文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」「文部科学省令」、(独)日本学生支援機構「平成30年度学生生活調査結果」(昼間部)より

どのような進路を選ぶにしろ、教育費は子ども1人につき1,000万円~場合によっては2,000万円以上かかります。家計への影響は甚大です。

上記のように、理想を追求すればするほどどこまでも膨らんでしまいますから、1人の子にかけられる教育費の上限や、子どもになにを与えたいかという優先順位(偏差値の高い学校への進学、語学力、国際的な経験、自然と触れ合う体験など)を、夫婦で話し合って決めておくことが大切です。

A夫妻のように、夫婦間で教育に対する姿勢に温度差があったり、考え方が違っていたりする場合、進学先はどこにするか、習い事はどうするか、塾はどうするか、サマーキャンプや短期留学への参加はどうするか……など、事あるごとに揉めることになってしまいます。

また、なんとか教育費を工面できたとしても、自分たち夫婦の老後資金の準備ができていないというケースも少なくありません。計画性なく教育にお金をかけてしまっては、夫婦の老後の生活が成り立たなくなる危険性があります。子どもの大学卒業が定年間近になる場合や、子どもの人数が多い場合は特に注意が必要です。

6畳1Kでカップ麺をすする日々…A家の解決策は

Aさんはこの春から大阪の本社に栄転となりましたが、妻は同行する気はさらさらなく、単身赴任となりました。妻子の文京区への引越しを実現させるべく、大阪の6畳1Kのアパートでカップ麺をすすりながら節約に努めるAさん。孤独と将来の不安で思わず涙する日もあるそうです。

Aさんの場合、まずはライフプラン表を作成するなどして「家計の現実」を妻に理解してもらうといいでしょう。その後、それをもとに子どもの教育に関する優先順位や教育にかけることのできる上限金額などについて夫婦でしっかりと話し合うことが重要です。

さらに、妻が働くことや住むエリアを再考することも視野に入れ、自分たちの老後資金も含めて先を見通してプランを立てていくことが大切です。

妻にうまく家計の現状を理解してもらえない場合は、ファイナンシャルプランナーをはじめ専門家に第三者として入ってもらい、客観的に伝えてもらうと、理解が進み対話のきっかけが作れることもあります。

福井 雅子

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー

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