“手取り月10万円”70歳・ビル清掃の独居老人…安らぎゼロの老後生活に悲鳴「残ったのは住宅ローンだけ」【CFPが解説】
2023年05月23日 08時54分THE GOLD ONLINE

「老後はのんびり暮らしたい」かつてはそんなささやかな夢を抱いていた70歳の独居老人Aさん。 しかし、現実は厳しく……。本記事では、Aさんの事例とともに、CFPの伊藤貴徳氏が「老後の貧困」の現状と現役時代のうちに行っておくべき対策について解説します。
元自営業経営・いまは清掃アルバイト…働くシニアの「過酷な現実」
Aさんは今年で70歳。かつては自営業で飲食店を経営していましたが、体力的な問題もあり数年前に廃業。現在は、ビルの清掃員のアルバイトで年金と合わせた手取り月10万円で生計を立てています。結婚はしておらず、都心から少々離れた関東近郊のマンションに1人で暮らしており、20年以上前に購入したそのマンションは住宅ローン完済まであと数年残っています。
筆者のFP事務所に相談に訪れたAさんは「70歳を超えたら、仕事から離れてゆっくり過ごすのが夢だった。身体もあちこち痛むし、いつまで仕事を続けられるかわからない」とこぼします。
なぜ、Aさんは働き続けなければならないのでしょうか。
高齢者の貧困層は増加傾向
厚生労働省の資料※によると、2018年(平成30)年の「貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)」は127万円。「相対的貧困率(貧困線に満たない世帯員の割合)」は15.4%となっています。つまり、所得が127万円以下の人を貧困層とした場合、国民のおよそ「6人に1人」が貧困層ということです。
※ 厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より
なかでも、高齢者の貧困層の比率は高く、「4〜5人に1人」が貧困であるといわれています。高齢化が進むにつれて、さらにこの比率は上昇していく見込みです。
国民年金だけでは生活は難しい…老後も「働くしかない」
Aさんは現在70歳のため年金を受給しています。年金はいくら受け取っているのでしょうか。
年金制度は現在、20〜60歳の国民や自営業の方が加入する「国民年金」と、会社員や公務員等とその配偶者が加入する「厚生年金」という“2階建て”の構造になっています。厚生年金に加入している方は1階部分(国民年金)と2階部分(厚生年金)両方の年金を受け取ることができますが、そうでない方は1階部分しか受け取ることができません。
たとえば、Aさんのように自営業の方の場合、国民年金保険料を満額納めたときの年金受給額※は 78万900円×改定率=79万5,000円となり、 月額に直すとひと月あたり6万6,250円です。
※ 令和5年度の場合
ちなみに、一般的な厚生年金加入者の年金受給額は月額14万6,000円ですから、受け取れる年金額には約2倍の差があります。
Aさんも満額の国民年金を受給していますが、7万円弱の年金だけでは生活できず、アルバイトを始める前は貯蓄を取り崩しながら暮らしていました。しかし、住宅ローンの返済や、近年の物価高の影響などによってこれまで蓄えた貯蓄のみでは生活が厳しくなり、「働く」という選択肢をとって支出を補うことにしたのです。
なお、ご自身の年金額がいくらになるかわからないという人は、1度毎年誕生月に郵送される「ねんきん定期便」を確認してみましょう。ねんきん定期便には、これまでの保険料納付額や、加入実績に応じた将来の年金受取見込み額が記載されています。
「月々の負担を抑えたい」…軽い気持ちで組んだ住宅ローンがアダに
Aさんがマンションを購入したのは20数年前。ちょうどバブル景気がひと段落し、不動産価格や住宅ローン金利が落ち着いたころでした。
「バブル期の高金利のときよりも金利が下がっているから、支払えるだろう」と、返済計画は特に立てず、毎月の支払いを安く抑えようと最長期間の住宅ローンを組みました。結果として毎月の返済額は下がったものの、その代わりに返済終了年齢が70歳代となってしまったのです。
当時のお話を聞くと、「ローンを組んだときは、年齢が進めば繰上げ返済をすればいいと思っていたが、気づいたらいまになっていた」「自営業のため収入にも波があり、生活費とのバランスが徐々に変わっていったことに薄々気づいてはいたが、どうすることもできず、こうなってしまった」「いまの自分に残っているのは住宅ローンだけ」とAさんはいいます。
住宅ローンは、長期にわたって返済が必要です。返済計画を立てずに借入限度額いっぱいに借りようとすると、将来的に返済が難しくなるケースもあります。借入限度額=返済できる額ではないということに留意しましょう。
また、返済計画を立てる際には、ローン完済までの収入の見通しを立て、十分な貯蓄を見込んだ上で行う必要があります。
年金受給までの期間にできるだけの準備を
一般的に「セカンドライフ」と呼ばれる定年退職以降は、現役時代よりも収入が下がります。 再雇用制度や年金受給によって収入を補うことはできますが、生活費などの支出と収入に差が生まれる場合、これまでの貯蓄を取り崩して生活するケースがほとんどです。
この収支のバランスを調整するには、「収入を上げる(増やす)」か「支出を下げる(減らす)」かを選ぶ必要があります。
収入を上げる(増やす)場合
収入を上げる(増やす)ためには、現役時代からつみたてNISAやiDeCo、貯蓄型保険などを使って老後を見据えた資産形成を行ったり、年金受給額を増やすために国民年金基金や付加年金に加入しておくといいでしょう。
「国民年金基金」とは、自営業・フリーランスなどの国民年金加入者が加入できる、国民年金に上乗せして加入できる公的な年金制度です。将来受け取りたい年金額に合わせて、自分で口数を選んで掛け金を払っていくことで、将来の年金額を増やすことができます。
支出を下げる(減らす)場合
支出を下げる(減らす)ためには、生活費の見直しが欠かせません。特に、収入が限定されるセカンドライフにおいては、「固定費をいくら払っているか」が重要です。住宅ローンはその最たる例で、返済期限が定年退職以降となる場合は、繰上げ返済を計画的に行ったり、定年退職以降に返済とならないローンの組み方をすることが大切です。
Aさんの場合は、住宅ローンの完済まであと数年ですから、完済後は固定費が大幅に減ります。そこまでは心身の折り合いをつけながらアルバイト勤務を続け、完済後は無理のない働き方にシフトすることができそうです。
まとめ
Aさんも筆者との相談のなかで「再び働き始めたことで、生きがいを見出している」「アルバイトを通じて仲間と出会えた」とこぼしていたように、筆者は「定年後に働く」という考え方自体は悪いことではないと考えています。
しかし、「働くことをセーブし、自分の時間を過ごしたい」と考えているにもかかわらず、働かざるを得ないという苦しい事態は避けたいところです。本来イメージしていた「理想の人生の歩み方」を実現できるよう、現役世代からの将来設計を大切にしていただきたいと思います。
<参考>
・厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」
・日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
・国民年金基金
・令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況:厚生労働省年金局P8表6
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス
代表
「なぜ、Aさんは働き続けなければならないのでしょうか。 」 って、若い時の努力不足、将来計画の甘さの結果では?自営業で飲食店を経営していたそうですが、その時に売り上げ、利益、将来の見通しなどを考えて、きちんと自分の将来を考えるべきだったと思いますね。自営業でなく、仮に会社員だたとしても、遡って義務教育時代、あるいは高校、大学時代に努力していれば、まだ老後の不安は解消できたはず。世の中、努力しなければ、それ相応の未来しかないのは、いつだって同じ。楽して安住の地は得られないのですよ。
>16 そりゃ会社員である主家計維持者が家庭を支える役割の配偶者の分の年金保険料をまとめて払ってるんだよ。 国民年金は自営業者か自由業者で定年がなく自分の意思と体力でいつまででも働けるから、それで補えって制度になってるだけ。 自分の無能力を棚に上げて身勝手な屁理屈を言うな。
何にでも「悲鳴」をあげるなよ。 自分の将来はすべて自分の過去の結果だよ、