「英語力ゼロ」でカナダ名門大学へ進学も…。家賃相場は「約12万円~20万円」、学費、入学準備など直面した“過酷な現実”【現地不動産投資会社CEOによるインタビュー】
2023年05月27日 11時15分THE GOLD ONLINE

世界大学ランキングでは常にTOP40をキープし、東京大学とほぼ同じ順位であるバンクーバーのブリティッシュコロンビア大学に留学した日本人に、カナダのKM Pacific Investments Inc. 代表取締役の枡田耕治氏がインタビュー。日本人の人気留学先であるカナダに留学するとはどういうことか、その「リアルな体験談」をお届けします。
カナダを選んだワケ
私は将来、北米の大学を卒業した後、現地に残る可能性も考えながら進路を決めたかったため、「移民政策の寛容さ」について重視していました。そのため、当時の進路選択には、以下の要素を考慮しました。
・カナダでは大学卒業後に3年間の就労ビザが取得可能
・アメリカの文系大学卒業生は就労ビザが1年間のみであり、就職や永住権取得は非常に難しい
その他、日本での就職も視野に入れ、大学の規模やネームバリューも考慮した結果、バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学(The University of British Columbia。以下、UBC)という大学に進学することにしました。
高校卒業後、直接UBCに入学できれば理想でしたが、私の英語力が不足していたため、まずはCommunity College(通称コミカレ)に進学することにしました。
コミカレは準学士号や専門職業コースを提供する大学で、四年制大学と比べて入学基準(英語力、成績、エッセイなど)が緩く、学費も安いです。そのため、最初はコミカレで留学生活をスタートしました。そこで英語の学習と1年次の講義を受けながら、2年生からUBCに編入しました。
学費・生活費について
〈学費〉
UBCの学費は約500万円(1年間)です。1クラス(3単位)の履修費用は約50万円であり、年間で10クラスを履修します。単位数によって学費が変動するため、単位を落とすと追加の学費が発生します。一般的には卒業には40クラス(120単位)の履修が必要です。
Community Collegeの学費はおよそ年間100万円です。UBCと同様のシステムを採用しています。
〈生活費/月(バンクーバー)〉
・生活費は一般的に500〜1000カナダドル(約5万1,288円〜10万2,576円)です。さらに家賃は1200カナダドル〜2000カナダドル(約12万3,091円〜20万5,153円)程度です。
・キッチンが備わっていない寮などでは、大学内のレストランで食事を摂る必要があり、生活費はかなり高額になります。
・節約をすれば、400〜500カナダドル(約4万1,031円〜5万1,288円)程度の生活費に加えて、家賃は900カナダドル(約9万2,318円)程度でやりくりすることが可能です。
コミカレは出願すれば基本的に合格。UBCは
コミカレの受験では、高校の成績証明書・TOEFLスコア・エッセイ・推薦書の提出が求められます。コミカレは出願すれば基本的に合格するので、提出書類に不備がなければ問題ありませんでした。推薦書は高校三年生の担任の先生と部活の顧問の先生にお願いをしました。
UBCの受験は、日本のAO入試をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。受験には以下の書類が必要でした。
・UBCでの1年次の必修科目をコミカレで履修したことを証明する書類
・コミカレでの成績証明書
・TOEFLスコア
・推薦書(3枚)
・エッセイ
・オンライン面接
編入出願までには、必要な単位をコミカレで履修する必要があります。これら必要単位を履修し、編入試験に合格すると、それらの単位は一年生で履修した講義として認められ、単位が移行されます。
各学部によって異なりますが、私が進学したビジネス学部では、経済学入門、数学、会計学入門、英語のライティングの単位が求められました。コミカレの入学基準はTOEFLスコア61であり、私はギリギリの基準値を超えて63を取得しました。文法については、大学受験の勉強をしていたため、ある程度の理解ができました。
心持ちを間違えると華やかな大学生活が一変…忍耐の4年間に
来た当初は不安も全くなく、念願のUBCに通うことができたことに喜び感じ、毎日を楽しんでいました。しかし、三年生の後半になると就職活動や周りの学生との学力の差に不安を感じるようになりました。自分が長年の目標としていた大学の最難関学部に「英語力ゼロ」から進学するという、貴重な経験を得ましたが、大学の授業ではなかなか発言できず、グループワークでも思ったように貢献することができませんでした。クラスで最低点を取ったこともありました。
学部によって異なりますが、私が在学しているビジネス学部では、職業訓練校のような役割も担っています。多くの人が将来のキャリアプランに沿った目的を持ち、それを達成する手段として大学に進学しています。ですので、単に「とりあえず大学に進んでおこう」というわけではなく、明確な目標を持ち、それに向かって勉強している人が多いです。
勉強内容自体は、予想していたものと大きく変わりませんでしたが、アウトプット型の課題やグループワークが多くあり、学生生活の大部分を勉強が占めることになります。そのため、明確な目標を持って勉強に取り組まなければ、自分が何のために勉強しているのかがわからなくなってしまいます。
その結果、課題に取り組むことができず、グループワークで貢献することができなくなり、自己肯定感を保つことが難しくなります。モチベーションが低下し、さらに厳しいバンクーバーの冬の気候に影響を受けてメンタルが落ち込んでしまうのです。
海外大学に進学して感じた日本教育とのズレ
今思えば、高校時代に、英語の勉強において楽しく本を読む習慣を身につけておけばよかったと思います。私のように、従来の公立中高の英語教育を受けると、長文を読むための小手先のテクニックばかりが教えられ、本質的な要素が見落とされがちです。例えば、読み物を楽しむことや作者の意図を理解することなどです。
これは留学を検討している全ての人に知っておいてほしいのですが、センター試験やTOEICなどの長文問題では、意図的にわかりにくく書かれた文章から効率的に情報を抽出し、問題に答える能力が求められます。そのため、従来の公立中高の長文練習については、あまり意味がなかったと感じています。
海外進学だけでは”人生の成功”は約束されない
進学を親に相談した際、初めは大反対をされました。わざわざ海外に行く意味がわからない、交換留学で良いじゃないか、危なくないのか、就職は出来るのか、などさまざま質問責めに合いました。
しかし、両親は私の将来の夢や大学で求めることに真剣に向き合ってくれ、数ヵ月にわたる話し合いの末、最終的には私を後押ししてくれました。私は今も両親のサポートに心から感謝しており、将来自分が子供を持った際にも同じようにサポートしたいと思っています。
海外大学進学は、意外と簡単に実現できます。就活においても海外の大学生向けの選考があるなど、有利に進められることもありますし、日本の友人からは羨ましがられるかもしれません。しかし、その肩書きや周囲からの評価にとらわれることなく、慣れない海外での生活や大量の課題に取り組みながら、課外活動や就職活動もしなければならないという現実が待っています。
これらは遊びながらの大学生活とはまったく異なるものです。そのプロセスを楽しむことができるかどうか、自分の人生において必要な経験なのかどうか、という判断軸を念頭において、生徒さん本人や彼らのサポートする親御さんには、進路を決めてほしいなと思います。
〈海外の大学進学を検討する子供の本気度チェック4項目〉
・現在、心底楽しみながら学んでいる何かがあるか
・大学で勉強したい内容が、現在の学んでいることと関連しているかどうか
・大学卒業後の姿を具体的にイメージできているか
・4年間、寝ている時以外は勉強に打ち込む覚悟があるか
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