「JR東日本終電繰り上げ」のニュース→投資のプロが「株価上昇」を確信した銘柄【投資のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「日経新聞の切り抜き」を25年間継続し、会社四季報を100冊読破した複眼経済塾の渡部清二代表。渡部氏は、情報を株式投資に生かす際には「連想」が不可欠であるといいます。今回は、そんな「連想力」を高める3つのポイントについて、具体的な事例を交えてみていきましょう。

切り抜きを株式投資に生かすには「連想」が不可欠

指標ノートのコメント欄に新聞から拾ったキーワードを記入したり、新聞を切り抜いたりしているときに、「こんな展開があるのではないか」「こういう未来があるのではないか」などと、あれこれ思いを巡らせることが肝要だ。

コメントの記入、新聞の切り抜きは単純な作業ではある。しかし、単にコピペしているだけでなく、日々手作業しているからこそ気づくことがあって連想が膨らみ、産業・企業動向を読む幅が広がっていく。

そして、「あれとこれがつながる」という気づきによって、具体的な銘柄選びにまで行き着くことができれば、あとは選択した企業がどのような企業か、四季報で詳細をチェックすればよく、その精査次第で株式投資の成果が得られることになる。

つまり、「指標ノート作り」も「新聞切り抜き」もそのための準備作業だ。たとえるならこの2つは「株式投資を成功に導くシナリオの素材」と言うことができる。では、シナリオの素材を前にして、どのようにすれば「連想する力」を高められるのかというと、次の3つが重要なポイントになる。

「連想する力」を高める3つのポイント

1.半歩先を連想してシナリオを描く

2.誰が儲かるのかを考える

3.世の中の変化を読む

1.半歩先を連想してシナリオを描く

他者と横並びの状態では株式投資で成果を得ることはできないので、他者より半歩先のシナリオを描くことが重要になる。なぜなら、株は先行投資であり、先行した分が利益につながるからだ。

たとえば、〈2021年3月13日のメモ「JR東日本終電繰り上げ 1987年民営化以降で初」〉という項目で紹介したカクヤスグループの場合、整理してみるとシナリオの流れは次のようになる。

JR東日本終電繰り上げ

→生活スタイルの変化

→コンビニの24時間営業がなくなる可能性

→超高齢社会の進行

→買い物に行けない高齢者の増加

→昔の酒屋さんの御用聞き文化の復活

→お酒を中心とした流通のインフラ構築をしている企業

カクヤスグループ(7686)

また、「ノルウェー中銀ゼロから利上げ(指標ノート 2021年9月23日)」という項目で、「2022年7月中旬には1ドル約138円に、さらに10月20日には150円台まで円安が進んでおり、円安がどこまで続くのか予断を許さない」と述べたが、その弊害だけにとらわれずに、いい意味での円安の経済効果を連想してみると次のようなシナリオになる。

円安

→コロナ禍が終息するにつれて外国人観光客が増加

→観光・旅行・ホテル関連が再び活性化

→ジャポニズムが味わえる場所やモノに人気が集まる

→2025年には大阪・関西万博が開催される

→外国人観光客をもてなすには自動翻訳機があれば便利

→自動翻訳機を手掛けている企業

→『ポケトーク』で知られているソースネクスト(4344)

ほかにもGoogle翻訳、iPhoneの翻訳アプリなども、今後どれほど機能を高め、利便性を向上させていくか気になるところである。訪日観光客に限らず、ビジネス上などでも国際交流が広がり、自動翻訳機の需要増大が予測されるので、翻訳ソフトを手掛けている企業を投資の対象にすることも考えられる。

2.誰が儲かるのかを考える

この2つ目のポイントを説明するときに、私がいつも例として挙げるのがジーンズメーカーのリーバイスの話である。

1800年代中頃の西部開拓時代、アメリカはゴールドラッシュに沸き、多くの人が砂金(さきん)探しに明け暮れた。運よく砂金探しで儲けた者がいたが、一方には砂金探しをせずに儲けた者がいた。それが砂金探しをする人たちにジーンズを提供し、後に世界的アパレルメーカーとなったリーバイスの創業者、リーバイ・ストラウスである。

砂金探しには作業着が必要になる。それも丈夫であれば売れるはずだというシナリオを描けたことが、リーバイスの成功のカギになったわけだ。

こうした成功例を踏まえた上で、儲かっている業種・銘柄を探し出すことが重要になる。「今、売れているものはこれだ」→「だったらこれも売れるのでは」と連想することによって、意外に身近なところで売れるものが見つかるかもしれない。

その例がスマホ用のワイアレスイヤホン、PC用のワイアレスマウス、モバイル機器への音楽や映画の配信サービス、ネット上のデータを保存・管理できるクラウドサービス等々であり、数え上げたら切りがないほどある。

連想といえば、「風が吹けば桶屋(おけや)が儲かる」という株式投資の有名な格言を知っている人は多いだろう。その内容は次のとおりだ。

強い風によって砂ぼこりがたつと、砂ぼこりが目に入ったために目が見えない人が増え、その人たちが三味線で生計を立てようとするため、三味線が多く必要になり、三味線の胴に張る猫の皮の需要も増え、そのために猫がへり、その結果、増えた鼠(ねずみ)が桶をかじるので桶屋が儲かって喜ぶ。

この格言は、ある出来事によって、まったく無関係と思われるところに影響が出る、また、とてもあてにできそうもないことに期待をかけるたとえであり、「誰が儲かるのか」を示唆してくれる連想のシナリオになっている。

3.世の中の変化を読む

世の中は日々刻々と変化している。社会が変わりマーケットの状況が変わり、企業の業績が変化し、株価も変動していく。だからこそ、マクロ・ミクロの視点を持つことが重要になるわけで、流行り廃(すた)りに流されたり、不確実な人の意見やメディアの論調に惑わされたりしないように心掛けたい。

社会の変化に伴って新たなマーケットが生まれたり、消えたりする。よって世の中の大きな変化を読み取りながら、「やがて社会はこのように変わるだろう」と連想することが大切になり、そのシナリオを描くことができれば有望な業種・銘柄を選択できるようになる。

たとえば、仕事が効率化され、働き方が変わり、従来の生活スタイルに変化をもたらすものとして、IoT(モノのインターネット)がここ4〜5年のあいだ注目されてきた。だが、2023年初頭の時点で、IoTをさらに超えたIoE(Internet of Everythingの略)という新たな概念が登場していることを知っている人はまだ少ないだろう。

IoEは「モノ」だけではなく、ヒト、プロセス、データ、場所などをインターネットに接続させることを前提とする。IoTによるデータを世の中のあらゆるサービスにつなげ、より価値のある便利なサービスを作り上げることを可能にするという。

IoT関連の銘柄は、有望視されてきたセクターだけに、証券会社のウェブサイトなどで検索すると、すでに選ぶのに迷うほどたくさんある。

IoEにはサーバーや基幹系システムなど、ネット通信が可能なデジタル機器すべてがつながる「IoD(Internet of Digital =デジタルのインターネット)」が含まれる。なので、IoT関連銘柄の中からIoDの分野に取り組んでいる企業を投資のターゲットにすることが考えられる。

渡部 清二

複眼経済塾

代表取締役塾長

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