複業で「副収入を増やせる人、大して稼げずに終わる人」の決定的差
2023年06月07日 06時00分THE GOLD ONLINE

多様で自由な働き方を推奨する時代背景から、「複業」という働き方へ注目が集まっています。複業をはじめる理由として一番多いのは、家や車など欲しいものを買うため、将来に備えて貯金をするためなど副収入を望むケースですが、複業は誰でも成功できるわけではなく、はじめ方を間違えれば本業に支障が出るリスクもあります。はじめる前にどんな準備をするべきなのか? 大林尚朝氏の著書『スキルマッチング型複業(副業)の実践書』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
なぜ副収入が必要なのか、なぜ複業という手段を選ぶのか
複業における金銭報酬は文字通り「副収入」を指します。エンジニアが複業でコーディングをして金銭を得たり、ライターが文字数や記事数に応じて金銭を得たりするイメージしやすい報酬です。世の中の複業においては金銭報酬を前提とした求人が最も多くなっています。
では、なぜ副収入が必要か、実は金銭報酬を目的とする複業の場合、この問いが最も重要になってきます。複業に人生の時間を費やしてまで「なぜ副収入が必要なのか」という問いに対して明確に答えを言語化できているでしょうか。
例えば、本業での収入に不満がある場合は、必ずしも複業で副収入を得る必要はなく、より高い収入を求めて転職するという選択肢もあります。一方で、結婚式を開くために一定期間だけ副収入が必要な場合は「複業」という方法で副収入を得たいと考えることもあるでしょう。
つまり、なぜ複業という手段で副収入を得る必要性があるのか、明確に目的を言語化することが必要です。より具体的に、かつ納得のいくまでとことん自分と対話し、向き合ってみましょう。
理想の収益ポートフォリオを設計する
金銭報酬を得たい目的が言語化できた次のステップは、目標の設定です。オススメする目標設定の方法は「期限」と「目標金額」を設定し、理想の収益ポートフォリオを作成することです。一見、当たり前のことを言っているようですが、意外と複業で実践している人は少ないです。
考え方は非常にシンプルです。複業の目的を達成するために、いつまでに、どのくらいの副収入が必要か、目標を数値化し、目的を達成するための期間として妥当性があるのか確かめましょう。目標を定量的に可視化することでゴールが明確になり、複業へのモチベーションアップにも繋がると同時に、モチベーションがさがったときに立ち返ることができる初心や、今の現在地を知ることができる地図にもなります。このポートフォリオを、携帯電話やPCの待ち受けなど常に見える状態に設定することも高いモチベーションで複業を続けるポイントです。
では、収益ポートフォリオを作成するにあたり具体例を3つ紹介します。前提としては、会社員で金銭報酬を目的に複業をするケースとなります。複業をはじめるときの動機などかなりリアリティのある事例ですので、自分の身に当てはめてイメージを膨らませて考えてみてください。複業の目的を明確にする上で参考になれば幸いです。
①Aさんの事例
■いずれマイカーを購入したいが、現状の本業収入では難しい…
Aさんは都内のIT企業で営業職に従事しています。営業成績は悪くないものの、会社の人事評価制度上、昇給の幅が少なく、昇給のタイミングの度に不満を感じています。しかし、働く環境や取り扱う商材が好きなため転職はしたくないと考えています。
Aさんの夢は憧れの車を購入することです。マイカーの購入のためには今の収入では心もとなく、大幅な昇給が見込めない今の会社では貯金を増やすことがかなり難しいと感じています。Aさんの家賃は10万円で、生活費や交際費など生活レベルは維持したいと考えています。
Aさんの勤務先はリモートワークが解禁になりました。Aさんは現在も週に3日、リモートワークを続けています。そのため、毎日往復2時間かけて通勤していた時間が浮くようになり、複業にも興味を持っていた中で、勤務先が複業を許可することになりました。
Aさんは複業をはじめようと思い立ち、目的と目標を設定しました。
複業の目的は「夢のマイカー購入のために本業と複業での合算年収を最大化する」です。目標は「マイカー購入資金のために1年以内に120万円を複業で収益化する」に設定し、具体的なプランを計画しました。目標を達成するためには副収入が月10万円必要でした。一方で、本業も忙しく、責任感が強いAさんは1社から多くの金額を受け取ることがプレッシャーになると自己分析の上判断し、月5万円の複業を2社で行いたいと考えました。
まずAさんは知り合いの経営者に連絡し、営業で困っていることや人手が足りていない部分はないかを聞きながら自分が貢献できることを伝え、無事にまずは1社で、月5万円の複業がスタートしました。知り合いの経営者も月5万円で実際の営業現場での経験が豊富なAさんに手伝ってもらえることは渡りに船で大変喜んでいました。1ヵ月後にその経営者からの紹介で同じ課題を持つ経営者と知り合い、2社目の複業を無事にはじめることができました。

②Bさんの事例
■転職は考えていないが、現状の世帯年収をキープしながら将来にも備えたい
Bさんは都内の大手製造業で事務職に従事しています。職場環境、人間関係は非常に良好ですが、新型コロナウイルス蔓延の影響で会社の業績悪化がニュースやテレビ、新聞で頻繁に流れるようになり、1社に所属し続けることや今の会社に居続ける将来に漠然とした不安を抱くようになりました。
昨年結婚したBさんは、将来的な家事・育児などを想定し、自分のライフスタイルに合わせた働き方をしたいと思っており、その上で金銭的に余裕のある生活をしたいと漠然と考えていました。結婚をしているBさんの世帯年収は800万円で、今の職場や仕事は好きなため転職は現在考えていません。
そこで将来に備えて今の世帯年収をキープし、将来の子育て費用の貯蓄をするために、複業という選択肢に至りました。すぐに会社の就業規定を確認すると業務時間外のプライベートの時間で行う複業は認められていました。
複業の目的は「世帯年収の現状キープと将来への備え」に設定し、目標は漠然と「今の月収の半分を複業で補填すること」としていましたが、周囲に将来のことを相談しながら、期限を1年半後に設定し、「1年半後に本業と複業の合算月収を1.5倍にすること」と細かく言語化していきました。
ただ、複業をはじめるにあたって何が自分の強みなのか分からなかったため、実際の求人を見ながら自己分析をするところからはじめることにしました。
Bさんは自己分析をする中で、自分の得意なことが業務で普段行っている製造業のP/LやB/Sからコストを計算することで、利益の最大化に貢献できるスキルであると発見しました。強みを見つけたBさんはすぐに複業のマッチングプラットフォームに登録し、本業とは全く異なる商材を扱っている製造業と出会い、複業をはじめることができました。
複業にも慣れてきた頃に他に登録しておいた複業マッチングプラットフォームを通じてITベンチャー企業の経営者から声がかかり、中期経営計画を作成するお手伝いをしてほしいとオファーがありました。
Bさんは今までの経験がIT業界という異業種かつ企業規模も異なるベンチャー企業で活かせると知り、汎用性のある実績を作ることができたと同時に、会社の肩書を外しても活躍できるという圧倒的な自信につながりました。

③Cさんの事例
■父親のように、自分もいつか起業したい
Cさんは都内の人材派遣会社で管理職として勤務をしています。営業時代は社内でも圧倒的な成果を出し、その成果が評価され管理職に抜擢されたことで日々充実した生活を送っていました。
父親が経営者で、社会人になった頃から会社経営に強い憧れがあり、自分もいつか起業をしたいという漠然とした想いを募らせていました。
またCさんは、長年の人材派遣事業の営業経験や管理職としてのマネジメント経験など、自分の実績に絶対的な自信を持っていました。
クライアント企業の経営・人事課題をヒアリングし、人材紹介をすることで企業が成長していく様子を数多く見ていく中で、採用コンサルティングを生業とした会社を起業することが自分には向いているのではないかと思うようになりました。
行動力のあるCさんは早速起業のやり方を調べ、起業資金と初期の事業運営費用を貯めるために複業をはじめようと考え、複業の目的を「法人設立の資金獲得」に設定しました。目標は「1年後の法人設立に向け、資本金100万円、軌道に乗るまでの事業運営費用100万円の合計200万円を得る」に設定しました。
しかし、勤務先の就業規定を熟読してみると、複業を禁止されてはいないものの、自社のクライアントから利益を得ること(利益相反になる行為)は禁止されていました。Cさんは勤務先にはどんなことがあっても迷惑はかけられないと思い、自社のクライアントに声をかけることがないよう、細心の注意を払いながら複業をはじめることに決めました。
Cさんは人材紹介を主業務としていたため、採用コンサルティングを業務として行っていたわけではありませんでした。そこで、まずはCさんが本業で人材紹介をする中で、自ら考え、調べ、工夫しながら生み出してきた独自の採用ノウハウを記事として配信し、本当に需要があるのか否かを検証することにしました。
CさんのSNSでも発信することで徐々にコンテンツ自体も閲覧されるようになり、自信をつけたCさんは、自分が設定した時給単価でスポット的に採用相談を受けようと考え、複業マッチングプラットフォームに登録しました。
Cさんは経営や採用のアドバイスを相談したい企業から、オンライン形式、1時間5万円で相談を受けるという仕組みでマネタイズに成功していきました。晴れて起業した後も複業ではじめたオンライン相談は続けており、複業が起業の滑走路として大いに役立ちました。

「ブレない目的」が複業成功のカギ
いかがでしたでしょうか。全てモデルケースではあるものの、私は実際に近しい事例をいくつも見てきました。特にCさんのように起業を前提にまずは複業でミニマムにはじめてみる、という事例は私の経営者仲間でも多くいます。
複業の探し方は多様化しており、知人からのリファラル紹介や人材紹介会社への登録、そして複業プラットフォームの利用など多くの選択肢が存在します。誰しもが複業をはじめやすい時代になったからこそ複業の目的が重要です。事例を元に金銭報酬の目的と目標を納得がいくまで考え、設計してみましょう。
大林 尚朝
複業エバンジェリスト
株式会社Another works 代表取締役
1992年生まれ、大分県出身。早稲田大学法学部卒業。
2015年、パソナグループ入社。顧問やフリーランスなど業務委託人材紹介の新規事業に従事。年間最優秀賞など多数受賞。2018年、株式会社ビズリーチ(現.ビジョナル株式会社)入社。M&Aプラットフォームの事業立ち上げを行う。
2019年、株式会社Another works創業。複業したい個人と企業や自治体を繋ぐ、成功報酬無料の総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を開発・運営。創業4年で累計1,000社以上が導入、50,000名以上が登録、70自治体以上と複業での地域活性に係る連携協定を締結、テレビや新聞など400件以上の掲載実績を誇る。
複業、経営・組織戦略、キャリア構築、地域活性をテーマに発信し、行政や教育機関をはじめ100件以上に登壇、「日本経済新聞」など多数のメディアでも取り上げられている。
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