親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

親が子や孫の口座にこっそり預金 税務調査され高額な相続税を払わされる可能性も

記事まとめ

  • 親が子の口座に預金し、場合によっては税務調査され、高額な相続税を払わされる可能性
  • 調査で指摘される財産漏れの多くは名義預金で、家族も知らない名義預金が出ることも
  • 税務署は本人の承諾がなくても預金口座を調査でき、不自然な預金の動きがわかるという

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

親が子の口座に預金すること自体は、どの家庭でもよく見受けられます。しかしこのような預金は、場合によっては税務調査の対象となり、結果として高額な相続税を払わされる可能性もあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。いったいなぜ税務調査の対象となるのでしょうか? Mさんの事例とともに解説します。

65歳で社長を引退し、会長に就任したMさん

都内で製造業を営むMさんは65歳で社長を引退し、会長に就任して、長男が社長として会社を経営しています。長男が社長に就任してから5年が経過し、Mさんも安心して長男に経営を任せることができるようになってきており、趣味の時間を楽しむ余裕も出てきました。

Mさんは、現役で社長をしていたときに比べると役員報酬が半分以下にはなりましたが、会長職として給与を受け取っています。そのほかに年金や不動産収入もあり、十分に生活ができているので、子供達にお金を残していきたいと考えるようになっていました。

収入は十分なはずなのに…質素な生活を送るMさん

そんなとき、会社の経理を担当している次男が不思議に思い、顧問税理士に相談をしました。というのも、生活費として問題のない収入を得ているはずのMさんが、日々の生活は質素で余裕がなさそうに見えるとのことでした。

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

せっかく自由な時間があるのだから、旅行に行ったり、好きなものを食べたりして楽しく過ごしてもらいたいと思っている次男としては、心配になってきました。どうして生活に余裕がないのか、本人に聞いても詳しく教えてくれず、言いたくなさそうだというのです。

実はMさんは、長男と次男、そして孫たちのために、毎月貯金をしていたのでした。会社経営を長年してきたMさんは、会社を引き継いだ長男と次男が、会社の資金繰りが苦しくなったときにお金を準備しておけるように、そして孫たちのためにと、お金を残していたのです。

毎年110万円ずつ、長男、次男と孫たちの口座に貯金していたので、総額で3,000万円以上になっていました

子供達のことを思ってのことですが、この状況ではMさんのせっかくの思いが台無しになってしまいます。いったいなぜでしょうか?

子や孫のための「預金口座」には要注意なワケ

本人が承諾していない、知らないところで本人名義の預金があったとしても、それは「名義預金」とみなされてしまいます。

相続税は、ほかの税金と比べて税務調査の対象になる確率が高く、多くの案件で財産漏れが指摘されています。コロナの影響で一時的に調査件数は少なくなっていましたが、今後は従来どおりの調査件数に増えていくものと考えられます。

調査で指摘される財産漏れの多くは、名義預金です。家族も知らなかった名義預金が出てきたということも珍しくありません。なぜ、家族も知らない預金が税務署にはわかってしまうのでしょうか。

なぜなら、税務署は本人の承諾がなくても預金口座を調査できるからです。本人だけでなく、家族の口座も調査対象になることもあります。金融機関は過去10年分の入出金データを保存していることが多いため、税務署は過去まで遡って確認することが可能です。

また国税庁や税務署では、給与や確定申告のデータが登録されている納税者情報を管理しており、そこに記録されている所得状況と預金の状況を照らし合わせて調査をします。これにより、不自然な預金の動きがあれば、一目でわかってしまうのです。

「子にお金を渡すと使ってしまうのが心配→親が管理」も名義預金とみなされる

(※写真はイメージです/PIXTA)
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ここで、名義預金と見なされてしまうケースをまとめます。

・本人が口座の存在を知らない。

・本人が管理していない。

・預金残高が本人の所得状況と比べて不自然に多い。

・口座の届出印が本人ではなく、親の印鑑になっている。

・口座開設をした金融機関が本人の住所ではなく、親の住所の近くの支店になっている。

・預金が預けられたままで口座の引き落としがまったくない。

子供達にお金を渡すと使ってしまうのが心配だから、親が管理する、ということは多くあります。しかし、上記のような状況で子供のためにと貯金をしても、単に名義預金をつくっているだけで、親の預金であることに変わりがないとみなされます。

子供のためにお金を残したいと考えるのであれば、事前に子供と話し合って、本人が把握している状況で残していくことが、必須です。名義預金とみなされないための対策としては、上記にあげたポイントに該当しないことを証明できることが重要となります。

・本人が承諾している証拠として、贈与契約書を作成してそれぞれが管理している印鑑で押印して、それぞれが保管しておく。

・日ごろ使用していない口座や現金ではなく、本人が日ごろ使用している口座に振り込むかたちで客観的な記録を残しておく。

・口座開設をするときは受け取る本人が手続きをする。

・110万円を超える贈与として贈与税の申告をしておく。

相続対策は、親も子もなんとなく気になってはいるものの、話をするタイミングが見つからず、話し合えていないということも多くあります。親子の大切な想いを台無しにしてしまうことのないように、しっかりと気持ちが届けられる対策をしましょう。

税務調査があるタイミングはいつなのかということも気になると思います。相続税の税務調査は相続の申告があった年から1年~2年のあいだに来ることがほとんどです。もし、相続の申告をしてから、3年以上経過していたとしたら、調査の対象にならなかった可能性が高いということになります。

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士

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  • 4

    先代社長や会長が退いて、誰かの口座に貯蓄している可能性は全日本にあり過ぎるくらいあるだろう。 その情報をどうやって入手するのか書いていない。 また、ウチの税務事務所と契約して欲しいということを広告では金が必要だから、雑誌に投稿したんだろう。

  • 3

    税務所に調査してもらえる程の相続があるのがうらやましいよ。 ウチなんかは絶対に調査の対象に入れてもらえないだろうな。 財産ないもん。

  • 2

    この税理の言うこと間違えていませんか? M氏は会長になり社長時の報酬と比べ半分になり、その他収入が年金と不動産収入と書いていますが給与+年金月額が48万円を超えると超えた分の2分の1の年金が支給停止になると教わりました。その上で社長時代の給与はそんな安かったのか?疑問です。

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