税務調査官「これは追徴課税とれるぞ」…相続財産は同額でも“税務調査の対象になる人”と“スルーされる人”の決定的な違い【税理士が解説】
2023年07月04日 05時30分THE GOLD ONLINE

税務署が税務調査に入った場合、そのうち追徴課税が必要になる確率は9割超と、「税務調査=追徴課税」といっても過言ではありません。できれば入られたくないと思ってしまいますが、「税務調査の対象になる人にはある特徴がある」と、多賀谷会計事務所の現役税理士・CFPの宮路幸人氏はいいます。今回は、相続税の税務調査において、行われる時期や方法、対象になりやすい人の特徴についてみていきましょう。
コロナが落ち着き、税務調査は「増加傾向」
国税庁が令和4年12月に発表した「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」によると、令和3事務年度※においては、新型コロナウイルス感染症の影響により実施調査件数大幅に減少した令和2事務年度と比較すると、実施調査件数・追徴税額合計ともに増加しました。
また、1件あたりの申告漏れ課税価格は3,530万円と過去10年間で最高となり、1件あたりの追徴税額は過去最高だった令和2事務年度に次いで、2番目の多さとなりました。
※ 事務年度……その年の7月頭から翌年6月末まで。令和3事務年度は、2021年7月~2022年6月30日。
上記のデータを見ると、コロナ禍が落ち着きつつあるいま、税務調査は増加傾向にあることがわかります。
相続税の税務調査が行われるのは「3回忌が終わったころ」
納税者のなかで意外と知られていないのが、相続税の税務調査は、相続税の申告書を出してすぐにやってくるわけではない、という点です。
税務署としても、数多くの申告書のなかから、税務調査が必要と思われる人の財産の動きを調査しなければいけません。したがって、税務調査に入るのは銀行に問い合わせをしたり、税務署内部でさまざまな検討をしたあとです。具体的には、被相続人が亡くなって10ヵ月以内に相続税申告をしたあと、3回忌が済んだころが税務調査の時期の目安といわれています。
提出された申告書が税理士作成のものであれば、まず税理士に連絡が行きます。その後、税務署と納税者と日程調整が行われたあと、税務調査が行われます。
税務調査が行われた場合、約9割の申告者が財産漏れを指摘されているため、調査に入るまでに対象者のことをよく調べているのがおわかりになると思います。
では、相続税の調査対象者はどのように選ばれるのでしょうか?
税務調査に入られやすい人の「3つ」の特徴
1.遺産総額が多い富裕層
やはり、遺産総額が多い富裕層には税務調査が入りやすい傾向にあります。税務署はKSKシステムなどで納税者の情報を管理しており、毎年提出される確定申告書などのデータなどを各人別に保管し、どのぐらいの財産を保有しているかを把握しています。
また、所得の合計額が2,000万円を超え、3億円以上の財産を保有している一定の富裕層は、所得税の申告書とともに「財産債務調書」を提出する義務があります。そのため、財産債務調書に記された金額と相続税の申告書とに差が生じている場合も、税務調査に入る可能性が高くなります。
税務調査の実施率は、平均して約12%前後です。コロナの影響でここのところ実施数が減っていたものの、また同程度に増加することが見込まれます。
また、国税庁の資料によると、遺産規模ごとの調査割合は、課税遺産総額が5,000万円未満の場合は1%未満とかなり少ないのに対し、5億円以上の場合約3件に1件以上の割合で税務調査に入られています。税務署としても税務調査を効率的に行うため、財産額が大きい人に重点的に税務調査を行っていることがわかります。
2.不動産より金融資産を多く相続した人
相続税の課税対象財産は、主に金融資産と不動産の2つに分けられます。このうち、不動産を多く相続した場合よりも、金融資産を多く相続した場合のほうが、税務調査が入りやすい傾向があります。
不動産の場合は財産評価の方法が複雑であり、その評価の仕方や解釈の違いから財産額について意見の相違が発生し、調査が長引くケ-スが少なくありません。しかし金融資産の場合、銀行等に問い合わせ、残高証明書を取得すれば財産漏れの確認が容易で明確です。したがって、不動産より金融資産を指摘したほうが、税務署からすると簡単に追徴できるといえます。
相続税の「自己申告」はキケン!税理士に依頼を
3.相続税を「自己申告」した人
「相続税の申告書」の第1表下部には、税理士の名前を記載する欄があり、相続税申告を税理士が行った場合、税理士が名前をいれます。しかし、ここに名前が入っていない場合、税務署に怪しまれる確率が高まります。
たとえば、相続税の申告書を税理士が作成したAさんと自作のBさんの相続財産が「1億円」で同額の場合、税務署が調査対象として選ぶのは「Bさん」である可能性が圧倒的に高いでしょう。
所得税の申告書などは自分で作成する人も少なくありません。しかし、相続税の申告書は土地の評価など専門的な知識が必要であるため、自分で作成した場合、税務署の調査官から「この申告書は間違っているのではないか……追徴課税をとれるかもしれないぞ」と思われやすく、調査に入られる可能性が高まります。
また、調査の立ち合いも税理士に依頼せずにご自身で対応する場合、慣れていないために税務署側の言い分を一方的に飲まされる可能性が高いので注意が必要です。
所得税の確定申告を税理士に依頼する割合は20%程度ですが、相続税の申告を税理士に依頼する割合は約85%と、ほとんどの人が税理士に依頼しています。
毎年同じような申告書を作成する所得税の場合とは異なり、相続税の申告は一生に1回経験するかどうかで、慣れている人はいないでしょう。そのため、自分で作成した場合どうしてもミスが出やすくなります。
また、税務調査に入られなかったとしても、自ら相続税申告書を作成した結果、誤って多くの相続税を納めてしまった場合、税務署は多く納めているからといって「還付します」とは言ってくれません。多く納めた場合は自分で「更正の請求」をし、相続税の還付を請求する必要があります。
したがって、やむを得ない事情がない場合は自己申告は避け、極力税理士の力を借りて正しい申告書を作成することが「税務調査・追徴課税を防ぐ対策」といえるでしょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
「税理士」「会計士」は共に準役人で、お役所の言いなりです。この記事には、<自己申告はキケン>、税理士に依頼しましょうとの記載もあり、いったい、どちらの味方なのか? 怖がらせて、仕事を取ろうとの魂胆が丸見えです。