年金240万円・資産5,000万円の65歳男性、希望溢れるセカンドライフの幕開けに胸ときめくも…老後破産!許せない投資詐欺「ポンジ・スキーム」の手口【FPが解説】
2023年07月19日 11時45分THE GOLD ONLINE

近年、老後の生活資金不足や老後破産の問題が深刻化しています。老後破産へ陥る要因のひとつとして、「投資詐欺」が挙げられますが、一体どのような手口で詐欺に遭ってしまうのでしょうか。本記事ではFPの牧元拓也氏が、田中さん(仮名)の事例とともに、投資詐欺の具体的な手口や被害の深刻さについて解説します。
投資詐欺によって消えた「明るいセカンドライフ」
田中さん(仮名)は製造業で長年勤め上げた65歳の男性です。
彼は年金として240万円(月20万円)の収入を得ることができ、勤務先の持ち株が値上がりしていたこともあり、売却後には5,000万円の資産がありました。そのため、セカンドライフに不安はなく、奥様や娘さんといままで行けなかった旅行を定期的に計画するなど明るい未来を考え、胸をときめかせていました。
しかし、田中さんは知らぬ間に投資詐欺に巻き込まれてしまうことに……。
発端は、友人から紹介された投資セミナーへの参加
田中さんは、ある日、友人から紹介された投資会社のセミナーに参加したことがきっかけで、投資に興味を持ちました。自分の資産をいま以上に増やすことができれば、海外旅行をする頻度を上げることができ、家族も喜んでくれると考えたのです。
高利回りを謳うその投資会社の説明は、「AI技術を使うことで少額の利益を積み重ねる売買システムがあり、そこから月利5~20%の配当が得られる」というものでした。田中さんは、世の中の技術の進歩に興奮を覚えつつも、魅力的な投資案件に1,000万円分の投資をしました。
その後も定期的にセミナーに参加し会社としても信頼できると感じました。参加する人が前向きに投資をしていたことも田中さんを安心させたのです。そして数ヵ月も立たず田中さんは利益を30%上げることができ、さらに利益を拡大するために追加資金を入れていき最終的には3,000万の投資を行いました。
しかし、投資会社からの支払いが滞り始め、紹介者でもある友人からも「資金を引き出すこともできない状態になっている」ことを聞きました。
田中さんは慌てて連絡を試みましたが、会社の電話はつながらず、担当者も姿を消してしまいました。
田中さんは、最初は事態を理解することができませんでしたが(というより受け入れたくなかった)、徐々に怒りが湧いてきます。自分の投資先が詐欺であったことに気づき、40年以上も勤め得た自身の退職金が失われたことを実感しました。そして、夫婦での旅行や外食を楽しむ日々を楽しみにしていましたが、実現できないことも痛感しました。
また、投資が順調だったため、いままで以上に支出が多くなっており、3,000万円の投資資金を失ったあとの預貯金は1,000万円になっていました。
将来の自宅修繕費、車の買い替え費用なども考えると月20万円の年金と1,000万円の預貯金だけでは生涯の生活費を賄うには足りず、このままでは老後破産の未来が待っています。
投資詐欺「ポンジ・スキーム」の仕組み
このような投資詐欺はポンジ・スキームと呼ばれ、下記のような仕組みです。
① 高配当を謳い出資させる
② 出資金を別の出資者へ配当金として分配
③ 実際には運用せず同様の手口で資金集めを繰り返す
④ やがて分配が滞り資金が戻らなくなる
田中さんの投資した資金が運用された結果、利益を得られたのではなく、実際には新たに投資した人のお金が田中さんに利益として分配されているだけでした。
このような詐欺の手口に引っかかるのは、魅力的な利回りや保証された元本など、金銭的な安定を求める人に多いと感じます。しかし、投資は常にリスクを伴うものであり、高利回りは高リスクであることを意味します。
「投資詐欺」に遭わないために注意すべき「4つ」のポイント
投資詐欺の被害に遭わないためには、以下の点に注意する必要があります。
1.高い利回りや元本保証された投資話には注意が必要です。過度に魅力的な話には疑問を持ちましょう。利益が確約されているような場合は、それが現実的かどうかを疑うべきです。
2.投資家や投資機関のバックグラウンドや信頼性を確認しましょう。適切なライセンスや認可を持っているかどうかを確認することが重要です。
3.定期的な報告や透明性がある投資を選びましょう。投資家とのコミュニケーションや資産の運用状況についての情報を入手することが重要です。
4.無理な投資をせず、自身のリスク許容度を考慮して投資を行いましょう。
追加の出資を求められた場も注意が必要です。特に、利益を受け取る前に新たな出資を要求されるような場合は、詐欺の可能性がより高いです。投資詐欺は、老後の生活を脅かす大きなリスクです。田中さんのように、一度騙されてしまうと、取り返しのつかない損失を被ることがあります。
また紹介者自身も騙すつもりはなく、本当によい投資だと思って紹介しているケースも多くあり、信頼している友人から紹介されると信じてしまうのも無理はありません。ただし、自身の資産を守るために、必要最低限の慎重さと知識の習得が重要です。
また、被害に遭った場合は、速やかに警察や金融庁の認可を取っている金融機関に相談しましょう。
牧元 拓也
ファイナンシャルプランナー
株式会社日本金融教育センター
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