恐ろしい…日本で急増「中間層」からの脱落者。「貧困層」へ落ちないために、投資よりも優先すべき“たったひとつのこと”【経済学者が警告】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「一億総中流時代」と呼ばれた日本ですが、近年「中間層から貧困層に脱落する人が増えている」と、近畿大学世界経済研究所の客員教授で投資家・ストラテジストの菅下清廣氏はいいます。では、将来「富める側」に残るためには何をしなければならないのでしょうか。投資よりも優先すべき“たったひとつのこと”を、菅下氏が解説します。

アメリカ、そして中南米の現実

何年も続く不景気、失業、治安悪化で自国を見限り、アメリカに不法移民する人々が絶えない中南米では、事態はさらに深刻です。

貧困層の若者たちをマフィアなどが吸収、社会不安はますます増大。景気が悪く、仕事がなく、まともな生活ができないため、麻薬密売、誘拐などの悪事に若者たちが手を染めています。

社会不安の増大、不安定化の拡大が、中南米やアフリカ諸国では驚くほどのスピードで増大している。それが中南米からアメリカ、アフリカからヨーロッパへの難民の増大となって表れています。

これに比べれば日本はまだ大丈夫。以前ほどではありませんが、中産階級層もまだ一定の層が残っています。

外国の事例を見れば一目瞭然ですが、社会不安は、中産階級が非常に少ない国で起こっているという事実を注視しなければなりません。社会不安が増大すれば、格差はますます拡がり、それが負のスパイラルとなってあらゆる領域へと連鎖していくでしょう。

ウクライナ侵攻を続けるロシアも、国内を見ればプーチン大統領とその側近、ごく限られた政権上層部だけが富を独占している。一極集中型の独裁資本主義になっているのです。

出所:『日本株大復活』(実務教育出版)より抜粋
出所:『日本株大復活』(実務教育出版)より抜粋

日本から「中流層」が消える!?

年月日を基に運命を占う中国発祥の算命学を、私は時々、世の中の大局の流れを読むうえで参考にしています。この算命学関連の書物で名著とされるのが高尾義政の『悠久の軍略』。

この本では、「昭和60年ごろまでは、まだ日本にも巨大な中階級層、中間層があった」「アメリカでは中間層が激減している。いずれ近い将来、日本でも同様な現象が起こる」と指摘。

また社会の人口構成は、ごく一部の富裕層と、膨大な数の貧困層とに分かれ、中間に位置するはずの中間層、中流階級がどんどん減少していく、と予測。今まさにその通りになっています。

つまり中間層が次々と貧困層へと脱落している。そして貧困層が巨大化し、それに比例して中間層が激減していく。その結果、恐ろしい経済的格差社会が生まれていく。日本は現在進行系でその方向へ向かっています。

アメリカでトレーラーに住む人々は、1日3食の食事をフードスタンプ(低所得者に対して行なわれる食料費支援政策。スーパーマーケットなどで使用できる最大月100ドル相当の金券)でしのぎ、教会で食事をもらうなどして生活しています。

フードスタンプの受給世帯は、いまや2,000万世帯に迫る勢いです(2018年は1,940万世帯。約3,900万人が利用)。

(注)フードスタンプ……アメリカ農務省の栄養補充支援制度(SNAP)のことで、低所得者向けの食料支援制度。日本円で10兆円近い予算規模。3億3,000万人の人口の12%がSNAPを受給しているとされる。

「富める側」に残るため、しなければならないこと

現在、そしてこれから迎える次の新時代に備えて、我々は何をしなければならないのか。そして何をしてはいけないのでしょうか。

生活に困らない、不自由なく暮らすためにはどう生活防衛すればよいのか。この点が最重要ポイントです。

富裕層にはなれなくても、少しでも富めるグループの側に残りたい、誰もがそう思うでしょう。読者のみなさんも、関心のひとつはそこにあると思います。

資産形成においていちばんポピュラーなのは株式投資や不動産投資でしょう。金(ゴールド)への投資という選択肢もある。上級レベルの投資家ならば暗号資産(仮想通貨)という手もあるでしょう。

いろいろな選択肢がありますが、次の時代を生き抜くためには、お金全般に対する教養、リテラシーの向上が何よりも大切になります。

当然、世界情勢や未来に対する大局観も必要ですが、それも「How to live wealthy(いかにして裕福に暮らすか)」という視点をもつことが大前提です。日々の生活に苦しむ状況では、世界情勢の先行きどころではありません。

日本が本格的な格差社会に突入することはもはや避けられません。お金持ちと貧しい人の差が一層明確になる。

アメリカではすでに住所を聞いただけで、その人の経済的レベルがわかってしまう状況が生まれています。同じニューヨークのマンハッタンでも、住む場所によって経済的格差が明らかになっているのです。

私がアメリカで仕事をしていた頃と比べても信じられないレベルです。人々は好むと好まざるとにかかわらずその格差を肌で感じているでしょう。

『年収は「住むところ」で決まる』(エンリコ・モレッティプレジデント社)という本が日米でベストセラーになっているのが実に象徴的です。

職業、労働、賃金のあらゆる分野でこれまでのやり方、習慣、プライオリティ(優先順位)が通用しなくなっている。2023年は世界と日本のパラダイムシフトがいっそう鮮明になる年として歴史に刻まれることになるかもしれません。

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社

代表取締役社長

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