株価10倍「テンバガー」が狙える企業…共通する“たったひとつ”のキーワード【経済学者が解説】
2023年09月18日 05時15分THE GOLD ONLINE

近畿大学世界経済研究所の客員教授で投資家・ストラテジストの菅下清廣氏は、日本で今後「史上最大のインフレ相場がやって来る」といいます。ではそのインフレ相場で「株価が上がる銘柄」と「株価が下がる銘柄」を見極めるには、企業のどこに着目すればよいのでしょうか。菅下氏が解説します。
10倍株のキーワードは「イノベーション」
日本郵船や日本製鉄の株価はなぜ上昇したのか。それは、社内のイノベーションに成功したか否かが大きな理由のひとつです。
社内のイノベーションと聞くと不思議に思われるかもしれません。しかしながら、いかなる企業も、社内的に大きな変革を起こし、旧態依然から脱皮した企業の株価が化けているのです。
これからの大相場で株価を押し上げるのは、大企業株であれ、新興株であれ、企業内にイノベーションが起こっている企業です。その見極めがきちんとできていれば、これから上がって来る「黄金株」をベストのタイミングでとらえることができます。
「日経ビジネス」的な表現をすれば、企業改革、企業革命が起こっている銘柄を買うのです。
実際、ディフェンシブ株(割安株)の代表ともいえる、日本製鉄、日本郵船、商船三井、川崎汽船などではイノベーションが起こっています。製鉄会社、海運会社が企業改革によって収益性の高い事業モデルに変身しているのです。そこに円安・インフレが加わり、大きなプラス効果となって現われたのです。
新たな事業モデルの具体例を以下にあげておきます。
■日本製鉄の場合…
日本製鉄は昭和電工や6つの国立大学と連携して、製鉄工程中の排気ガスから効率的に二酸化炭素を分離、回収する技術を開発。またJFEスチールや神戸製鋼所などと共同で、製鉄の過程で生じる水素を活用したプロジェクトが、経済産業省などが策定した「グリーンイノベーション基金事業」(注)に採択されました。
■日本郵船の場合…
日本郵船は海運業界の労働者不足を補うため、「無人運航船」の実証実験に成功。内閣府主催の「第5回日本オープンイノベーション大賞・国土交通大臣賞」を受賞しています。
まったく新しいビジネスモデルを構築し、資金調達も可能にしている。新しくビジネスチャンスをものにして、業績が飛躍的に伸びている企業なのです。
東京証券取引所が、上場企業のコロナ禍前とコロナ禍後の利益の伸び率を調べたところ、最も利益の伸び率が高かったのは日本郵船でした。
日本経済新聞(2023年3月20日付)によると、2022年4〜12月期の最終損益は、コロナ流行前の2019年4〜12月期と比べた増減額で改善額は約9,000億円。利益で約50倍にもなっているのです。
イノベーションが成功した企業と成功していない企業、あるいはイノベーションを必要と考えず、何もしていない企業との差がはっきり出てきています。その意味でも、史上最大の資産インフレは格差をともなってやって来ることは間違いありません。
それがこれから起こる資産インフレの最大の特徴です。所得の格差だけでなく株価にも格差が拡がる、そういう時代が到来しているのです。
主要国で新高値をつけていないのは日本だけ
私が、「史上最大のインフレ相場がやって来る」と予測している根拠についてもう少し詳しくお話ししましょう。
まず根拠の第1に挙げられるのが、世界中に溢れ返ったマネーの量です。
2008年のリーマンショック以前は、世界の3大中央銀行(FRB、ECB、日銀)のベースマネー(マネタリーベースのこと。世の中に流通しているマネー)は、合計が400兆円にも満たなかった。ところが2020年のコロナ禍で大金融緩和が行なわれ、ベースマネーは2022年までに2,000兆円にまで膨れ上がりました。
1,600兆円も増えた。お金の量が約5倍になったのです。それで私は早くから、マネーバブル相場の到来を予想していました。過去になかったマネーバブルは、今もなお継続中です。
世界中の不動産、株価が釣り上がって、日本だけはまだデフレの出口に差しかかっているため、株価も不動産価格も欧米に比べ割安です。
だが世界は違う。先進国で日経平均株価のようなその国を代表する株価指数が、いまだ新高値を取っていないのは日本だけです。不動産価格も日本だけが前回のバブル時の高値を抜いていません。つまり、このマネーバブル、最終ランナーの日本がこれから資産インフレ、そしてバブルへ向かうことになるのです。
日銀は金融緩和政策を継続。植田和男新総裁は黒田東彦前総裁の意志を引き継いで、「物価目標2%が継続的に行われるまで、金融緩和は続ける、それが適切である」と明言しています。少なくとも2023年いっぱい、2024年まで金融緩和はこのまま継続される可能性が高い。
世界経済は今、異なる2つの潮流のただ中にあります。日本では金融緩和の継続、しかし世界はハイインフレ、金融引き締め。FRBは昨年0.75%の利上げを4回連続実施。2023年最初のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決定。アメリカは利上げによる引き締め継続中ですが、日本は金融緩和継続のゼロ金利。そのため円安トレンドが続くことが予想されるのです。
一時的に円高になったとしても、国際的な信用危機などによって一時的にドル売り円買いが起こるだけで円高トレンドになったとしても一時的だと思います。
菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社
代表取締役社長
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