金利が上昇しても株安にはならない 投資の教科書はもう古い【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】

金利が上昇しても株安にはならない 投資の教科書はもう古い【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】

近年、米国金利の上昇率は小幅(C)ロイター

【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】#46

 米国の10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.2%と31年ぶりの大幅な上昇を記録し、インフレ懸念が再燃してきた。投資家は米国の金利動向を注視している。なぜなら、金利の上昇が連日最高値を更新している米国株の大崩れを招き、それにより世界同時株安をもたらす恐れがあるからだ。では果たして、投資の教科書に書いてあるように、金利上昇は本当に株安をもたらすのか。

 2000年以降の米国金利(米10年債)と米国株(S&P500指数)の関係を振り返ってみる。この期間に金利の上昇局面は10回あった。しかし驚いたことに株価は10回すべて上昇している。金利上昇率の幅は1.0〜1.5%で、株価上昇率の幅は0.2〜35.1%だ。

 近年の米国金利は世界的な低金利を反映して、1980年代前半に見られたような10%台になることはなく、最も上昇しても5%台であり、金利の上昇幅も1%台とわずかだ。金利の変動幅が小さいため、教科書にあるような株式市場から債券への大量の資金シフトは起こらず、投資妙味のある物色の変化にとどまっている。その結果、全体として株安にならなかったのである。

 確かに金利上昇は株価収益率(PER)の高い成長株には逆風である。たとえばGAFAに代表されるテック株だ。株の理論価格は企業が将来稼ぐ利益を現在価値に換算して計算するが、金利上昇により割引率も上昇する。割引率が上がれば理論価格が下落するのである。

 一方、緩やかな金利上昇は広範囲の業種で追い風となる。利上げ局面では長短金利の差が開き「利ざや」が拡大し銀行の業績は良くなる。また金利が上昇する際は景気も回復していることが多いので、鉄鋼・化学・機械・海運・自動車といった景気敏感株の業績向上が期待できる。

 現在の米国のインフレ懸念も、FRBのマーケットフレンドリーな対応で、かつてのようなハイパーインフレとはならず、金利の上昇も近年と同様に小幅だ。株価の下押し圧力は限定的といえる。本当に怖い株価下落リスクは、金利の適度な上昇でなくて、むしろ金利が低下するような経済状況に陥ることーー。そこを押さえておいてほしい。(丸)

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