人工心肺「ECMO」で脚光 国内シェア7割のテルモはコロナ関連銘柄の本命

人工心肺「ECMO」で脚光 国内シェア7割のテルモはコロナ関連銘柄の本命

新型コロナウイルスの治療にあたる医療関係者(C)ロイター=共同

【企業深層研究】テルモ(上)

 新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発に時間がかかる中、肺炎になった重症患者を治療する最後の切り札となるのが人工心肺装置(ECMO=エクモ)である。カテーテルなど心臓血管分野で強みを発揮する最先端医療機器メーカー、テルモはECMOで国内シェア7割を誇る。

 ECMOは国内に約1400台が設置されており、年間1万件の治療が行われている。東京に196台、大阪には103台ある。

 重症患者を治療する国立国際医療研究センター(東京・新宿区戸山)を視察した西村康稔・経済再生担当相(コロナ大臣)は、「医療供給体制の確保が最優先課題のひとつ」とし、ECMOなどの増産を具体例として挙げた。感染者が急激に増えていた東京について「早急に700台まで増やしたい」と述べた。政府はECMOの増産に補助金を出すことを決めた。

 テルモは、静岡県内の生産拠点でECMOを年間百数十台生産しているが、100台程度、上乗せして増産できる体制を整えた。業界2位の泉工医科工業(東京・文京区、非上場)も増産を決めた。

 ECMOは、簡単に言えば自力で呼吸する機能を体の外に置き換える装置。装置本体にチューブやポンプなどの部品を組み合わせて作動させる。血液を患者の体外に取り出し、酸素を供給し二酸化炭素を排出してから、新鮮な血液を体内に戻す。

 ただ、ECMOを扱える医師は少ない。患者1人当たりに医師4〜5人、看護師10人以上、臨床工学技士2〜3人と、20人ほどのスタッフが必要とされる。

 欧米ではECMOを使用する病院を決め、機材と患者を集中させているから、医師の熟練度が高い。日本では数台ずつ各病院に分散しているうえに、これまでは年に数回しか使われないケースがほとんどだったため、熟練度は上がりにくかった。

 重症患者が増えた場合に十分に対応できない恐れがあり、スタッフの育成の重要性が改めて指摘されている。

 テルモは神奈川県に医療関係者が手術のシミュレーションに使う医療トレーニング施設を持っている。ECMOを扱える医療従事者の不足に対処するため、ここで感染症対策のトレーニングやシミュレーションができるようにすることを考えている。

■コロナ関連銘柄の本命

 テルモはコロナ関連のトップランナーなのである。

 4月13日、テルモの遠心型血液成分分離装置「スペクトラオプティア」が米食品医薬品局(FDA)から新型コロナウイルス感染症に緊急使用する許可を得たと発表した。スイス製の「D2000吸着カートリッジ」と組み合わせ、呼吸不全で集中治療室に入っている18歳以上の患者に使用するという。

 さらに、新型コロナウイルスを除去する効果が確認された紫外線照射ロボットの日本での独占販売権を持つ。2017年1月に権利を取得した。製造元は米ゼネックス・ディスインフェクション・サービス(テキサス州)だ。ゼネックスの照射ロボット「ライトストライク」を販売する。

 波長200〜315ナノメートル(ナノは10億分の1)の紫外線を5分間照射する。これを2〜3回繰り返すことで、ベッドやドアノブなどに付着した細菌やウイルスの機能を失わせる仕組み。新型コロナウイルスは短時間で除去できるという。

 このロボットは欧米を中心に世界の500施設で使われている。日本では今年春までに広島大学病院など11施設に導入済みだ。実勢価格は約1500万円。テルモでは「3〜4月に100以上の医療機関から問い合わせがあった」としている。

 コロナワクチンの実用化が待たれるが、ワクチン製剤の充填容器の不足が取り沙汰されている。日本ではテルモがワクチンの容器を製造している。

 株式市場で一連のコロナ対応策が高く評価されている。6月3日には年初来高値の4356円をつけた。年初来安値は3月17日の2880円だから5割以上、値上がりしたことになる。ECMOで脚光を浴びたテルモは、コロナに打ち勝つ企業の先頭を走っている。=つづく

(有森隆/ジャーナリスト)

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