「iDeCo、もっと早く知りたかった」と言われないよう周知活動に全力=厚労省年金局の企業年金・個人年金普及推進室長に聞く

「iDeCo、もっと早く知りたかった」と言われないよう周知活動に全力=厚労省年金局の企業年金・個人年金普及推進室長に聞く

確定拠出年金普及・推進協議会のiDeCo広報実行委員会が計画する今年度の広報活動がいよいよスタートする。企業年金・個人年金普及推進室長の江口満氏(写真)に、iDeCoを中心とした取り組みについて聞いた。

 確定拠出年金普及・推進協議会のiDeCo広報実行委員会が計画する今年度の広報活動がいよいよスタートする。テレビCMやインターネット広告などで「いま、できる、こと、イデコ」の露出が高まる。厚生労働省にも今年4月、年金局に「企業年金・個人年金普及推進室」が新設され、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)をはじめとする私的年金の普及・推進にあたっている。企業年金・個人年金普及推進室長の江口満氏(写真)に、iDeCoを中心とした取り組みについて聞いた。
  
 ――iDeCoは今年1月からの加入対象者拡大を受け、新規加入者が大幅に増えている。5月までに20万人以上が新規に加入したが、この加入状況の評価は?
  
 平成27年度は1年間の加入者数の増加が4.5万人程度だったが、今年の1月以降の平均でみると、1カ月間でほぼ同程度の加入者数が増加している状況にあり、加入状況は様変わりしたと思う。ただ、加入対象者数と比較すると、依然として加入者は限定的だと思う。まだまだ制度内容の周知が行き届いていないと思っている。
  
 厚生労働省ではこの4月に、年金局に企業年金・個人年金普及推進室を設けた。iDeCoをはじめ、企業年金など私的年金分野の普及に積極的に努めていきたいと考えている。確定拠出年金分野では、中小企業向けに、簡易型DC(確定拠出年金)制度やiDeCoへの企業サイドからの掛金の追加拠出の導入など制度改正の施行も控えている。企業年金・個人年金全般の普及に努めていくことになるが、中でもiDeCoは今年1月から加入対象者がすべての国民に広がるなど新しい制度に生まれ変わったばかりであり、今年度は普及推進の重要なポイントと考えている。
  
 ――加入者数の月別推移では、2月から4月にかけて毎月新規の加入者が増え、平均で4.7万人程度の新規加入があったものの、5月の新規加入者数は3万人弱と加入者増の勢いが弱まったように見えるが?
  
 5月にはゴールデンウィークもあって営業日数が少ないため、もともと新規加入者数が少なめに出る傾向がある。また、加入を働きかける運営管理機関は、加入対象者拡大後に初めて迎える3月決算の期末意識があって、営業活動を積極的に展開したと聞いており、加えて、28年度には補正予算でiDeCoの広報予算を確保して国民年金基金連合会(国基連)に補助金を出してテレビCMやインターネット広告、シンポジウムの開催などの広報事業を展開したが、3月に集中的に実施したことも相まって、2月から4月の加入者増につながったのではと思う。5月の新規加入者数は2月から4月までと比較して低下したが、それは需要の一巡などではなく、このような事情が重なったためで、まだまだ普及の余地は大きいと思っている。
  
 ――iDeCoの普及に向け運営管理機関でも手数料の引き下げなどが進んでいる。運営管理機関の取り組みをどのように評価している?
  
 運営管理機関が加入者のために、適度にサービス内容を競い合うことは望ましいことだと思う。加入を検討される方々は、最終的に「どこの運営管理機関を選ぶ?」という判断が必要で、サービス内容を比較検討する目も厳しいものになっていくだろう。手数料の引き下げや、ロボ・アドバイザーの導入など様々な取り組みが行われているが、運営管理機関には、加入者の立場に立ったサービス拡充を引き続き進めていただきたいと思う。
  
 未加入の方々に向けては、「知ってもらう」「理解してもらう」という制度そのものの認知と理解がまずは必要だ。この第一歩の部分で、まだまだ行き届かない部分があると考えている。運営管理機関と一緒になって認知度拡大に取り組んでいきたい。
  
 たとえば、iDeCoのロゴや普及推進キャラクターであるシロイルカのイデコちゃんのイラストなどは、オープンで自由に使えるようにしている。全国各地でiDeCoを告知するにあたって、共通のロゴマークやキャラクターが使われていることが大事だと思っている。広く使われるからこそ、「これは何だろう?」と認知のきっかけになると思う。是非、各運営管理機関でも積極的に活用してほしい。
  
 ――今年度の普及推進室の取り組みは?
  
 28年度はiDeCoの加入対象者拡大がスタートするという重要なタイミングだったこともあり、補正予算を確保して積極的な広報活動に取り組んだ。法律上は、iDeCoの広報は、iDeCoの実施主体である国基連が行うことになっている。今年度は、国基連が事務局を務める確定拠出年金普及・推進協議会の中にiDeCo広報実行委員会を設けて広報活動を計画・実行している。厚労省は協議会や実行委員会にオブザーバーとして参画しているので、手を携えて普及活動を進めたい。
  
 もちろん国の制度として、その認知度を広げるために情報を発信していく役割は厚労省も担っている。加入対象者である国民の皆さんに、制度がより広く活用されるよう、しっかりと普及推進室の役割を果たしていきたい。
  
 たとえば、この7月に全国の地方自治体や中央官庁、また、企業の福利厚生担当者向けのiDeCoセミナーを開催した。iDeCoは個人で加入する制度ではあるが、事業主の立場で手続きに関与する部分もあり、また、iDeCoは職員や社員の福利厚生のツールの一つでもあるので、そのような観点から制度内容について理解してもらうことが重要であると考え、全国に広く呼び掛けたところ、九州から東北地方まで予想以上に多くの方に集まっていただいた。
  
 また、昨年度に開設したiDeCoの公式サイトである国基連の「イデコガイド」については、加入対象者にとって必要十分な内容になるようコンテンツの拡充を国基連と一緒になって考えているところだが、まずは、この公式サイトの存在を広く知っていただく必要がある。このため、厚労省のホームページの私的年金制度のページでは、「イデコガイド」のリンクを貼るだけではなく、コンテンツの中味が分かるように紹介するように改めた。「マンガ・アニメでわかるイデコ」など、コンテンツ内容を紹介することで、「イデコガイド」への訪問も増えると期待している。
  
 ――公的年金を所管しながら、私的年金である企業年金・個人年金の普及推進にあたるというのは、立場的に難しいように感じるが、今後の取り組みは?
  
 公的年金が国民の老後生活を支える柱であるという位置づけは今後も変わりない。ただ、その給付水準は、現役時代の収入と同等というわけにはいかない。豊かな現役時代を送った方々は、仕事から引退したからと言って、生活レベルを一気に引き下げることは難しいと思う。趣味や旅行などの楽しみのためのお金も必要になるだろう。老後をどのように過ごしたいかは人それぞれだと思う。老後の生活水準をイメージし、現役時代からライフプランを考え、老後の備えもしっかり考えるようなことを広めたい。
  
 公的年金と私的年金を組み合わせて老後の生活設計をするというのは、英国・米国・ドイツなど欧米諸国でも年金制度を考える基本的な枠組みになっている。年金局として私的年金についても普及を促し、そのためのより良い環境づくりにも努めていきたい。
  
 iDeCoは手厚い税制メリットを受けながら老後の資産形成ができる制度であり、今年から加入対象者が広がったことなどを、様々な機会に情報発信しているが、その情報が未だに届いていない方もいると思っている。初めてiDeCoを知った方から「もっと早く知っておきたかった」と言われることがないようにすることが、普及推進室のミッションの第一だと考えている。普及推進室では、まず、iDeCoについて知っていただき、制度内容を正しく理解していただくということについて、あらゆる機会をとらえて情報発信していきたいと思っている。(情報提供:モーニングスター社)

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