クロス円の円安もスピード調整か? 米欧金融政策の次の手に注目=外為オンライン佐藤正和氏

クロス円の円安もスピード調整か? 米欧金融政策の次の手に注目=外為オンライン佐藤正和氏

7月はクロス円で円安が目立った。一方、ドル/円は7月上旬に1ドル=114円台に進んだものの中旬以降に失速し、111円前後で月末を迎えている。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に8月相場の動向をうかがった。

 7月はクロス円で円安が目立った。豪ドル/円は1豪ドル=89円台に乗せ、ユーロ/円、カナダドル/円など、年初来の円安水準に進んだ。一方、ドル/円は7月上旬に1ドル=114円台に進んだものの中旬以降に失速し、111円前後で月末を迎えている。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に8月相場の動向をうかがった。

――ドル/円の見通しは?

 短期的には、ドルの下値を試す展開になると考えている。米長期金利は上がってきているものの、ロシアゲート問題が拡大する兆しもあり、安心してドルを買えない状況だ。疑惑の対象が、トランプ大統領の娘婿から長男も問題視されるようになって広がってきている。ロシアゲートが思わぬ形で、ドルの足を引っ張る可能性がある。

 ロシアゲートがクリアにならないと、トランプ大統領が掲げ、市場も期待している減税策やインフラ投資などの政策実行が遅れることになる。トランプ大統領が決定した時には、市場は1ドル=118円台の高値を付けて歓迎した。そのトランプ政策への期待が崩れることになると、1ドル=100円を試すような場面がないともいえない。

 ただ、市場は、トランプ大統領の発言等を材料に大きく動くようなことはなくなっている。大統領弾劾などの事態に発展しない限りは、徐々に日米金利差に着目したドル買い・円売りの明確な流れがでてくると考えているが、どこから安心してドルを買えるかということが、今のところ不透明だ。当面は、1ドル=110円割れを警戒しながら慎重に取り組むところだろう。

――FRBの政策は?

 9月のFOMCでバランスシートの縮小について明確な態度を表明し、12月に一段の利上げを実施するというのが、基本的な動きだと思っている。年内の利上げには否定的な見方もあるが、利上げを見送るほどに米国経済で悪い指標が出てくる可能性は低いとみている。

 雇用は安心できる水準で堅調であり、問題があるとすればインフレ率が2%に届かないということくらいだ。インフレ率については、原油価格の動向やトランプ政権の政策の動きなど、不確定要素があるため見通すことは難しい。ただ、利上げを見送る材料になるほどに弱くはならないだろう。

 一方、日銀は7月に5カ月ぶりの指し値オペを実施し、長期金利を抑える姿勢を明確にした。これで、日銀のスタンスと米国の金融引き締め姿勢との違いがはっきりした。ECB(欧州中銀)も年内には量的緩和の縮小を検討していることと比較しても、日銀の姿勢は際立っている。日銀が当面は金融緩和を継続する姿勢を明確にしたため、ユーロ/円は131円、豪ドル/円89円、ポンド/円148円など、クロス円は全面安になった。このクロス円の円安は、ドル円でもドルを支える要素になるため、ドルが大きく崩れるということはないと思う。

 当面は、1ドル=109円〜113円のレンジを予想する。年末には徐々にドルが買われ、115円を超えて120円を目指すような動きになると考えている。

――ユーロ/ドルでユーロが強い。ユーロの上値は?

 ここ3年間くらい続いていたユーロ安が反転してきた。ユーロの底入れは確認できたと思うが、1ドル=1.17ユーロ台に乗せてきたのは買われ過ぎだと感じる。ECBは量的緩和の縮小を検討し始めた段階であり、すでに利上げを始めている米国とは大きな違いがある。これまでのユーロ安の反動もあって、ECBが利上げという段階になれば、1ユーロ=1.3ドルということもあり得るのだろうが、それは来年以降の話だ。

 まずは、量的緩和の縮小が実行され、その結果、ユーロ圏の経済が堅調であることが確認されなければならない。その後にやっと利上げという段階に進む。現在のユーロ高は、いわば「ドラギ・マジック」であって、長続きはしないとみている。当面は、1ユーロ=1.15ドル〜1.19ドルを予想する。ユーロ円も1ユーロ=126円〜132円。130円から上では伸び悩むだろう。

――豪ドル/円も強いが、今後の見通しは?

 オーストラリアは雇用統計など労働環境が良くなってきた。また、懸念されたほどには中国経済が悪くなっていないことも豪ドルの追い風になっている。少なくとも、利下げの可能性はなくなったとみていい。そうすると、豪金利が一時より低くなったとはいえ、円との間には1.75%の金利差があり、キャリートレードも動きやすく、豪ドル高に振れやすい。

 オーストラリアは、シドニーやメルボルンなどで住宅価格の上昇が懸念されている。豪中銀は利上げによって、住宅価格の高騰に歯止めをかけたいだろう。資源価格の急落などのようなことがなければ、豪利上げが現実味を帯びてくることになるだろう。当面は、1豪ドル=86円〜90円程度を見ている。

――今後の市場を見通す上で重要なポイントは?

 クロス円が全て円安になってきた。これは、2008年のリーマンショック以来の世界的な金融緩和策から、9年が経過し、米国が金利正常化に向けた動きをはじめ、カナダも利上げに追随、欧州も量的緩和の縮小を検討し始める中、日本だけが取り残されていることの結果だ。主要な投資家が夏休みを迎え、「夏枯れ」といわれる期間に入って大きな方向転換は考えにくい。

 今後の市場の流れを左右しそうなのは、今年は8月24日〜26日の日程で開催されるジャクソンホール会議(経済シンポジウム)だ。ECBのドラギ総裁の講演が予定されている。米FRBのイエレン議長も出席することは公表されており、この会議を通じてどのようなメッセージが発せられるかは、年後半の市場を考える上では重要なポイントになるだろう。(文責:モーニングスター) 

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