北朝鮮、米経済、先行き不透明で相場も低迷? 外為オンライン佐藤正和氏

北朝鮮、米経済、先行き不透明で相場も低迷? 外為オンライン佐藤正和氏

北朝鮮に加えて、相変わらずトランプ政権の混乱も続いているが、9月はどんな相場になるのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に9月相場の動向をうかがった。

 ミサイルの日本上空通過、核実験実施といった具合に北朝鮮の挑発が続いている。地政学リスクの高まりなどによって、一時は1ドル=108円を割り込む寸前まで進んだ円高だが、米国での超大型ハリケーン「ハービー」の被害報告などもあって、109円前後だった円レートがやや円安の方向に変わりつつある。北朝鮮に加えて、相変わらずトランプ政権の混乱も続いているが、9月はどんな相場になるのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に9月相場の動向をうかがった。

――北朝鮮の挑発が続いていますが、なぜ円高になるのでしょうか?

 北朝鮮のミサイルが日本の上空を飛んだ時も、為替相場では円高が進みました。日本の地政学リスクが高まっているのに「なぜ、円は売られないのか」といった質問をよくされますが、市場関係者の間では「日本に着弾しない限りは円買い」と言われているようです。為替ディーラーなどの市場関係者には、いまでも「北朝鮮リスク=円高」というイメージが埋め込まれているのかもしれません。

 そういう意味では、今後も北朝鮮の挑発は続くでしょうから、9月中には再び108円台を割り込むような円高の局面があるかもしれません。加えて、9月は米国の政策金利引上げがあるかどうかを決定する「FOMC(連邦公開市場委員会)」があるため、その結果次第で為替相場は大きく動くことが予想されます。

――9月の米国金利引上げの可能性は? またドル円の予想レンジを教えてください。

 米国の金利引上げがあるかどうかは、雇用統計に代表される直近の経済統計次第と言ってもいいのですが、9月1日の雇用統計の結果は非農業部門の就業者数は15万6000人の増加となりました。市場予想の18万人増は下回ったものの、雇用統計は堅調な伸びを示すものとなりました。

 ただし、米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度)が金融引き締め=金利を引き上げるほどの好調さかどうかはやや疑問です。失業率も4.4%となり、前月と比較して0.1ポイント悪化しましたし、物価の動向を見極める指標として注目されている平均時給の伸びも、対前月比で2.5%プラスとなり引き続き低い伸びとなりました。

 この状況では、金融引き締めはちょっと遠のいたと言わざるを得ないでしょう。実際、8月に行われたジャクソンホールの講演で、イエレンFRB議長は金利引上げの見通しについて言及しませんでした。市場関係者の多くは、金利引上げのタイミングは遠のいたと考えている人が多いようです。ただし、早ければ年内にもスタートするとされていた「バランスシートの見直し」は9月から実施される可能性が高いと思います。

 今後、超大型ハリケーン「ハービー」の影響を見極める必要がありますし、関連して9月には「債務上限問題」も表面化してきます。トランプ大統領は、議会が連邦政府の予算上限の期間延長を認めないなら政府機関を閉鎖する、といった発言までしていますが、ハービーの被害が拡大する中で、大統領、議会共にどこで折れるのかが問題になってきます。

 加えて、9月3日には北朝鮮が6回目となる核実験を実施。さらに、混沌とする情勢が続くと予想される中で、9月の予想レンジは「1ドル=107円−112円」というところでしょうか。8月中に付けた108円台をさらに割り込む可能性がある、ということです。

――このところ「ユーロ」がずいぶん買われましたが、9月の展開は・・・?

 8月は、「ユーロドル」が大きく動き、一気に1ユーロ=1.20ドルを超えました。さすがに1.20ドルの大台を超えたことで達成感が出て、その後ユーロが売られました。その影響を受けて「ユーロ円」も大きく動き、1ユーロ=130円台の大台を超えました。

 ユーロ高の背景には、9月7−8日に開催される「ECB(欧州中央銀行)理事会」で、「テーパリング(緩和縮小)」が実施されるかもしれない、という期待感があります。 ただ、ジャクソンホールでの講演でドラギECB総裁は、テーパリングについて言及することはなく、相変わらず明確な言及は避けました。

 「ドラギマジック」でマーケットの反応を見極めている段階と見ていいのかもしれません。利上げにはまだまだ相当の時間と距離がありそうです。とは言え、ユーロ高のトレンドははっきりしてきたと言って良いでしょう。

――9月の欧州通貨のレンジを教えてください。

 ユーロの予想レンジとしては、ユーロ円が「1ユーロ=127円−133円」、ユーロドルでは「1ユーロ=1.16ドル−1.22ドル」と考えています。8月は、ユーロドルが大きく動き、久しぶりに1.20ドルを超えたわけですが、今後はユーロ上昇のトレンドが一層明確となり、1.22ドル台を目指していくことになると思います。

 一方、英国のメイ首相が来日して、ブレグジット(EU離脱)後も深い日英関係をアピールしましたが、英国ポンドもブレグジット決定直後に比べると回復したもののブレグジット前にはまだ遠く及ばない状況です。

 英国は一時的に利上げ観測もありましたが、現状では立ち消えになっています。利上げ観測を背景に英国ポンドも買われましたが、しばらくはレンジ相場が続くかもしれません。英国ポンドの9月の予想レンジは、「1英国ポンド=137円−145円」というところでしょうか。

――豪ドルなどのクロス円はどうでしょうか?

 オーストラリア経済も、堅調な資源価格などに支えられて大きな変化はありません。中央銀行に当たる「RBA(オーストラリア準備銀行)」が9月5日に金融政策委員会を開催しますが、大きな動きはないものと考えられます。

 9月の豪ドル円の予想レンジとしては、「1豪ドル=85円−89円」というところでしょうか。その他のクロス円は、通貨によっては大きなボラティリティ(価格変動幅)が発生する場合がありますが、市場の局面によってその時点で注目される通貨が異なります。

 ある程度の「出来高=流通量」がない通貨の場合、どうしても変動幅が大きくなり、ドル円とかユーロドルといった取引量の多いメインの通貨と比較すると、想定外の大きな価格変動が起き、ロスカットなどに至るケースもあるので要注意です。

――9月相場の注意点は?

 現在の為替市場というのは、周辺のイベントのほとんどが「円安要因」と言って良いと思います。最近のドル高円安の直接の要因は米国長期金利の下落ですが、加えて超大型ハリケーン「ハービー」の被害、そしてトランプ政権が行おうとしている「NAFTA(北米自由貿易協定)離脱」や「債務上限問題」「政府機関の閉鎖」などなど・・・、どれをとっても円高要因です。そこに北朝鮮問題も絡みあって、市場には価格変動リスクがいっぱい。変動幅の大きさに要注意です。

 一方で、金融市場は為替市場のみならず株式市場や原油市場、金市場など、様々な分野で明確なトレンドのないマーケットになっています。円安にもなれば、円高にもなる可能性が高い。気を引き締めて、トレードしたいものです。(文責:モーニングスター)

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