2018年はドル高が基本シナリオ、大きな値幅になる可能性=外為どっとコム総研

2018年はドル高が基本シナリオ、大きな値幅になる可能性=外為どっとコム総研

外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、2018年の基本シナリオをドル高・円安と置いたうえで、「変動幅が小さかった翌年は、大きな変動になる傾向があり、2018年の相場は少し広めのレンジに対応できる体制で臨む必要がある」と語った。

 2018年の外為市場は、各国経済の金融政策に市場の関心が戻り、「ドルとユーロが買われ、円が一人負けになる展開が予想される」――。外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、2018年の基本シナリオをドル高・円安と置いたうえで、「2017年のドル/円の変動幅は11円程度と、2000年以降の平均変動幅16円と比較して小さい幅になった。変動幅が小さかった翌年は、大きな変動になる傾向があり、2018年の相場は少し広めのレンジに対応できる体制で臨む必要がある」と語った。神田氏の見通しは、以下の通り。

 ――ドル/円の見通しは?

 2018年は、リーマンショックから10年目を迎える節目の年になるが、世界経済の成長が加速する中、日米金融政策のコントラストが一層明確になり、ドル高・円安が進みやすくなると考えている。OECD(経済協力開発機構)やIMF(国際通貨基金)は、18年の世界成長率を3.7%と見込んでおり、これが実現すれば7年ぶりの高い伸びとなる。経済が安定的に成長を続ける中で、日米の金融政策が市場の関心の焦点になるだろう。

 米国は3月からFRB(連邦準備制度理事会)の新体制がスタートする。FOMC(連邦公開市場委員会)で、金融政策の決定に投票権を持つメンバーに利上げに積極的なタカ派的なメンバーが増えると考えられ、18年の利上げはFOMCが見通しとして示した0.25%×3回を上回る可能性もある。トランプ政権による税制改革(大型減税)の効果などから景気と物価が押し上げられれば、タカ派メンバーの主張が受け入れられやすくなるだろう。

 また、市場は今のところあまり材料視していないが、FRBは18年にバランスシートの縮小(保有債券の削減)を加速させる計画だ。17年10月から始まったFRBのバランスシート縮小について、現在は1カ月当たり100億ドルの削減を上限としているが、1月からは上限が200億ドルに引き上げられ、4月から300億ドル、7月から400億ドル、10月からは500億ドルと、3カ月ごとに縮小ペースがアップする。

 18年は、FRBのタカ派化と税制改革(大型減税)の効果とが相まって米長期金利に上昇圧力がかかりやすいと見られ、ドル高への傾斜が見込めるだろう。

 一方、日銀は4月に黒田東彦総裁の任期を迎えるが、現在のところ続投がメインシナリオになっている。黒田総裁が11月の講演で「リバーサル・レート」に言及したことから、日銀は金融緩和政策の出口戦略を考え始めているのかという見方もあったが、12月の政策決定会合後の会見で「景気がいいからそろそろ金利を上げるとの考えはない」と明確に否定している。18年も長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続するというのが基本路線だろう。

 市場の見方が黒田総裁続投に傾いている中で、安倍首相が敢えてサプライズ人事を発表する公算は小さいと見る。仮に交代させるにしても、デフレ脱却を政権の最優先課題に掲げる以上、黒田総裁よりもタカ派寄りの新総裁を任命する事で円高に振れるリスクを冒すとは思えない。いずれにしても、インフレ率が目標の2%を大きく下回る中では、日銀は18年も出口戦略を封印するしかないだろう。

 そのほか、18年9月に行われる自民党総裁選では安倍首相の3選が濃厚だ。このように日本の金融政策や政治が当面動きそうにない事を考えると、18年のドル/円の行方は、米国情勢に左右される事になるだろう。

 17年は米国が利上げする中にあっても、ドル安・円高に振れてしまったが、これはトランプ米大統領の政策運営に対する不透明感から大統領戦後のドル高に是正の動きが出たためだ。北朝鮮などの地政学リスクが円相場を支えた点も見逃せない。

 このうち、ドル高の是正はほぼ収束し、トランプ政策についても柱だった税制改革法案が議会を通過したことで過度な不安は後退した。地政学リスクは残るものの、今年の経験からショックはあっても一時的なものにおさまるだろう。18年は、より明るい1年となりそうだ。

 予想レンジは、1ドル=109.50円〜124.50円。2000年以降のドル/円の1年あたりの値幅は、平均で16円ほどだった。17年は11円ほどの値幅にとどまりそうで、平均よりも動きが少ない1年となった。値動きの少ない1年の次には、比較的振れ幅の大きな相場がやってくるという傾向がある。現在の予測値は値幅が15円程度としているが、もっと大きな値動きになる可能性もある。

 ――ユーロ/ドルは?

 ユーロ圏も景気と物価が上向きで、ECB(欧州中央銀行)は18年1月から資産買い入れを縮小する。資産買入れは9月で終了すると見られ、いよいよECBも金融政策の正常化に動き出す。そうした中で、18年のユーロは強含みで推移しそうだ。

 今年はフランス大統領選挙をマクロン氏の勝利で乗り切ったことで、最大の懸念材料であった政治リスクが大きく後退した。18年も、イタリアで総選挙が予定されているが、選挙制度改革が実施された結果、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党が政権与党に就く可能性は大きく低下した。こうした中、18年は市場の注目点が政治から経済へと原点回帰する事になるだろう。

 3大メジャー通貨では、ドル、ユーロが強く、円が弱いという構図になってくる。ユーロ/ドルは強い通貨同士の組み合わせのため、大きな方向感は出にくいと見ている。現在は2008年の高値である1ユーロ=1.603ドルから、今年1月の安値1.034ドルの半値戻し(1.318ドル)をめざす過程にあると考えられるが、18年中の達成は難しいかもしれない。1ユーロ=1.14ドル〜1.28ドルくらいのレンジを見込んでいる。

 ――その他、気になる通貨は?

 メキシコペソの動きが気になる。メキシコは、17年に4回の利上げを実施し、政策金利が7.25%になり、高金利通貨として人気を集めた。ただ、18年3月にNAFTA(北米自由貿易協定)の交渉期限を迎える。現在、米国側はメキシコ産自動車の関税をゼロとするためには、米国製部品を50%以上使用することなど、簡単には実現できない条件を示しているため、交渉が妥結する見通しはない。

 NAFTAの交渉が、ペソの重石になる他、18年7月には6年に1度の大統領選挙が予定されている。現在のところ、メキシコのポピュリズムを代表する国家再生運動の党首であるロペスオブラドール氏の人気が伝えられている。メキシコは、規制緩和や国有企業の民営化などを柱にした経済の構造改革を進めてきたが、ロペスオブラドール氏はこうした改革路線に否定的とされる。このため、7月の選挙が接近すると、思わぬ波乱が起こる可能性がある。

 米国が利上げする環境になると、これまで新興国通貨は売られやすいという傾向があった。近年は新興国における外貨準備高の積み上げなどが進み、脆弱性は薄らいでいるものの、2017年には高金利通貨として人気のあったトルコリラが国内政情の不安を材料に大幅安になるなど、個々の国の事情で大きく価格が変動している。来年は、メキシコペソに不安定化が懸念される材料がある。メキシコの情勢は注意して見守りたい。

関連記事(外部サイト)