6月のイベント通過で主要通貨は材料待ち、W杯で早めの夏休み=外為どっとコム総研

6月のイベント通過で主要通貨は材料待ち、W杯で早めの夏休み=外為どっとコム総研

外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、「大きなイベントを6月に通過した後ということもあって、一足早い夏休みがやってきたようだ。当面は、主要通貨のレンジ相場を有効に活用した細かなサヤ取りに妙味がある」と語る。

 外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、「今年はサッカーのワールドカップ(W杯)が開催され、市場関係者の関心がサッカーの勝ち負けに集中している。大きなイベントを6月に通過した後ということもあって、一足早い夏休みがやってきたようだ」と語る。当面は、主要通貨のレンジ相場を有効に活用した細かなサヤ取りに妙味があるという。神田氏の見通しは、以下の通り。

 ――市場では、米トランプ大統領のツイッター投稿に神経質に反応する展開になっている。「トランプ・リスク」には、どのように対処すれば良い?

 「トランプ・リスク」として市場が意識しているのは、トランプ大統領の政策が好調な米国経済を失速させかねないとの懸念が高まっているということだろう。トランプ大統領は、貿易赤字の削減に向けて、関税をかけるという政策をとっている。たとえば、米国の中国に対する貿易赤字は2017年で過去最高の3750億ドルだったが、関税強化で赤字を縮小しようとしている。

 かつて、日米の貿易不均衡が問題視された時には、貿易量ではなく、為替で調整する形だった。今回は、関税によって対中輸入を減らすことで貿易収支の改善をめざし、中国のみならず、カナダ、メキシコやヨーロッパにも関税をかけると言っているので、世界的に貿易が縮小に向かうと懸念されている。

 トランプ大統領も、関税だけで貿易赤字の問題が解決するとは思っていないはず。発言の意図は、多分に秋の中間選挙へのアピールという側面があると考えられる。11月の選挙で共和党が勝てば、関税問題を強く言い続けることはないと思われるが、少なくとも、選挙が終わるまでは、貿易問題がクローズアップされやすい状況が続くだろう。

 米国の9月利上げも大きな関心事ではあるのだが、6月の利上げ実施前後の動きでわかるとおり、トランプ・リスクが日米金利差拡大の影響を抑え込んでしまっている。9月も6月と似たような展開になると考えられる。

 また、今後の注目ポイントは、貿易摩擦の激化が、米国企業業績など実体経済に影響を及ぼさないかどうかだ。すでに6月の製造業景況感指数などは悪化の兆しがある。貿易量の縮小につながる動きが企業マインドに響き始めた可能性もある。これがエスカレートして、小売りや雇用にまで波及しないかどうかを念のため見極める必要がある。万が一、景況感が急速に悪化するようなことになれば、9月利上げへの影響もでてくるだろう。

 当面は、貿易を巡る米中の対応、そして、米国経済指標を両にらみする展開となるが、ドル円の方向性を示すような材料は出てきにくいと考える。1ドル=108円〜111.50円という比較的狭いレンジを往ったり来たりするような展開を予想する。

 ――ユーロ/ドルは、6月のECB理事会の後で1ユーロ=1.18ドルから1.15ドルまで急落する場面があった。なぜ、あれほど大きな値動きにつながった?

 6月のECB理事会の直前に、量的緩和の縮小、また、早めの利上げなどへの期待感が強まっていたという背景があった。特に首脳陣のタカ派的な発言が、相次いだことで、ユーロの金融引き締めへの期待感が膨らんでいたといえる。

 実際のECBの決定は、最初の利上げタイミングを2019年6月とみていた市場に対し、「少なくとも夏までは据え置く」という決定が伝えられ、「利上げ開始は早くても9月」と3カ月ほど後ずれした。また、量的緩和についても、年内に債券買い入れを終了するという決定をしたものの、保有債券の再投資は長期にわたって続けるとされた。つまり、ECBの資産を増やすのはやめるが、減らしはしないということだ。

 さらに、ドラギ総裁は、ECBの経済見通しについて、「先行き不透明性とリスクは増大している」と語り、すぐに利上げを検討する段階にはないという認識を示している。

 ECBの量的緩和縮小は息の長いテーマといえ、1ユーロ=1.18ドルから1.15ドルへの急落によって、一旦は消化したと感じる。ユーロ/ドルも当日に大きく動いた後は、徐々に値を戻すなど落ち着いた動きになっている。

 当面の気になる材料としては、6月28日・29日のEU首脳会議で難民問題が話し合われることになっているが、ここで何らかの合意が得られないと、ドイツの政局につながる可能性がある。メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の中で、移民問題を巡る意見の隔たりがあり、ドイツに集中している難民申請に歯止めをかけるような決定が見られないと、政権与党が内部崩壊しかねないとの見方もある。

 イタリアやギリシャなど南欧各国は、EU加盟国間で均等な難民受け入れを主張している。ドイツを含む北部諸国は、南欧で当初難民申請を行った人々が、より豊かな北部諸国を目指す2次的な移動を抑制したい考えで、両者の隔たりは大きい。首脳会議で意見がまとまらなかったからといって、それがすぐにドイツの政権を揺るがす事態にはならないとは見ているが、ユーロの重石になるだろう。

 ユーロ独自の買い材料が出にくいため、当面は1ユーロ=1.145ドル〜1.175ドルの間でもみ合う展開を予想する。

 ――その他、注目の通貨ペアは?

 現在は、ロシアでサッカーのワールドカップが開催され、日米欧の主要通貨にも大きな動きが期待し難いとあって、一足早い夏休みに入っているような状況だと感じている。

 今回のワールドカップは6月14日に開幕したが、6月27日までのドル円の変動幅は1.5円にとどまっている。前回の2014年ブラジル大会では大会期間中の値動きは1.3円という非常に狭い範囲の中だった。

 6月には史上初の米朝首脳会談、FRBの利上げ、ECBの量的緩和の終了決定など、大きなイベントが相次いだにもかかわらず方向感の出ない展開になってしまった。当面のスケジュールで6月ほどの大きなイベントはない。次の手掛かりを探す、もみ合い期間に入っているといえよう。

 このような時には、ドル/円等のメジャーな通貨ペアのレンジを有効に活用して、細かな利ザヤを重ねるような動きをめざしたい。ドル/円が108円台に接近する局面でドルを買って、111円台に近づいたら売るというようなボックス圏での取引にメリットがある。主要通貨の動きが悪いからと、値幅を狙って新興国通貨に手出しをすると、思わぬ変化に足をすくわれることがあるので注意したい。

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