フィンテックで保険の未来を拓く、SBIインシュアランスグループ会長兼社長の乙部辰良氏に聞く

フィンテックで保険の未来を拓く、SBIインシュアランスグループ会長兼社長の乙部辰良氏に聞く

インターネット金融の分野で抜群の存在感のあるSBIグループの保険事業を統括する持株会社であるSBIインシュアランスグループの特徴と成長戦略について、代表取締役執行役員会長兼社長の乙部辰良氏(写真)に聞いた。

 SBIインシュアランスグループ <7326> が9月27日に東証マザーズに新規上場した。インターネット金融の分野で抜群の存在感のあるSBIグループ <8473> の保険事業を統括する持株会社だ。同社の特徴と成長戦略について、代表取締役執行役員会長兼社長の乙部辰良氏(写真)に聞いた。
 
 ――SBIグループの保険統括会社だが、他の保険会社と比較して強みは?
 
 SBI損保、SBI生命、そして、少額短期保険会社3社を傘下に置く保険持株会社で、傘下の保険会社、少額短期保険会社が一体となって総合的な保険サービスを提供している。強みとしては、インターネットを活用した他社よりも、さらに割安な保険料を設定する価格競争力とSBIグループのシナジー、そして、最先端のテクノロジーの活用がある。
 
 SBIグループには現在、約2400万人の個人顧客基盤がある。この顧客基盤を使って保険を販売することで、高額になるテレビCMなどを使わずに商品をピーアールすることができる。これが一番の強みで、自動車保険のコスト比較で、その差は明らかに出ている。価格.comの保険料満足度ランキングが始まった2010年から現在まで、9年連続で最も保険料が安い自動車保険会社に位置づけられている。
 
 また、運用面でも生命保険の長期の資金運用などで、グループの資産運用グループの力添えを得て、世界の運用商品の中からより良い運用が可能だ。
 
 フィンテック関連の発展は様々な分野に及び、技術の進歩も速いので、これを単独の企業が情報を得て、自前で開発していくのは大変だが、SBIグループのインベストメント部門は国際的にフィンテックのスタートアップに幅広く出資しており、その情報等を得て、いち早く最先端の技術を実現させた企業との提携等を行って商品・サービスのブラッシュアップや新商品開発に活かしていきたいと考えている。
 
 ――国内の保険市場は少子高齢化が進むに従ってビジネス機会は縮小していくのではないかという懸念があるが、その中で貴社の成長戦略は?
 
 国内の保険市場に成長の機会がないわけではない。たとえば、「がん保険」は、依然として加入率が低く拡大の余地が大きいし、ペット保険など少額短期保険の分野は保険ニーズを掘り起こして新商品が生まれている成長市場だ。
 
 一方、自動車市場は人口減と高齢化で将来的には自動車の保有台数が減り、自動運転で自動車事故そのものが減っていけば保険のニーズも小さくなる。だからこそ国内の伝統的な損保会社は海外への進出などに積極的だ。しかし、既存の自動車保険市場は膨大で、SBI損保のシェアは1%にも満たないくらいに小さい。より保険料が安く、満足のいく補償が提供できれば、既存の保険からの乗り換えが進むだろう。その意味では、SBI損保には自動車保険で大きな成長余地がある。これまで当社グループの保有契約件数は年率平均20%前後の成長を続けている。当社グループが高い成長を続ける傾向は継続できるだろう。
 
 また、団体信用保険も当社は成長市場とみなしているが、住宅ローン残高が今後伸びることはなくとも、既存の団体信用保険の置き換えでシェアを取ることができると考えるからだ。このように、既存の保険市場において、比較優位な商品を提供するために、テクノロジーの力を使って、徹底して保険のコストを抑える業務運営をやっていく。自動車保険や団体信用保険など、商品性に違いが出しにくい商品の場合は、保険料がいかに安いかということが、商品選択で重要な要素になる。または、テクノロジーの力を活かして新しい商品を開発していく。
 
 たとえば、新商品開発という点では生命保険分野で、タニタヘルスリンク、FINC、アドウェルなどと提携し、体重・体脂肪率などのバイタルデータに加えて、運動習慣や食事などのアクティビティデータに基づくパーソナル保険の開発を進めている。運動や食事による死亡・疾病リスクの変動を随時、保険料に反映させていくという取り組みで、個々人に応じた保険料割引が提供できる画期的な保険商品になる。このためには、バイタルデータ、アクティビティデータと死亡率の相関が分からなければ商品の設計ができない。テクノロジーの力を駆使して、向こう1−2年での商品化をめざしている。
 
 ――先日、ドイツのフィンテック企業であるエレメント・インシュアランスに出資することで合意したということだが、この狙いは?
 
 エレメント社はフィンテック・ベンチャーでこれからの会社なのだが、この会社のユニークなところは、保険のニーズに応じて最適な保険商品を設計・開発するためのプラットフォームを持ち、それを自ら使うだけでなく、クラウドで他の保険会社に提供するビジネスも手掛けている点だ。エレメント社のプラットフォームを使うことで、短期間で保険商品が開発できる。このプラットフォームは、新商品の提供が届け出制になっている少額短期保険で有効だと考えている。エレメント社のノウハウを取り入れ、ニーズに適った商品をいち早く商品化して提供していきたい。
 
 ――19年3月期連結業績予想は、売上高6.1%増、経常利益65.2%増と大きく成長する見通しだが、当面の業績見通しは?
 
 現在、収益の比率は損害保険、生命保険、少額短期保険が概ね3分の1ずつになっているが、当面は、この比率が変わることなく、3つの分野でそれぞれが成長を遂げていくと考えている。保険料の割安さには若い世代の関心が高く、若いうちから加入していただいて、長くお付き合いいただけるような満足度の高いサービスを展開していきたい。
 
 たとえば、損害保険分野ではネット(ダイレクト)損保で自動車保険トップには保有契約で依然として大きな差がある。がん保険、団体信用保険でもそうだ。それぞれの分野でトップが獲得できるよう、保険料の水準、そして、保険の品質で圧倒するようなサービスを提供していきたい。
 
 少額短期保険の分野は、現在、当社グループが第3位のシェアをいただいている。こちらは、よりお客さまのニーズに適った商品を提供することで業界トップに立ちたい。お客さまに満足いただける安くて、カバー範囲の広い商品を提供し、他社に負けない成長を続けたい。

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