米朝トップ会談合意なし、地政学リスク高まるのか? 外為オンライン佐藤正和氏

米朝トップ会談合意なし、地政学リスク高まるのか? 外為オンライン佐藤正和氏

3月の外為市場はどんな動きをするのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2019年3月の相場動向を伺った。

 2月27日−28日の2日間に渡ってベトナム・ハノイで行われていた米朝トップ会談が、合意に至らずに終了した。当初、予想されていた内容とは異なったため、為替市場でもドルが買われるなど混乱が起きたものの、為替市場にはそう大きな変動は起きていない。とは言え、これから迎える3月相場は、英国の合意なきEU離脱(ハードブレイクジット)への懸念や米中通商交渉の行方などなど、何が起きてもおかしくない懸念やリスクを数多く抱えている。歴史の曲がり角に差し掛かっている瞬間と言えるかもしれない。そんな中で3月の外為市場はどんな動きをするのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2019年3月の相場動向を伺った。

 ――米朝トップ会談が合意に至りませんでした。為替市場への影響は?

 当初、予想されたものとは大きく異なるシナリオになってしまいましたが、米国が望む「完全非核化」を金正恩委員長が受け入れなかった。そして、金委員長が北朝鮮に対する経済制裁の全面解除を望んできた、といった両者の思惑に大きな隔たりがあったようです。

 トランプ大統領の主張する「完全非核化を受け入れ、経済支援を背景に成長を遂げれば北朝鮮は豊かな国になれる」といった甘い言葉だけでは、通用しなかったと言うことでしょう。とは言え、金融マーケットはそれほど大きな驚きとはならず、株価や為替市場も想定した範囲内に収まっているようです。

 問題はむしろ、2月27日に行われたトランプ大統領の元弁護士マイケル・コーエン被告の議会証言で、トランプ大統領を「詐欺師」「人種差別主義者」「いかさま師」と言った言葉で激しく批判したことのほうが大きなインパクトがあったかもしれません。

 ――3月は大型のイベントが揃っていると言われますが・・・

  為替市場は中央銀行の金融政策や各国政府の外交によって大きく動きます。そういう意味では、3月は大きなイベントが揃っているといえます。そのひとつが、米国と北朝鮮の非核化交渉だったわけですが、同意に至らなかったことでまた違った展開になる可能性があります。

 3月7日には、ECB(欧州中央銀行)理事会があり、ここで金融機関への追加資金供給といった措置が予想されています。さらに、3月20日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、今後のスケジュールの見直しが再確認されるのではないかと思われています。FRBの金融引締め政策から金融緩和への流れを確認する会合になると思います。

 また、3月29日は英国のEU離脱の期限を迎えることになります。3月最大のイベントと言えるかもしれません。ちなみに、インドとパキスタンのカシミール地域での軍事衝突=地政学リスクの行方も心配です。

 いずれにしても、3月は世界中で様々なリスクが顕在化する月になるかもしれません。金融市場が大きく動くイベントが数多く控えていると言っていいでしょう。

 ――FRBの金融引き締めは終了するのでしょうか?

 パウエルFRB議長は、2月27日に行われた議会証言で、「辛抱強いアプローチが正当化される」と言う見解を繰り返し述べました。ドル相場は、米国の金利と景気動向に左右されますが、とりあえず3月8日に発表される雇用統計に注目しておく必要があります。

 米国の景気は、雇用や不動産を除いては大半のデータが良い数値を示しており、3月19日−20日に行われるFOMCでは、金融緩和に積極的なハト派の姿勢を確認する機会になる可能性があると思います。

 米中通商交渉では、トランプ大統領も3月2日に予定されていた関税引上げの延期を表明しており、いまのところ3月中旬にも行われる予定の習近平国家主席との会談によって、ある程度の合意ができる可能性があると見られています。とは言え、米中通商交渉の中には、貿易収支だけではなく「知的財産」や「補助金の問題」「為替」の問題にまで拡大しており、こちらも北朝鮮同様、予断は許さない状況です。

 ――英国のEU離脱も期限の3月29日に迫っていますが・・・

  ブレグジットがどんな方向に行くにせよ、最悪の事態になれば英国ポンドが大きく売られることは間違いありません。付随してユーロも売られることになるため、3月は欧州の通貨には要注意です。

 ホンダが英国の工場を閉鎖すると発表しましたが、一部生産の縮小を表明した日産やトヨタも、今後の展開次第ではどうなるか分かりません。合意なきEU離脱になった場合、為替や株式市場といった金融市場、そして経済全体に対して、どの程度の影響をもたらすのか。現段階では想像もできないと言っていいでしょう。

 英国のメイ首相は、ハードブレグジットの是非を議会の採決に図るとしていますが、現在の状況ではなかなかマーケットも先行きを読めない状況と言っていいでしょう。3月最大のリスクであり、チャンスでもあるといえます。3月8日のECB理事会の動向にも要注目です。

 ――2月の予想レンジはどうなるのでしょうか?

 日本銀行の金融政策決定会合が3月14日−15日とありますが、大きな政策変更は考えられません。そう考えると、3月の予想レンジは次の通り。様々なイベントがあるため、大きな変動には要注意です。

●ドル円・・1ドル=110円−113円
●ユーロ円・・1ユーロ=122円−128円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.12ドル−1.15ドル
●ポンド円・・1ポンド=140円−147円
●豪ドル円・・1豪ドル=77円50銭−80円50銭

 ――最後に3月相場の注意点を教えてください。

 為替市場に大きな影響もたらしそうなイベントは、やはり米中通商交渉だと考えて良いでしょう。中国は、法人税引下げやVAT(付加価値税)の引下げ、低金利の融資拡大といった様々な経済政策を打ち出していますが、シャドーバンキング問題が再び浮上するなど、中国経済の失速リスクにも注意深く見守っていく必要があると思います。

 いずれにしても、2月末の米朝トップ会談が「サプライズ・エンディング(驚きの結末)」をもたらしたように、3月相場も大きな波乱が予想されます。ポジションを低く抑えて、大きな変動に備えましょう。(文責:モーニングスター)。

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